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小金君は筆頭株主

作者: 裸形炉

「いいですか、お金というモノは貴方達のご両親、家族が汗水垂らして稼がれているモノです。キミ達が好きな服を着たり、好きなモノを食べたり、遊んだり、ありとあらゆるモノはお金を払うことで手に入れる事が出来ます。友情はお金には変えられないですって、確かに人間関係はお金では買えませんですが、人と人が形は違えど触れ合うというのには、そこにお金というモノが厳密に関わっています……(キーンコーンカーンコーン)おや、今回の授業はここまでです。皆さんも少し身近なお金について学んで見てください」教鞭を取り終えて教科書を閉じている初老の男性教諭がクラスを後にする。その教諭とすれ違い様に数名のメイドと年老いた執事が教室へと入ってくる。廻りはすでにこの光景には馴れており、メイドたちは教室の生徒達へチップを配る。そしてチップを受け取った生徒は自身の机を教室の端へ。教室のドアから一直線に伸びる赤絨毯、伸びた先には一つの机があり、そこには黒ギャルの恰好をした女の子が椅子によたれかかっている。そんな黒ギャルの横に立つ年老いた執事が「稲理お嬢様お迎えに参りました」と頭を垂れる赤絨毯の両端にはメイドたちも頭を下げて待っている。然しそんな年老いた執事の言葉など気にせず悠々とマニュキュアを乾かしている稲理お嬢様。そんなお嬢様の周りには大勢の男女が集っている「稲理、今日もカラオケボックス貸しきって歌おうよ~カーモンってね♪」「いやいや、今日はサッカーの試合貸しきってみた?的な日だよな、イナリン~♪」そのあともあれやこれやと先ほど汗水垂らして得てはいないお金を湯水のごとく使い続け遊ぼうと集る取り巻きたち「カラオケ~サッカー………飽きた~、他のことも大概やっちゃった感あるし、つまんないわね」と席を立つ稲理お嬢様そのまま立ち上がり「ご機嫌よう皆様」と赤絨毯を歩いていく。ちぇっと解散する取り巻きたち。彼女の名前は”古渡戸 稲理”世界で複数の事業を展開する古渡戸グループの一人娘正真正銘のお姫様、イナ姫の愛称で呼ばれている。正確はワガママだが学校には真面目に通っている。「あの受け取ってください」そう言ってチップを渡しているのはかわいらしい容姿のメイドさん。誰もが受け取るチップを受け取らずただ赤絨毯の邪魔になるからと他の生徒同様机を退けていた男子生徒がいる。そんな彼に受け取ってもらわないと叱られると懇願する女の子のメイドに「このくらい何でもないよ。クラスメイドだし協力するのは当たり前だよ、貰ってる人を否定する気は無いけど汗水垂らすにはまだ足んないしそれにハイ」と先ほど買っておいたコーヒー缶をメイドさんへ「お疲れさま」と差し出す其れを受け取り頰を赤くして「ありがとうございます」とポツリと礼を言う。そんなコーヒー缶をメイドの女の子から奪い「喉渇いたからもらうわね!」と取り上げる稲理お嬢様少し寂しそうな女の子のメイドだがそんな彼女の頰に温かみが振り向くと手のひらにコーヒー缶があった。そんな彼女に「空いてるけどまだ口つけてないからよかったら」という男子生徒に先ほどまでの俯いた顔は晴れ「ありがとうございます」と大きな声でお礼を言う女の子そんなにこやかな笑顔からコーヒーの匂いがメイドさんの頭にコーヒーが浴びせかかる「やっぱり要らないから返すわね、中身だけだけど」振り返るメイドさん「申し訳ありません。稲理様」深々と頭を下げる。握りしめられたらその手は悔しさを滲ませる。稲理たちが立ち去った後は不満の嵐が教室を渦巻いている。そんな教室を後にする男子生徒、名前は”小金 功”背は低く短髪、クラスでは目立つこともなく部活にも入っていない。自転車もママチャリだ。そんなママチャリに乗り学校から帰宅する。大型のマンションの一室ローンは数十年残っている。部屋の入り口を空けるとリビングにはテレビを付けてスマホを弄る女の子がいた。「成今日は部活はないのか?」というお兄ちゃんの呼びかけに「……」答えない昔はお兄ちゃんお兄ちゃんって後をついてきたのに等と思いながら冷蔵庫の麦茶をコップに注ぐそのまま自分の部屋に行こうとするとガシッと服の袖を掴まれる「減った……お腹減った」ポツリとこぼす言葉に「レンジもあるんだし何か冷凍食品でも」という功の言葉に「炒飯……チャーハン……がいい……」”わかった”というまで離しそうもないのであきらめてチャーハンを二人前作りリビングで機械的に食べる妹を残し自分の部屋へ。両親は共働きで妹との四人暮らし、そんなどこにでもいる男子高校生なのだが功にはもう一つの顔があった。自分の部屋に入る功そこには一台のパソコンとスマホが二台机の上にあるパソコンはノート型持ち運び出来るものだ。そしてスマホは功のプライベート用ではない別口で手に入れたものだ。パソコンを開き株価をチェックする功最初のきっかけは小学生の頃、近所に住んでいたお爺さんの家にサッカーボールが入ってしまい取りに行ったとき、部屋に置かれたパソコンを見てしまったことから始まる。お爺さんは昔ながらの一軒家にひとりで質素に暮らしていた。金持ちでもなく貧乏でもない数十年前からこの町で暮らし始める。近所との付き合いはあまりなく静かに暮らしていた………部屋の中を見るまでは……気がつくと羽交い締めにされていた。暴れる功少年そんな彼にパソコンを打ちながら白髪の額に大きな傷がある強面のお爺さんが「運がなかったな(パソコンを打つのをやめ立ち上がる)サッカーボール1個のために(引き出しから黒い塊を取り出す)命を落とすとは!(銃口が額に当てられ)じゃあな………怨むんなら好奇心旺盛な自分を怨みなよ」引き金と共に額に玩具の矢が当たる「………」びっくりして声が出ない。その様子をつまらなそうに見下ろすお爺さん「ちぇ……ちびらねーのか?面白味のない小僧だ!まぁこれに懲りたら他人様の家に無断で入るなよ”取らせてください”くらいはいいなよ」そんな予想よりお茶目なお爺さんとの出会いからここへちょくちょく通うようになった功。お爺さんは数十の偽名の口座を持ち数万の株を保持するトレーダーだった。本名は教えてくれないかわりに自分の事を”クラウド”って功に呼ばせていた。功が高校に入るまでクラウド爺さんの元で色々な事を学んだ功だったが、ある日忽然と姿を消してしまったクラウド爺さん。もぬけの殻となった一軒家には功が稼いだ額の入った三つの口座と”クラウド”と書かれた紙が置いてあった。次の日一軒家はキレイに燃えて無くなっていた。中からは焼死体が発見された。年格好からクラウド爺さんだと判別される。その焼死体の額には傷は無かった………クラウド爺さんは生きている!分からない事だらけだがこうやって”クラウド”に似せてトレードしていればいつか……そんな淡い期待をして1年がたとうとしていた。情報収集とデイトレードを終え「古渡戸グループって確か」自分のクラスのイナ姫の家が買収されかけてる。そんな株価のレートから読み取る功「ここ数日少しずつだけど古渡戸グループの株が買われてる。買ってるのは”ヤカタハ”東南アジア諸国にあるペーパーカンパニーか」表立って買えないから新興国の一企業として参入「まぁ爺さんに習ったそういう会社もあるって…………様子見がてら買ってみますか週末ちょうど総会だし」スマホをクリック………次の日曜日に電車に乗って隣町へ「ここが、古渡戸カンパニーか」そういいながら会社を眺めながら中に入っていく。総会いわゆる株主総会のことでこの古渡戸カンパニーの株を持っていれば参加可能だ。先日参加するために一株買っておいた。席は疎らだ。その現況は自分の座る後ろの席の真ん前、最前列に鎮座する南国のチャラいアロハシャツポケットにはギッシリ詰まった諭吉さん、真っ昼間からビール片手に両隣にはキャバ嬢を引き連れている。そんなはた迷惑な株主だから席が空いているという理由だけではない。「ふーんアレがヤカタハ?東南アジアにしては白いですが」ちょこんと功の列の端に座る女性眼鏡にネコミミの帽子ノートパソコンを開きブツブツと話している。よく見ると回りにはサラリーマン風のおじさん買い物帰りの主婦等空いた席に座っている。そんな時最前列から言い争う声が聞こえる「ここは株主が集まる総会だ!場をわきまえたら」と最前列のチャラアロハに対して進言するサラリーマン風のおじさんだがそんな声はお構いなしでキャバ嬢との会話を楽しむチャラアロハにいきり立つリーマンおじさんにチャラアロハが「”何株持ってんの”」とおじさんに投げかけるチャラアロハそんなことを話してないというリーマンおじさんにチャラアロハが「ここは株主が集まる株主総会(立ち上がりおじさんの面の前で覗き込みながら)あんたは何株持ってんの、何処にでもいるんだよねマナーだの倫理だの道徳だの、そんな金にもならないことに力注ぐ奴がさぁ、特にこの国はそういうの強くて、あぁでもいまは結局はなし聞いたら”金かよ”って奴ばっかでさ(諭吉の札束をポケットからポンと放り出す)ここの株の価値は今は一株数千円百株持っても数十万だ。今足元にあるのはたかだか数百万(見下しながら)ここであんたの株全部俺にくれよ。この先どうなるか分からん古びた船に乗るより、新しい安全な船に乗り換える方がいいと思うけどなぁ」リーマンおじさんは自身の株をあっさりチャラアロハに売り会場を後にする。チャラアロハの高笑いが会場を包み込むそんなチャラアロハの前に姿を現したのは黒ギャルのクラスメイトであるイナ姫こと古渡戸さんだった。そんな彼女の前に両隣のキャバ嬢を置き去りにして向かうチャラアロハそして古渡戸さんをなめまわすように見つめて「いいねぇ~♪やっぱ現役は肌が違うよねぇ~♪」後ろからキャバ嬢のヤジが飛ぶがポケットの諭吉を放り投げ「キャンセルもう帰れ~♪」というチャラアロハの一声で諭吉を握りしめ会場を後にするキャバ嬢。そんなことにお構いなしに”役員”と呼ばれた席を指差し「ここで良いのよね」といつもの年老いた執事ではなく、コーヒーをあげた女の子のメイドさんに尋ねている。ここですと椅子を引きそこに座るイナ姫その様子にアロハシャツが「天下の古渡戸グループも今やこの有様ですか?(隣に並ぶ会長の席を見て)あらら従業員の給料すら払うことなく雲隠れですか?」そんなアロハシャツに「お祖父様やパパたちは今必死に資金集めしてるの!逃げてるわけじゃない!」アロハシャツが大コワイコワイと手を挙げながら「でも問題ないですよ。今この会社の株の20%がヤカタハこと私が所持しています(アロハシャツの手がイナ姫の頰を撫でながら)つまりこの古渡戸の全ては俺のモノということ」頰から体へと滑り落ちようとするアロハシャツの手に”あたしがここで我慢すればいい、すぐにお祖父様たちが……誰か………助け」不意に後ろに引かれるイナ姫「その手を………離して………稲理様から離れて!」弱々しくも芯のある声でアロハシャツに言い張るコーヒーのメイドさん。そんな彼女の前に諭吉の束が投げられる「いいねぇ~勝ち気なメイドさんも好きだよ、でも今は邪魔しないで時給いくらそれとも月給ほら君の足元のお金はキミのだよ。その1年分の給料前払いされたと思ってさ、違う仕事を探しなよ」目の前の札束を拾うコーヒーメイドさん「………」俯くイナ姫”仕方ない……仕方ないよ先がないって辞めていった執事やメイドたち彼女だけは何で残ったのかは分からないけど”札束を拾ってアロハシャツの前に立つコーヒーメイドさん「なんだい強欲だね、足らないのかな、分かったしょうが無い今回は特別だよ」そう言ってポケットから札束を出し渡そうとする手にスッと手に持っていた札束を置きながら「落ちたのでお返しします!私は稲理様のメイドです!お席へお戻りください!」というコーヒーメイドに「生意気なメイドだ!どうせこの会社の全てが俺のモノなんだよ」というアロハシャツの拳が稲理を守るメイドさんに、しかしメイドさんは目を瞑りながらも稲理の前を離れない………「シナほら見えるかい?アレが稲理様だよシナと同い年なんだよ」肩車された父の上で遠くにホントに遠くにいる女の子周りには数十人のボディガードが取り囲むその中心で何気なく無邪気に遊ぶ女の子、父は稲理に仕える掃除係の一人に過ぎない。そんな父が誇らしくいつも話していた稲理グループ今の会長に恩返ししたくても………結局出来なかった。最後は稲理様を守って笑って………文句の一つも言ってやりたくて……でも父の墓の前でわんわん泣く彼女を見たらそんな気持ちは飛んでしまった走馬燈のように思い出が頭をよぎるメイドさんだったがアロハの拳はメイドさんには届かない「なるほど?株式会社だから株価を持った者が好きにしていいって事か」先程まで後ろのパイプ椅子に腰掛けていたシナや稲理と同い年であろう少年がアロハの腕を掴んでいた。ツバのついた野球帽に軽く着崩したシャツとズボン決してオシャレとはいえない格好だが王子様効果なのか彼女達にはそれが新鮮に映る。離せよ!と言わんばかりに腕を振りほどくアロハ「王子様気取るのはいいけど、キミじゃオレには勝てないよ」大きく両手を広げ「ここは株主総会!泥臭いケンカじゃなく株つまり”お金”が支配する場所なんだよ!キミはあれか?どうせこの会社面白そうだの、株主総会に参加してみた的なチューバーさんなのかな?まぁ(周りの冴えないリーマンやデイトレーダーの主婦を見ながら)端金稼ぎの哀れなアリさんの集まりの一人ナンだろう?だったらアリさんはアリさんらしく、黙ってオレの落とす食べカスでも食べてろよ!」その場に諭吉が舞っている「ほらほら、遠慮は要らないよ?さっきのリーマン見たいに拾いなよ恥ずかしい事だ!なんて思いなさんな!大人は必死に働くのさ。親の介護、子供の習い事、病気、付き合い、ソシャゲ”金”が無くちゃあさ”何一つまともに出来ャしないのさ!”クッッッハァハァハァ!ウケるよな!そこのメイドさんやお前みたいな奴はホントに珍しい……けど」再び王子様を見下ろしながら「二十七……いや今八%になった。三十を超えるとオレの筆頭株主が決定だ」そういいながら会長と書かれた席に腰掛けるアロハシャツ然し王子様は彼の隣に座る「おいおいガキここはVIP席数株しかもたないその日暮らしのハイエナトレーダーが座って言い席じゃ!」アロハの顔面の前にスマホを翳す「すいません、今し方ここの株式の二十八いえ今は二十九%の株主に就任しちゃいました。なのでここに座る権利ありますよね」顔色一つ変えず機械のように話す王子様(ここの株式は持株が多い、俺でも数%あつめるのに数日ついやしたんだぞ………こいつ其れをたった数分間でやったのかよ!)

「へぇ~やるじゃん認めてやる。ハイエナじゃ無いってな」椅子を跨ぐように座り「今の状況は俺が三分の一、王子様も三分の一そこのお嬢さんも持株三分の一、残りはカスのアリさん達が少しずつだ。さぁーて困った困ったこのままでは俺は会社を手にできない。お嬢さんは会社を守れない次の一手は王子様とお嬢さんの株式結婚だろうな、そこでどうだ俺の株式を定価の八十倍で買わないか?そうすりゃここは引いて(まぁいい商売は引き時も肝心だ。後で)「八十倍なんてそんなの違法よ!」「物の価値は変動するんです。相場はある程度反映されますけど全部じゃない」

「いいねわかってんね」「でも売れませんよ“私の株は“」「はっ何言ってんの日本語勉強出来てる?誰が御前の株式なんて」「だから私の株式ですよ」スマホをスクロールすると“ヤカタハ“の文字がある「東南アジアの小さな国“エルトラーサ“にある商社表向きはねそこの(別のページをスクロール)代表取締役パリツ・カムサイこれ私なんですよ、なんて知り合いなんです」パリツ?パリツって誰だよすぐにスマホである番号へ繋がらない「あぁそうそうこれ差し上げます。前の社員が“税の免除で取引のあった裏帳簿」株式の証書を投げ捨てその場を後にする。其れを拾う王子様自分の持つ証書を合わせ孫娘の元へ「寄附します」テーブルに証書を置き立ち去ろうとする「何で何でこんなことしてくれんの」その答えは返ってこない。其れを見守るメイドさん………後日の学校「今日からこのクラスに転校生が来ます。どうぞ入って」ドアが開く長い髪を後ろでくびる大きなリボンが特徴の女の子が教壇に立つ「騰慶留 シナといいます。よろしくお願いします」可愛いの声が鳴り響く彼女が脇を通る瞬間机に紙が落としていく『昼休み 美術室へ』「…………」はぁ………「来ましたよ、お嬢様方」そこにはシナさんと稲理さんがいた

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