3話
3,怪奇事件発生!?
マホ研が発足されてなんにもなく数日が過ぎたある日、とある事件の情報が舞い込んできた。依頼人は石井利路先生だ。彼は俺の叔父である。
「石井先生、その事件の内容ですが」
「ああ、体育の実技の最中に二年の風間爽馬が急に倒れた。傷はないが急いで病院に連れていくと、何者かに襲われたのだろう骨折があると言われたのだが、生徒は見張っていたからないと思うし、もし外部の者でもそんなやつは見た記憶がないんだ」
俺はその瞬間”あれ”しかないと思った。
「分かりました。引き受けましょう。ですが俺たちだけでは危険なので風紀委員会にも協力を要請しておいてもらえますか?」
「もちろんだ。急な依頼を引き受けてくれてありがとう」
そう言い、先生は退室した。
「健くん、自信がありそうだったけど何か心当たりがあるの?」
「ああ、おそらく『魔獣』の仕業だと思う」
「「!?」」
皆が驚くのもしょうがないと思う。魔獣とは、魔法を使える獣のことで、近年増えてきてはいるがまだ数が少なく、珍しい生物だ。それは魔法学的にも良くて、ある魔法の付与実験、またはその魔獣から人に魔法を移すという実験がされている。またそれぞれの魔獣が持っている魔法石も有効活用できて。たとえば、炎の魔法石をランプにつけて石の魔法力がなくなるまで(魔法使いは石+自分の魔法力がなくなるまで)明かりを照らし続ける半永久的ランプを作れる。また毛皮も役に立って。例とし...
話が長くなりすぎた。すっかりエキサイトしてしまったようだ。話を戻して、証言からすると認識阻害か加速魔法かその両方を使えるやつだろうが、両方使えるやつは聞いたことがない、新種の可能性は0%に近い。さらに、傷はないが骨折はしているということは認識阻害もないだろう。ということはスピードの魔獣しかない。それなら一種しかいない。その名は「ウルフハント」だ。ウルフハントは厄介な相手だからしっかりと討伐作戦を練っておかないといけないな。
「マホ研として一人で行くつもりか?」
心配そうに問いかけるリュウ。
「ああ、もちろん」
「危険だろ。僕も行こう」
「だめだ」
「なぜだ、多いほうがいいだろう。なのになぜ」
「あまり犠牲を出したくない。もしかしたら作戦の日までにまた出るかもしれないができるだけ減らしたいんだ。だから風紀委員からも一人だけ出してもらうつもりだ。作戦の時間は確か自習の時間だったと思うから、その日は体育にしようと思う。とりあえずは犠牲者を減らすためにできるだけ人員を減らす、そう思っておいてくれ」
「わかった...。だが気をつけろよ」
不承不承に頷くリュウ。だがわかってほしい、今回は近距離戦が得意なやつは確実に負けるということを。
作戦当日、今まで3回実技があったが3回とも犠牲者が出た。それらの人には共通点があった。それは、最初の被害者、風間先輩がいた場所にいたのだ。最早やつの狩り場となっているこの場所に俺がいれば捕まえられると思う。そして風紀委員会と協力して討伐するという考えだ。とりあえずは待つだけ。と思ったら意外とすぐに例の場所に来てくれた。
【減速系魔法 『領域減速』】
【指定したものを特定範囲内で減速する。】
これで普通よりもほんの少しだけ遅くして捕まえた。
「今です」
「わかった!」
遠くで待機していた風紀委員会委員長・國村睦海先輩がライフルを構える。お見事、体に命中したがウルフハントは平気顔だ。
「これならどうだ!」
【氷系魔法 『氷塊』】
【つららを作り、操る。鋭さは想像によって決まる。】
つららを受けたウルフハントはようやく倒れる。実はウルフハントは自己加速魔法と物理攻撃をほぼ無効化する毛皮を持っている。だから銃は効かない。だが、おれの氷塊は操れる。つまり毛皮の間をすり抜けて攻撃できる。まあ鋭さや細さも関係してくるのだが、想像で決めれたのでいいだろう。という趣旨のことを睦海先輩に話した。
「お見事だ!お前一人に任せたみたいですまないな」
「いえ、先輩のおかげでそれを思い出せたんですよ」
「そうだ!一つ提案がある」
そう言うと俺に耳打ちをした。
「!?」
「はっはは!今すぐにとは乞わない。また明日以降、返事をくれたらいい。良い返事を期待しているぞ!」
「...ちょ、先....」
先輩を呼び止めようとしたが遅かった。もう遠くまで行ってしまっていた。その内容とは、
『風紀委員会に来ないか?きっと君なら役に立てると思う。バトルでも作戦面でもね!』
だった。明日、きっちり返事をしよう。
「昨日の件ですが、ここに入らせて頂きます。よろしくおねがいします」
ここに入った理由は、役に立てるのならばこれがいいと思ったからだ。そして、また委員会の勧誘が来ても面倒くさくて嫌だからだ。というわけで皆よりひと足早く委員会に入った。
そして、最初の被害者・爽馬先輩はというと、双子の弟の風間瞬汰先輩によると、咄嗟に受け身を取れたのが不幸中の幸いといったところらしい。もし取れていなかったら...とヤバそうになってきたので話を止めて、ふたりとも風紀委員らしいのでついでに挨拶をしておいた。まぁ騒がれた、色々なことで。もういい加減慣れたからスルーする。そうして事件は幕を閉じたのであった。
---------------------------------------------------------------------------------------------------
健:「なんか入学してからずっと疲れているような気がする」
櫻:「お疲れ様。私達もなにか手伝えればいいけど...」
健:「だが、今回の魔獣はとっても危険なんだ。疑っているわけではないんだが、部員の力が把握できていない今は皆に危険を犯してほしくないと思う」
櫻:「部長の優しさだね。他の皆はわからないけど、私は健渡くんを信じてるから」
健:「ありがとう。それにしても櫻の兄貴、すごいよな。あんな距離を的確に当てれるなんて」
櫻:「それが兄さんの特技だからね。あっ、そろそろ下校のチャイムが鳴るよ」
健:「そんな時間か。じゃあまた明日」
櫻:「うん、バイバイ」