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受験闘争  作者:
2/4

問2


 ヒュンッ、と音をたて、黄金の矢が彼の放った点に向かっていく。そして点と矢は僕と<殺人関数(デス・ファンクション)>との間で激突し、点は明後日の方向へ、矢は地面――先程「1922年」が舞い降りた辺りへ突き刺さった。


「ほう、オレサマの“ '(ダッシュ) ”を逸らすとはな」

「国語常識は得意なんでね」


 やはりあれは“ '(ダッシュ) ”――微分する時に関数f(x)のfの肩に出てくるアレか!


 微分とは、式の次数を下げる操作。僕が存在しているのは3次元の世界だから、まともにあれを喰らえば2次元、つまり平面の存在になってしまう。そうなると僕はペラッペラになり、戦闘不能で不合格(敗北)してしまうのだ。だから、あの技を受けるわけにはいかないのだけど……。


「だがまだだ! 喰らえ、y=1/xッ!」


 彼が両手を大きく広げると、僕の体に謎の直線が描かれる。右肩から左肩へ、そして爪先から頭へと走り、胸の辺りで直角に交わった直角――これは……!


 それに気付いた途端、僕は体の左上と右下から重圧を感じ、動けなくなった。


「ぐっ、こ、これは……!」

「そうさ、これは反比例の式だ。お前の体に浮き上がった2本の線はグラフの軸、斜め上からプレッシャーをかけているのは、反比例のグラフだ」


 数式y=1/x は、そのグラフを第一象限と第三象限に描く。だから僕は、彼の方から見て第一象限と第三象限に当たる僕の左上と右下から、強い圧力を感じているのだ。


 そしてこの状況。このままじゃ僕は動けない。今も一歩ずつ迫ってくる<殺人関数(デス・ファンクション)>は、容易く僕を仕留めることができるだろう。


「さて、今度こそ微分してやるよ、シブンくん」


 そう言って彼は、再びポケットから“ '(ダッシュ) ”を取り出す。それを握った右手を振りかぶり、僕に叩きつける――


 しかしその前に、僕は彼の前から姿を消していた。


「何ッ!?」


 得意技の微分が空振った彼は虚を突かれて周囲を見回し……すぐに僕を見つけた。まあ、ここに隠れる場所なんてないし、ちょっと横に逸れただけだからね。

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