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受験闘争  作者:
3/4

問3


「貴様、何を……」

「これさ」


 僕は手の中に残っていた、長径5cmほどの楕円形の輪を示す。そう、これは――


「0、か……!」

「僕は君が攻撃に集中して僕から気を逸らした瞬間、予め準備しておいた0を、座標軸――つまりxとyに振りかけたのさ。xとyにかけるということは、両辺に0をかけるということ。すなわち、数式は0=0となり、グラフは消失する……!」


 僕はここぞとばかりにポーズをキめ、ドヤ顔で言い放つ。


「0をかければ全て0になる……文系でも知っていることだよ」

「てめぇ……! こうなったら、これを抜いてやる!」


 彼は腰に佩いていた剣を僕に向けた。それは両端がロココ調っぽくくるんとしていて、Sの字を縦に引き伸ばしたような形をしている。あれは……。


「インテグラル……」

「そうだ、これは積分の記号“ (インテグラル) ”。この剣戟(けんげき)を喰らえ!」

「しまった……っ!」


 反比例に囚われている間に僕たちの距離は縮まっていたため、僕は彼の降り下ろした(インテグラル)に対応できない……!


 ザク、という音を聞いた時には、インテグラルソードは僕の体を斜めに通過していた。そして――


「くっ……体が肥大化していく!?」


 みるみるうちに僕の体は巨大化していき、2m、3m……5mを越えた。


「積分とは、微分と逆に次数を上げる計算だ。それを喰らったお前は体を構成するあらゆる数式の次数が上がり、結果、巨人になったってわけだ」

「くそ……」


 彼の狙いは分かっている。僕の体、つまり的を大きくすることで、彼の必殺技である微分を当てやすくすることだろう。そしてその狙いは正しい。この小回りの利かない体では、僕は彼の攻撃を避けることができない。


「これで終わりだ、シブン。浪人したら駿台に行くか河合に行くか、今のうちに決めておくんだな」


 ポケットから“ '(ダッシュ) ”を2つ――1度積分したから2度の微分が必要なのだ――取り出しながら<殺人関数(デス・ファンクション)>が言う。その顔には、勝利を確信した余裕の笑みが浮かんでいる、が――


「君の方こそ、代ゼミか東進か決めておくべきじゃないかな」

「0をかければ全て0になる……文系でも知っていることだよ」

これはなろう名文スレに載る。間違いない。

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