夕食
「飯、食べに行こうぜ」
色々話しを聞いていたら、既に時計は21時を指していた。うん、この世界でも時間は24時間制なのかな。やっぱり前の世界と殆ど基本的な構造は変わっていないな。そのお陰か、一日も経っていないのにもう順応し始めている。
「そうですね。私もお腹がペコペコです」
「ペコペコなんて言葉が出るなんて、やっぱりまだ子供なんじゃないか?」
「うるさいですね! ペコペコはペコペコなんですッ!!」
顔を赤らめながら怒っても怖くはないんだよなぁ・・・。
「・・・あの」
「ん?」
「外行きの服に着替えたいので壁の方を見て欲しいです・・・・」
「あ、はい」
着替え、欲しいな。とりあえず最低限の生活用品とかは明日で揃えたいもんだ。
背中の方から布ずれの音が聞こえる。相手がロリとはいえ、流石に意識してしまうぞ、これ。19歳の生着替えか・・・・あれ、でもギルドカードには俺の年齢は19って書いてあるから同学年か。うーん、より意識してしまう。耐えろ、俺! 俺を興奮させるのはメイド喫茶のみなんだ!!
「そういえばこれ、まだ言ってませんでしたね」
「何をだ?」
まさか・・・男でした! とかはやめてください。いや、別に男でも良いけど! 着替えで興奮していた俺を返してよね! いや、興奮していないけどね!?
「これです。こっちを見て良いですよ」
少し身構えながらリアの方に振り向く。
目の前に居るのは裸の背中を向けた1人の少女。しかし、普通の少女にはない特徴がある。左肩に”1845"と黒い文字で刻印されている。
「これがオーランド人を見分ける術です。奴隷を管理する番号:隷の番号と言われてます」
「実はお風呂に入る時、あまり目立たいようにしていたのですがコケてしまって・・・」
だからリアがオーランド人だとあの三人組は分かったのか。
「その刻印は消せないのか?」
「無理だと思いますよ。私は5歳の時にされて、最初は消そうと躍起になりましたが全くの無駄でした。」
入れ墨は完璧とは言えないものの、消せると聞いたことがあるが・・・。やはり文明の発展が前の世界と比べて少し遅いから、消す術がないのか。もし、俺が入れ墨職人ならどうにか出来たかもしれないが、残念ながら俺は前世でパソコン弄ってただけの人間だ。どうすることも出来ない。
「とにかく、今後ルヒトさんが相手をオーランド人か知りたい時は後ろから左肩を見たら良いですよ」
「分かった」
5歳の時に刻印された。つまり、リアは5歳の時には奴隷として認定されたのか。・・・奴隷制なんて日本では考えられないような事だ。会社の奴隷だ、なんてふざけて同窓会で言っていたけど、そんな自分が恥ずかしくなる。
「・・・ところでいつまで私を見るのですか?」
「ん?」
「そろそろ上も着たいのですが・・・・」
「あ、すまん!」
考え事をしてる間、熱心にリアの背中を見つめていたらしい。全く、これじゃあロリコンの変態野郎じゃないか。
「はいはい、もう良いですよ。行きましょう」
「何かあてはあるのか? 申し訳ないけど俺は一切この辺りの店を知らない」
「私もあまり詳しく無いんですよね。普通にギルドのご飯でどうですか?」
「・・・あー、そうしようか」
少しの間、さっきの三人組とバッティングする可能性を考えたけど、多分大丈夫だろう。あれからかなり時間が経っているし、何よりお腹が空いて遠くまで動けない。
下の階へと降りると、居酒屋のような雰囲気が漂う。あー・・・これはお酒が飲みたいな・・・・。あと唐揚げも。レモンをたっぷりかけて・・・あ、たまんねぇなこれ!
唐揚げとビールを想像しながら席に座り、メニューを開く。
「リア、お酒ってあるのか?」
「お酒はこれですね。ルヒトさんは飲める人ですか?」
「まぁ、程々にな」
「私も程々ですね」
どうやら、酒には種類なんてものがないらしく、酒は酒というメニューらしい。あと・・・サラダだけ? あれ? お肉は?
「肉料理はないのか?」
「今は夏で季節じゃないですしね。食用獣は秋と冬のお楽しみです!」
え、お肉食べれないの!? 僕、成長期!!!!!