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なまけものは、今日も修羅の道を行く  作者: 闘者 在前
第一章
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身の振り方

 オレは朝日の眩しさで目を覚ました。

(ん~、よく寝たぁ)

 ベットから出て伸びをしたところでノックをする音が鳴った。

「イツキ、起きてる?」

 アシリアの声だ、起こしに来てくれたらしい。

「起きてるよ」

 アシリアが部屋に入ってきた。

「おはよう、よく眠れた?」

「おはよう、おかげさまで、久しぶりに寝たって感じ」

「それは良かったわね、朝食の用意出来てるから、早く来て」

 と言って部屋を出て行った。


 朝食を食べていたら、髪の毛ボサボサの村長が頭を抱えて入って来た。

「う~、頭が割れる」

「おはようございます、二日酔いみたいですけど、大丈夫ですか?」

「おはよう、このくらい何ともない」

 オレは食べ終わったので、席を立とうとすると。

「イツキ、もう少ししたら長老の所に行くから、部屋で待っててくれ、時間になったら呼びに行く」

「長老ですか、分かりました」


 部屋で待つ事、多分一時間くらい経って、村長に呼ばれた。

 村長、ヴィレム、オレ、三人で長老の家に向かった。

 長老の名は『アンディ=エリッサ』と言い、御年九十七歳で、最近は体調が思わしくないみたいだ。

 顔合わせと、自己紹介程度の話をして外に出された。

 村長は、中でなにやら話をしたみたいだった。

 そしてその後、村人のほとんどが広場に集められ、村長が皆にオレを紹介してくれた。

 村長とヴィレム、そしてアシリアのおかげで、村の人達はオレを受け入れてくれるみたいだ。

 心優しい人達で良かったと、心の底から思った。



 オレがこの村に来てから、半月ほどが経っていた。

 村の人達は、よそ者だったオレに本当に良くしてくれる。

 まるで昔からこの村に住んでたかのように接してくれる。

 時に優しく、時に厳しく、オレは居心地の良さを感じていた。

 だからオレも出来るだけ村の手伝いをするようになった。

 畑仕事やマキ拾い、その他雑用も進んで引き受けた。

 しかし最近は子守をする事が多くなっていた、子守というより、子供達の遊び相手と言ったほうがいいのかもしれない。

 オレは子供に懐かれる方ではなかったはずだが、この村では違っていて結構人気者。

 特に四人の子供達はオレの所に毎日来ていた。

 いつものように子供達と遊んでいると、ヴィレムが近寄ってきた。

「イツキ、お前はこの村に溶け込むの早かったな、特に子供には人気者だ」

「そっかなぁ?確かに子供達には懐かれてるかもなぁ」

 そこに洗濯中のアシリアが通りかかって、不機嫌さ丸出しでこう言った。

「きっと精神年齢が同じくらいだからですわ、兄さま」

 オレは恐る恐る聞いてみた。

「アシリアさ~ん、なんか怒ってないですかぁ?」

「イツキは私のどこが怒ってるように見えるのかなぁ?私は、お洗濯手伝ってくれるって約束したにも関わらず、遊びほうけて約束を破られて、不機嫌になるほど心の狭い人間ではありませんから」

 オレはぐうの音も出ない、嫌な汗ばかり流れてくる。

 しかしヴィレムはニヤニヤしながらこう返した。

「なんだアシリア、最近イツキがかまってくれないから、焼きもち焼いてるのか?イツキを子供たちに取られちまって」

 アシリアの顔が一気に真っ赤になった。

「ちっ、違うわよ、兄さまのバカ!」

 と、一言だけ言って走っていってしまった。


「おいヴィレム、変な事言わないでくれよ、アシリア怒っちゃったじゃないか」

「怒らせたのはイツキだろ?まぁ大丈夫だ、気にするな」

「お前は気にしろよ」

 オレは子供たちに向き直り。

「よーしお前ら、今日は予定変更だ、アシリアを手伝うぞ作戦に変更する、みんな先にアシリアの所に行って手伝っててくれ、オレも後から行くから」

 子供たちは全員で「は~い」と返事をして、アシリアの方に走っていった。

「おいおいイツキ、子供に手伝わせるのか?」

「オレも後から行くさ、それより聞きたい事があるのだが」

 そう言ってオレは村の外れで、剣の練習を一人でしている女の子を指さした。

「あの子、いつも一人だよな、話した事も無いし、こないだは弓の練習してたっけ」


 ヴィレムはどうしたもんかと思いながらも話してくれた。

 女の子の名前は『フローラ=ムスタング』十四歳、元々はこの村の人間ではなかったみたいだ。

 フローラは肌の色は白く綺麗な金髪は肩くらいでそろえてある、愛らしい顔立ちをしている。

 何年か前まで、この村にムスタングという夫婦が住んでいて、なかなか子宝に恵まれなかったらしい。

 どうしても子供が欲しかった夫妻は、王都の孤児院で当時二歳だったフローラを養子に迎えた。

 ムスタング夫妻は二人とも弓の名手で、この村で右に出る者は無かった。

 そんな二人に可愛がられ大事に育てられたフローラは活発でよく笑っている子だったらしい。

 しかし四年前、用事がてら王都に三人で行った帰り道で賊に襲われた。

 ここからは推測みたいだが、ムスタング夫妻は逃げきれない事を悟りフローラを林の中に隠し、自ら囮となって、村から遠ざかって走り、殺されたらしい。

 フローラは一人で村に帰って来たという。

 それ以来フローラから笑顔は無くなり、人とあまり接しないようになったという。

 フローラの弓の腕は両親に鍛えられていた為、大人顔負けだそうだ。

 その腕を買われ、狩りには必ず連れて行くみたいだ。


 その話を聞いたオレは。

「弓の練習はともかくとして、剣の練習は復讐のためか?」

「フローラは何も言わないが、恐らく親の仇の顔を見て覚えてるのかもしれない、とオレは思ってる」

「何とかならないのか?」

「もう四年間もあの調子だ、多分フローラは復讐すると固く心に誓っているのだろぅ」

「仮に復讐を遂げたとして、その先には何も無いと思うけどな」

 するとヴィレムが思い出したとばかりに。

「あっ、イツキ、村長が呼んでたんだ、すまん、すっかり忘れてた」

「それを先に言えよ、お前後で殺す」

 と言いながら、オレは全速力で走った。

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