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ガジェットさんとボーダーさん  作者: 路地乃こみち
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第一話『ボーダーさん。現る!』

初めての連載になります。


このお話は、ガジェットヲタクの主人公がとある喫茶店で出会ったいつも上着がボーダーの『ボーダーさん』が気になって仕方ない!という所からスタートします。異なる趣味を持った二人がお互の趣味に影響を受けあう共依存型社会人百合になっていく予定です。不定期ですが頑張って連載していこうと思います!もし気に入って頂けましたら応援よろしくお願い致します!(恐らく縦書きPDFの方が読みやすいと思います。)


 珍しく奮発した桜の花びら模様をあしらったパステルピンクとホワイトのグラデーションのジェルネイルが、同じく奮発して買ったPFUのキーボードを花筏の様に撫でる。ホームポジションのキートップを爪先で二回引っかくと、良い言い回しが思いついて思わず口元が緩んだ。打鍵音がカプーチーノ・キアノのスチームミルクと一緒に香り高い空間に淡く溶けていくと、純喫茶特有のクラシカルな店内を紡ぐ木の温もりとオフィス街とは違う適度な喧騒が程よい緊張感を私に与えてくれる。

 やっぱ、Twitterでフォローしているガジェットゴリラさんが「他のキーボード使えなくなる」って言っていたけど本当にそのとおりだ。マッドな感触とか、打鍵感がたまらない。これが噂に聞いていた静電容量無接点方式……!壊れ難いらしいし、Bluetoothモデル特有のレスポンスの悪さも気にならない。シリンドリカルステップスカルプチャで押下圧は……45g。なるほど、かれこれ三時間程作業しているけど指が全然疲れてない。何よりこのシンプルな見た目に計算し尽くされた技術が詰まっているのが最高にエモい……!

 私は先日購入したばかりのiPad用の無線キーボードの感触を舐めるように確かめながら副業のガジェット関連グッズの雑誌コラムの執筆をしていた。

 入り口を入ってすぐ右側にあるカウンター席の奥から二番目が私のお気に入りの場所だった。余り奥に行くとスマホの電波が悪いのが大きいけど、一番奥の席に堂々と荷物を置ける贅沢も、言い方は多少無礼ではあるがすいている店……いや、潰れない程度に流行っている店のある意味特権では無いかと思う。でも何より、サイフォンが近いから珈琲が出来上がる様子をずっと見ていられる。それがたまらなく好きだった。先月辺りに偶然通りかかって見つけてからというもの、週に三回はここで執筆していた。仕事柄、喫茶店やファミレスをよく利用するのでPCの電源とWi-Fiを確保出来る場所はあらかた頭にタイプしてあった。ドリンクバーを頼めばここよりも出費は安く済む場所も少なくない。しかしこの喫茶店には、どの様な快適さを加筆しても上書き保存されないある要素があった。それは毎週金曜日の夕方に来る「彼女」の存在だった。

 

 行きつけの場所というものは恐らく、大体が固定の客によって支えられていると、ここに通う様になって改めて気づく。最早、話した事は一度も無くても割と顔馴染みというのも少なくない。そんな顔馴染み達に私は「あだ名」を付けて密かに一方的な親近感を持っていた。例えば、「月曜日の東スポ春樹さん」。六十代くらいの男性でいつも四人掛けのボックス席を陣取ってスポーツ誌に目を通した後にブレンドコーヒーを注文すると角砂糖を四つ入れて村上春樹の小説を読みながら飲む。ボックス席は2つしかないのだが、以前団体客が来た時全く席を空ける様子が無かった。古びた喫茶店で大きく容量を取るその様子はさながらWindows7から無償アップグレードしたWindows10の様だった。

「水曜日の折り鶴さん」は多分70代くらいの女性で一番隅っこにある二人掛けの席のソファー側で折り鶴を何時間もずっと折っている人だ。たまに目が合うと一つ私の机にもお裾分けしてくれる。しかもただの折り鶴ではないのだ。複数の鶴の羽が繋がったやつだった。どうやったらこんな風に折れるのか、ニコニコ動画のアスキーアート職人並に謎の技術だった。

 そしてそれは「金曜日の彼女」も例外では無かった。

 しばらく執筆を続けているとドアに付いたベルが音をたてた。

 来た、彼女だ。「ボーダーさん」だ。

 おとなしく「金曜日の彼女」と彼女のあだ名をしておけばそこそこウケそうな邦画位にはなりそうな物を、こういう部分がまだロクにドラマ化のオファーも無い売れない作家たる所以なのだと我ながら自分の感性を少し恥じた。

 年齢は十九か、ギリギリ二十歳位だろうか?なで肩にギリギリ届かない程の黒髪のショートボブ。肌は白く鼻は往年のiPhone3Gの背面加工の様に滑らかな曲線をしており、恐らく聞けば背丈はリンゴ五つ分、体重はリンゴ三つ分と言い出しそうな位、彼女は小柄で愛らしい容姿をしていた。手入れが行き届いたやや太めの眉の下には黒目がちで整った双眸が香り高い空間で空いている席を探していた。

 しかし、私が彼女に対してただならぬ関心を寄せるのは単に容姿が愛らしい。という他にも決定的な要因があった。それは普段ファストファッションの女帝を自負している私から見ても彼女の私服のバリエーションはあまりにも少なすぎた。そう、彼女の上着はいつもボーダー柄。

 彼女は紛れもなく私の中で「ボーダーさん」だったのだ。



ご覧頂きありがとうございます。文量的に少し短すぎるかな?とも思ったのですが5分以内で気軽に読んでもらった方が良いかな?というのと視点を入れ替えたいので読み難さが内容に区切りが良い場面で短く刻んで行こうと思ってます。次はボーダーさんから見たガジェットさんのお話になります。


名前も知らない二人の女性が同じ空間でお互いを思い合う。

そんな百合を楽しんで頂けたらと思います。


ではまた次回。

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