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ミサイルを盗む準備は整った。


梅沢はピックアップしていた五十人の人間に優先順位に従って次々と電話を入れた。ガウリン、ミルコ、ジェノビッチ、ハッサン、シン、梅津、大城の他にベトナム人のホアンチー、フィリピン人のピコ、香港からはトンチーとルーチンなどの男たちが梅沢の誘いに乗り、仕事の内容を知らないままに翌日までにウチナー島に来て、ウチナー島で梅沢と一緒に仕事することを承知した。


梅沢はミサイルをカリーナ弾薬庫から盗み出すグループのリーダーのウィンストンに電話をした。

「ミスター・ウィンストン。梅沢だ。」

「おお、ミスター。ウメザワ。」

「カリーナ弾薬庫からミサイルを盗み出す手筈は大丈夫だろうな。」

「大丈夫だ。ミスター・ウメザワの準備はオーケーですか。」

「ああ、準備はできた。ミスター・ウィンストン。お前がミサイルをカリーナ弾薬庫から運び出すことに失敗すれば元も子もないからな。絶対に失敗をするなよ。」

「大丈夫だ、ミスター・ウメザワ。作業に馴れた連中だからミサイルをトレーラーに乗せるだけの仕事は造作もないことだ。カリーナ弾薬庫からカリーナエアーベースに出て、カリーナエアーベースの第三ゲートから運び出す予定だ。私の仕事はカリーナ弾薬庫の倉庫でミサイルをトレーラーに載せてカリーナーエアーベースの第三ゲートに運び出すまでだ。そうだよな、ミスター・ウメザワ。」

「そうだ。第三ゲートからミサイルを出してもらわないと私の仕事はおじゃんになる。」

「完璧にやるから案ずることはないよ、ミスター・ウメザワ。」

「わかった。それじゃ、ミサイルを第三ゲートから運び出す時間が決まったら連絡する。台風十八号がウチナー島に上陸する時間がはっきりしないと決めることができない。ミスター・ウィンストンも台風十八号の動きに注意してくれよ。」

「ああ、気象予報を定期的に聞くよ。」

「そうしてくれ。それから、いつでも携帯電話を取れる状態でいろよ。」

「もちろんだ。」

「じゃな。ミスター・ウィンストン。」

梅沢は電話を切った。


梅沢は金城に電話した。金城は自動車の修理工場を経営している人間である。梅沢が盗難車も含めて色々な中古車を輸出する時に自動車の修理、解体、切断、組み立てを金城に依頼している。自動車については梅沢の要求をなんでも応じてくれるのが金城であった。

「金城。梅沢だ。」

「ああ、梅沢さん。」

「シーモーラー五台を運び出す準備をしてくれ。」

梅沢はシーモーラー五台を金城の修理工場の近くにある倉庫に置いてあった。

「いつシーモーラーを使うのですか。」

「明後日になるだろうな。はっきり言えば台風十八号がウチナー島に上陸した時だ。」

「台風十八号がウチナー島に上陸した時ね。」

「そうだ。台風十八号の進路と時速が関係するからその日にならないと正確な時間は言えない。」

「まあ、梅沢のやる仕事だから驚きはしないよ。」

梅沢は苦笑した。

「ところでシーモーラーを載せるトレーラー五台と運転手の手配は大丈夫か。」

「私の会社の従業員がトレーラーの運転はできるし、トレーラーの準備もすぐできる。」

「シーモーラーは私が指示する場所に運んでくれるだけでいい。場所は一般人が入ってはいけない場所だから、運んだらお前らは直ぐに引き上げるのだ。」

「前にも聞いたが、シーモーラーでなにをするつもりなんだ。やっぱり私には教えないか。」

「そうだ。金城は聞かない方がいい。」

「しかし、知りたいな。」

と言って金城は笑った。

「仕事が成功したら後で教えるよ。」

梅沢は笑いながら言ってから、

「シーモーラーの準備を頼むよ。」

と言った。

「承知した。」

金城の返事に、「頼むよ。」と言って梅沢は電話を切った。


 梅沢は金城との電話を切ると具志堅に電話した。具志堅はトレーラーで自動車や重機などを運ぶ商売をしている。

「やあ、具志堅。梅沢だ。」

「梅沢さん。仕事ですか。」

「そうだ。クレーンを運んでほしい。」

「へえ。どこのクレーンを運ぶですか。」

「オーケー重機社のクレーンだ。」

「どこに運ぶのですか。」

「今は場所については言えない。運ぶのは明後日になるが運ぶ時間はまだ決まっていない。明後日に私が指示した時間にオーケー重機社の大型クレーンをある場所に運んでほしい。オーケー重機社からクレーンを運び出す時にはこっそりと運び出さなければならない。」

「こっそりとか。」

「そうだ。クレーンに鍵はつけておく。そういうことでオーケー重機社の社長と話はついている。」

「わかった。」

「とにかく、明後日はいつでも行動できるようにしてくれ。」

「回収はいつやるのか。」

具志堅の質問に梅沢は苦笑した。

「回収はなしだ。具志堅、察しがつくだろう。」

「まあな。」

「オーケー重機社の社長はそのクレーンは盗まれたと警察に報告することになっている。」

「そういうことか。」

「そういうことだ。」

梅沢は笑いながら具志堅との電話を切った。



梅沢はミスター・スペンサーに電話した。ミスター・スペンサーはアジア・アフリカ一帯で武器の売買をしている武器の大商人であり、ミスター・スペンサーが梅沢からミサイルを一基一億円で買う約束をしている。

「ミスター・スペンサー。梅沢です。」

「オー、ミスター・ウメザワ。」

「台風十八号は八十パーセント以上の確立でウチナー島を直撃します。私が企画した計画をいよいよ実行する時がきました。ミスター・スペンサーの協力をお願いします。」

「フフフフフ、ミスター・ウメザワはおもしろい計画を立てる。私の方は準備オーケーですよ。」

「ありがとうございます。この計画が成功すればミスター・スペンサーとの取引をもっと増やしてくれませんか。」

「よろしいですよ。」

「それでは失礼します。」


梅沢はカリーナ弾薬庫からミサイルを盗む手配の全てを終わった。後は台風十八号がウチナー島に上陸するのを待つだけである。

カリーナ弾薬庫からミサイルを盗むことができると豪語しているアメリカ人が居ると大城から聞いたのは六年前であった。しかし、カリーナ弾薬庫からミサイルを盗むことはできても四方を海に囲まれたウチナー島から国外にミサイルを運び出すことは不可能である。梅沢は大城からカリーナ弾薬庫からミサイルを盗むことができるアメリカ人が居ることを聞いてもミサイルを盗みだすということに興味は湧かなかった。

梅沢がミサイル窃盗を真剣に考えるようになったのは国際的な武器商人ミスター・スペンサーがミサイル一基を一億円という莫大な値段で買うことを知ってからである。梅沢はミスター・スペンサーに会ってそれが事実であることを確認した。

それからの梅沢はウチナー島からミサイルを運び出す方法を真剣に考えミサイル窃盗の企画を練り上げた。企画をミスター・スペンサーに説明するとミスター・スペンサーは梅沢の企画を賞賛し協力を約束した。

梅沢は二年を掛けて機材や人材の確保に奔走した。そして、三年前から台風がウチナー島に上陸するのを待った。台風がウチナー島上陸する可能性があったのが過去に五回あり、ミサイル窃盗のためにメンバーをウチナー島に呼んだのが三回あった。しかし、それらは全て期待はずれに終わった。

ウチナー島に来襲する台風に期待しそして失望したことが過去に五回あったが、どうやら今度の台風十八号は梅沢の希望を叶える台風になりそうである。台風十八号がウチナー島を直撃する確率は日に日に高くなってきて、ミサイルを盗み出す時が刻々と迫ってきた。梅沢は一時間毎に電話で台風情報を聞き、台風十八号がウチナー島に上陸するのを今か今かと待っていた


そして、とうとうその日がやってきた。


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