王との謁見③
アレクシの最初の言葉はイツキの予想を裏切った。
「リーナよ久しぶりだな、それと最初に言っておくぞ、これから言う事は命令と受け取ってくれ」
「お久しぶりです、アレクシ王、何なりとご命令下さい」
「事あるごとに言っているが私とお前は歳も近い、幼馴染でもある、だからここにいる者達の目を気にせず、敬語や堅苦しい言葉を使わず、友達として話をしてくれ」
周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。
するとリーナは頭をかきながら立ち上がり。
「あぁ、分かった分かった、そうさせてもらう」
どうやらこの問答は前からあったのだろうとイツキは思った。
「そうだ、それでいい、それではリーナ、早速だが隣にいる少年を紹介してもらっても構わないかね?私の記憶が確かなら初めて見る顔だと思うが?」
「おい、立って自己紹介してやんな」
その言葉にイツキは速攻で反応した。
「王様、お初にお目にかかります、私の名前は、イツキ=オトハと申します、イツキとお呼び下さい、以後よろしくお願いいたします」
アレクシはイツキの名前を聞いて、何故か聞き覚えがあると思った、しかし、いつどこで聞いたかは思い出せない。
「イツキと言ったな、初めて会うと言ったが、おぬしどこかで私と会った事が無いか?」
「いえ、お会いしたのは初めてです」
「そうか、そうであろうな、私の思い違いだ、許してくれ」
イツキは軽くお辞儀をした。
「それではリーナ、早速だが本題に入ろうか」
「窃盗団の件だったら、私の横にいるイツキが一人で全てを片づけた、信じられないかもしれないが事実だ」
この部屋にいる全員が一瞬の間を置きイツキに注目し、そしてざわめきだした。
そんな中、最初に口を開いたのはアレクシだ。
「リーナ、冗談、では無いのだな?」
「私がどんな人間か分かっているだろ?」
リーナはお手上げポーズをとっている。
「そうだったな、疑ってすまないリーナ、ではイツキ、詳細を話してもらってもいいかな?」
アレクシに促され、イツキはイオアニス村に向かった所から話し始めた。
イオアニス村での出来事を話し終わるとアレクシが質問してきた。
「ちょっと聞いてもいいかね?」
「何でしょう?」
「三十人以上を一人で倒したと言うのか?しかも今聞いた感じだと、短時間で倒したみたいだが?」
「まぁ雑魚ばかりでしたから」
アレクシは驚きながら先の話を促した。
「そ、そうか、ではノネット村での話を聞かせてくれないか」
イツキは言われるがまま、淡々と話しの続きを話し始めた。
ハシッド、三鬼を倒したイツキの話を全員が固唾をのんで聞いていた。
話を聞き終わり、アレクシが質問してきた。
「話を聞く限り、あの四人を相手にして余力を残して勝って見せたという事なのかね?」
「そうですね、本気は出して無かったです」
「何と言う事だ、我々は騎士団の半分以上の戦力を送ったにもかかわらず、返り討ちにあったというのに、それをたった一人で成し遂げてしまうとは」
この部屋の殆どの人間が信じられないという様子だった。
「リーナもその時の出来事を見ていたのかね?」
「いいや、私は最初にアムディルとかいう奴と戦い、簡単に負けてしまってな、すぐに気絶させられてしまってイツキが戦っている所は見ていない」
アレクシが驚いた様子で返答した。
「そうだったのか、いや信じられん」
「私の子供達、ヴィレムとアシリア、それと村の数人はイツキの戦いを見ていたからな、今聞いた話は全て事実だよ、私も最初は信じられなかったさ」
「一つ質問しても?」
アレクシがイツキに聞いてきた。
「何でしょう?」
「君は三鬼の内の一人、ミカネルは殺さずに従えてるみたいだが、それは何故だい?」
イツキはその理由と経緯そして今のミカネルは敵対する意思は無い事をアレクシに話した。
「そうか、納得はしたが本当に敵対する事は無いと言い切れるのかね?」
「僕は大丈夫だと確信しています、村長に鎖に繋がれて肩を揉まされていましたし」
イツキはリーナに頭を殴られうずくまっている。
アレクシがリーナの方を向いた。
「おほん、私も大丈夫だと思うぞ、今も村に置いてきているしな」
少し考え込んだアレクシが騎士団団長の方を向いた。
「我が国最強だと言われる騎士団団長である『レオンハルト=ウェーバー』よ、率直な意見を聞かせて欲しい、今までの話を聞いてどう思う?」
レオンハルトは少しの間を置いて答え始めた。
「そうですね、ここにいる皆さんと同じで信じられない、というのが率直な意見ですかね、あの四人を倒せるのは私以外には居ないと思ってましたから、しかし事実ですからね、受け止めております」
「なるほど、では質問を変えよう、そなたから見て、イツキという少年はどう映っていて、どう感じる?」
「難しい質問ですね、私もその少年がどれほどの力があるのか測りかねていますから、第一印象ではリーナ殿の付き添いか?なんて思ったりしていましたし、話を聞いた今でさえ注意深く観察してもそれほどの力を持っているとは思えない、まぁ、実際に剣を交えてみないと分からない、と言ったところでしょうか」
「今の言いようは、戦ってみたいと言っているように聞こえたが?」
アレクシがニヤニヤしながら聞き返した。
「陛下がお望みであるならば」
皆から感嘆の声が漏れた。
「そなたは誰にも負けないというのだな?」
「はっ!」
「それでは、今度は我が国最高の魔術師である『レギウス=マッソネリア』に同じ質問をしよう、そなたは今までの話を聞いてどう思った」
「そうですな、レオンハルト殿と殆ど同じ感想ですかな」
「では、そなたも戦ってみたいと申すか?」
「陛下、何をおっしゃいます、私の歳を考えてくだされ」
「まだまだその力は健在だと思っているが?」
「やれやれ、全盛時でしたら、とも思いますが、そうですな、私の意見がレオンハルト殿と違うとすれば、この少年とは戦いたくないという点ですな」
レギウスのこの話を聞いた皆が驚いている。
「ほぅ、レオンハルトにも勝った事のあるおぬしがずいぶんと消極的ではないか」
「陛下、何年前の話をしておられるのじゃ、あれはまだレオンハルト殿が初めて隊長に就いた時ですぞ、今では私などとうに凌駕しておりますよ」
「では戦いたくない理由は何だというのだ?」
「勘、ですかな、私の中でこの少年とは絶対に戦うなと警報が鳴っております」
「なるほど、おぬしがそう感じるのであれば、それが正しいのであろう」
レギウスは深々とお辞儀をした。
「それでは、他に聞きたい事や、質問がある者は遠慮なく挙手せよ」
アレクシがここにいる全員に聞こえるよう大きな声で言った。
かなりざわついたが意見を述べる者はいなかった。
「誰もいないみたいだな、それでは次に褒賞授与を行う」
アレクシがそう言うと王座の脇のドアから王女であるキエリが、ドレスで着飾り出てきた。
皆から感嘆と歓声が入り混じった声が飛ぶ。
しかしイツキはキエリの姿を見て愕然とするのだった。




