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オーランドとアンスバッチ

オーランドは国土の3分の2を森林地帯とする国であり、アンスバッチから1年前に独立を果たした新しい国である。独立する前までは”奴隷領”と呼ばれており、長年の間オーランド人はアンスバッチ人の奴隷として使われてきた。同一の国家内において、このような関係性に陥っていたのは理由がある。現オーランド国土は地形上、住民は農業で生きる術しか持っておらず、そもそも住民の数が少なかった事から都市部(現アンスバッチ)に比べ文明レベルで遅れが発生していた。さらに経済レベルでの遅れもとっており、都市部アンスバッチ山間部オーランドでは平均賃金の差が大きくついていた。どれ程かというと、都市部で働く人の1時間分の給料が、山間部で働く人の8時間分に相当していた。それ故、都市部では賃金が低く、仕事に対してプライドの持ちようがない仕事は必然的に山間部の人間にさせるようになった。このような動きは加速し、いつしか都市部の人間は山間部を”奴隷領”と呼ぶようになった。このようにして、国家からの正式な発表は無かったにもかかわらず、山間部に住む人々は「実質的な奴隷」として長年に渡り生活してきた。


「・・・なるほどなぁ」

なるほど。うーん、なるほどなぁ。としか言いようがない。部屋に戻り、話を聞いてみたけどかなり重たい話だった。

「こんな説明ですが、オーランドとアンスバッチの関係は分かりましたか?」

「あぁ、でもどうしてオーランドの人たちは農業を続けなかったんだ? これまで農業だけで暮らせたんだろ?」

オーランドの人たちは地元で働くよりも賃金が低くなった時点で帰れば良かったのでは、と思ってしまった。そうすればこの奴隷制は生まれなかった気がする。

「・・・それが出来ればそうしてました」

リアが唇を噛み、下を向く。

「最初はアンスバッチ内では給料が低い仕事でも、オーランドに比べてはだいぶ稼げてました。ですが、徐々に給料が下がってきて・・・出稼ぎに来ていた皆がオーランドに帰ろうと思った時期です」

握っている手が震えている。

「・・・殆どの家が燃やされました。畑も・・・牧場も・・・」

「勿論、私達は諦めずに家を建て直し、元に戻そうとしました。ですが、建て直す度に”山火事”が私達を襲って・・・・・。結局、私達はオーランドに住むことすら諦めないといけなくなったんです」

そう言い、窓の外へと視線を向ける。

「この状況はどの地区も同じだったそうです。復興する度に燃やされる。あれから、私は1度たりともあの山火事を引き起こすモンスター、そして家を建て直すから休暇をくださいと言ったら意地の悪い笑顔で見送った工場主を忘れたことは無いです」

「・・・つまり、アンスバッチの人間がオーランドの人に行き場所を無くしたんだな?」

「はい。そういうことです」

「許されないな」

だから奴隷制が続いていたのか。行き場所を無くし、生き場所も無くす行為。到底、許されるハズではない。

「誰かが裏でモンスターを操っていたんだよな?」

「はい。あのモンスターの動きは人為的です。ですが・・・証拠がなくて・・・・」

悔しそうな表情を見せるリア。

「誰かは分かっているのか?」

「商工会だとは思いますが・・・皆、最後まで特定出来ませんでした」

「・・・そうか」

商工会。いずれかメイド喫茶を開く為に許可を貰わなければならない存在。危ない組織ということは覚えておこう。

「それで、パーティーの件はもう良いですよ。私は1人でも大丈夫なので」

そう言って座っていたベッドを立ち上がるリア。

「俺は戦力外通告って事か?」

少し笑いを浮かべるリア。

「違いますよ。私と一緒に居たらルヒトさんの迷惑になるので・・・・」

「それなら別に良いぞ。俺はそんなことに興味ないからな」

「そうは言っても・・・」

困惑していますって顔に書いてある。コイツ、顔に気持ちが出るタイプだな。学生時台、空気を読めなかったとか言われてた俺だけど、リアなら考えていることを理解出来る気がする。

「本当に大丈夫だから。むしろ、俺からお願いするよ。よろしく、リア」

手を差し伸べる。

「・・・そこまでルヒトが頼むなら仕方ないですね! またパーティーを組んであげます!」

その手を握ってくれたのは小さな手で、その持ち主は19歳の金髪少女リア・クラーク・エリー。

背を向けたリアの背中から

ーありがとう。 

と聞こえた気がした。

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