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人名長いと文字数稼げる!(笑)
「くっくっくっ」
不意に壇上から笑い声が響き渡った。
誰もいなかったはずのその場所には、誰もが知っている人物が今は立っていた。
「へ、陛下っ!」
「父上!」
国王であるヴェルティエフォルトの突然の登場に、驚きながらも、皆、平伏し臣下の礼をとった。平伏してないのは3人だけ。第一王子のクォーツフォルトと現在学園に通っている第二王子と第二王女だけであった。
「あらあら陛下。笑ったりしたら失礼ですよ。くすくす」
続いて王妃のティアフォーナも現れた。
「そういうお前も笑っているではないか」
「あら、失礼。私笑っていました?」
「惚れ直すような笑顔だったぞ。あぁ、そうだ。皆の者、面を上げ」
そんな楽しそうな国王夫妻の会話がされている中、人々が頭を上げると壇上には次々と人が現れていた。
宰相、騎士団長、魔術師団長、王弟殿下……魔術師団長がいるということは、これは魔術師団長の魔術であろう。
そしてその後に現れた2人の人物を見てミューズフェルは思わず声を出していた。
「お祖父様!ベルおじ様!」
会場内が一瞬しんとなり、そしてざわめきだす。
それは仕方がないことであろう。ミューズフェルがベルおじ様と呼んだ人物は、先王であるベルガーナルドであったのだから。
「おぉ、ミュー。久しぶりだのう。元気だったか?」
「はい!お祖父様も元気そうで何よりです。お祖母様も元気ですか?」
「元気すぎるほど元気だぞ。お前の帰りを楽しみにしているぞ」
「私も会えるのが楽しみです!」
会場内の雰囲気とは裏腹に何とも暖気な会話が繰り広げられている。
「ベルおじ様は何故こちらへ?」
「何故とはつれないな。ミューちゃんに会いに来たに決まっておろう。まぁ、ついでに孫の卒業を祝いに来たつもりなんだが……」
「まぁ、お孫さんがいたんですね。ついでなんて言わないで、恥ずかしがらず盛大にお祝いしてあげてください」
ミューズフェルと笑顔で話していたベルガーナルドだったが、孫の話となると苦虫を噛み潰したような顔になった。
(お孫さんのお祝いって照れくさくて素直に言えないのね。おじ様ってば意外にかわいらしいところがあるのね)
なんて曲解しているミューズフェルもミューズフェルだが。
そんなミューズフェルを見て、然も楽しそうにヴェルティエフォルトが言った。
「そしてレイフォス嬢の言うところのベルおじ様の孫は、私の愚息でもある。……ふむ。ベルおじ様か。いいな。私のこともヴェルおじ様と呼ばないか?」
「いえ、滅相もございまんっ!……え、あれ?ベルおじ様の孫が陛下のお子様……と言うことは、ベルおじ様って…先王陛下!?」
ミューズフェルは驚き慌てていた。
まさか時々祖父を訪ねて来ていた老人が先王陛下とは…。
「私なんて隠居したただのじじぃさ。シルバーと同じだ」
「いやいや。男爵家の隠居と国王の隠居を一緒にするのではない」
ベルガーナルドの言葉に、祖父シルバーアックスが突っ込む。その言葉に皆が首を縦に振った。
「くっくっくっ。まぁ、その話は後にするとして、クォーツフォルトよ。私達の立場の者がこのような場にいると、皆緊張で楽しめぬと思い、姿隠しの術で息子達の卒業を見守ってた訳だが……何やら楽しそうな事をしていたな」
「………っ!」
「ローディニア嬢と婚約破棄とか…」
先ほどまでの楽しそうな雰囲気とは違い、父親である国王の鋭い眼光で射ぬかれ、クォーツフォルトはたじろいでいた。しかし心配そうなミューズフェルを見て気力を振り絞った。
……まぁ、ミューズフェルは心配そうな顔に見えるだけで、心配なんかちっともしていないんだが。表情筋詐欺極めたり。
「聞いてくれていたなら話は早い。アルティスミーナはミューズフェルに酷い仕打ちをしていました!私はこのような性根の腐った女とは結婚はできませんっ!ましてや未来の国母を任せることなんて以ての他です!」
「……ほう。それでローディニア嬢と婚約破棄をしてどうする?」
「私はこのミューズフェルと結婚しますっ!」
(……!?)
クォーツフォルトの言葉に会場内が再び沈黙に落ちた。
すると可笑しそうに扇子で口元を隠し、ティアフォーナが口を開いた。
「ふふふ。あら、やだわ。この愚息は。先ほどそちらの令嬢から、愛してないと言われたのを忘れたのかしら」
「そ、それは…ミューズフェルは恥ずかしがってそんな風に言っただけで……。ミューズフェル、私の事を愛しているよな?愛してると言ってくれ」
潤んだ瞳で頬を染め真っ赤になっているミューズフェルに、クォーツフォルトは優しくささやいた。
(ありえない!ありえない!ついさっき、あんなにキッパリ言ったのにっ!言ってくれ、なんて王族の命令じゃん!男爵位じゃ逆らえないじゃんっ!)
皆に迷惑かけられないと、でも結婚なんて考えられない、そんな悲しみと怒りの葛藤のミューズフェルであった。
そんなミューズフェルを見てシルバーアックスは一歩踏み出そうとしたが、ベルガーナルドにここは息子に任せとけと目で止められる。
不満気で何か言いたそうなシルバーアックスだったが、何かを我慢するように首を横に振ると元の位置に戻った。
そんなシルバーアックスを先王・国王夫妻の3人が何とも言えない表情で見つめていたのである。
ブックマークしている方がいると、書かないといけない!強迫観念に囚われます(笑)
のろのろ更新ですが、ありがとうございます。