リア:オーランド人
ギルドの大浴場に浸かりながら、この謎の仕事について考える。大浴場に入る前、もう一度クエストボードを見て他のクエストについて確認してたけど、報酬はどれも低いものばかり。少なくとも一日で10000ピア以上稼げるものはなかった。
「・・・・まぁいいか」
程よい暖かさの湯につかり、体をほぐす。今日は体を酷使したからなぁ・・・。そうか、あのふざけた天使が北地成人を殺して、この世界に飛ばしてまだ24時間も経っていないのか・・・。最初は転性だと思っていたんだよなぁ・・・。それで、実際は転生だった訳で・・・・。しかも、その転生も体も顔も若いころの俺に戻ってるし、なんか想像していたものとはかけ離れているし・・・。あ、そういやあの天使。
ー顔は悪いようにしないから!
なんて言ってたけど、あれはどういう意味だったんだ? 別人にしてくれるっていう解釈が普通だと思うんだけど・・・・。ホント、天使とかロクでもないな。その類の輩は今後一切信用しないようにしよう。
風呂から上がり、リアを待つために休憩室で牛乳を買う。
「・・・ンッ! うっんまぁっ!!!!!!!」
最ッ高じゃないか! この体はもうビールでしか満足出来ないようになってると勝手に思い込んでいたけど、風呂上がりの牛乳はかなりいけるな! これは体が若返った恩恵か!?
体を椅子に預け、目を閉じる。かなりの重労働をしたんだ。少し休んでおこう・・・。
「・・・なんでアンタみたいなヤツが居んの? 出て行ってくれない?」
「本ッ当に無理。一緒のお風呂に入ったら穢れるんだけど」
・・・イジメか? こんな露骨なものは久しぶりに聞いたな。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
リアの声?
「どういう思考回路していたらここに来れるの? 頭大丈夫?」
目を開けると、女湯の前で三人に囲まれているリアを発見。なんでこういう状況になっているのかは一切分からないけど、このままただ指をくわえて眺めている訳にはいかない。
「おい」
リアを囲んでいるうちの一人の肩を掴む。
「リアが何をしたっていうんだ」
問題が発生した時に一番必要なのは仕事と同じで状況把握。何が起きているかを理解して初めて解決策を立てることができる。
「は? コイツがオーランド人だからだよ」
「私も見て確認したー」
「あれは間違いなかったよね」
険悪な雰囲気を醸し出している三人からどうでも良いことが伝えられる。
「だからってそんなのどうでも良いだろ」
生まれてる国が違うだけで人間ってここまで人を責めることが出来るのか? この世界においての背景を知らないだけかもしれないけど、意味が分からない。
「はぁ? 頭大丈夫?」
「お兄さんももしかしてオーランド人?」
「・・・いや、俺は違うけど」
「いやこの感じ、絶対そうだ。帰ろ、ね?」
そう言って立ち去る三人組。
「マジで絶対ここに来ないでよね」
と一人が言葉を吐き捨てる。
「おい、大丈夫か?」
リアに声を掛ける。
「・・・大丈夫ですよ。普通なんで」
「普通ってどういうことだよ。何でここに来てはいけないんだ?」
リアが驚いたようにこちらを向き、「あぁ」と何故か納得の表情を見せる。
「ルヒトさんは知らないんですね。オーランドとアンスバッチの関係を」
「知らないからどうしたんだ」
少しの迷いがあったのか、合わせた目線を一度外したリア。だけど、数舜後には覚悟を決めた青色の瞳で俺を見つめ、話し出した。
「オーランド人はつい一年前まではオーランド人の・・・・奴隷でした」