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5:脇役達は杯を重ねる

Noir本編終了後、あちらの世界でのお話です。

 街の中心地近くにある教会の、裏手。多くの人々が静かに眠っている墓地に、俺は静かに足を踏み入れた。


 携えた白い花を供えて、瞑目する。

 かつての同胞達に、祈る。最期まで救いを信じて、しかし救えなかった命へ謝意を、戦い続けた同志へ敬意を。……二度と会えない、哀しみを。


 せめて静かな眠りをと、祈りを捧げた俺は、立ち上がると同時に声をかけられて顔を上げた。


「やはり、ここにおられた」

 振り返ると、穏やかな表情をした元協力者がいた。喪服を纏い花を持つ彼もまた、目的は同じらしい。


「……来てもらえたのか」

「私にとっても……彼らの死は、他人事ではないからな」

 そっと目を伏せて哀しく笑うと、彼──オーティ殿は俺の隣に並んで、花を供えた。祈りを捧げるのを、しばし見守る。


 やがて立ち上がったオーティ殿は、目を細めて穏やかに微笑んだ。


「……少し、話をしないか。オーリック殿」

「……そうだな」

 オーティ殿の誘いに頷き、死者の眠る地を後にした。





 オーティ殿の後を暫く追うと、彼は注意しなければ見落としてしまうような地味な扉を開けて入った。物静かな、高級感すら漂う店の個室に案内されて、少し戸惑う。


「良いのか? 我々のような罪人が、このような場所に……」

「ああ、そんな過去もあったな」

 惚けた顔で答えるオーティ殿に、苦笑が滲んだのは無理もないことだろう。

「清廉潔白、罪は決して許さないと評判のオーティ殿の言葉とは思えないな」

「確かに、しばらく前の私が聞いたら、さぞ自分の未来に失望しただろうな」


 オーティ殿もほんの少し苦笑して認める。店員を呼び、幾つか注文を口にした。元からテーブルに配置されていた瓶を手に取り、慣れた手付きで栓を抜く。


「お酒は?」

「嗜む程度なら」

 無難に返答すると、オーティ殿が何故か含み笑いを漏らした。

「失礼、だが……貴方が貴族のような受け答えをすると、どうにも妙な気持ちになる」

「そうか?」


 一応礼儀作法の一通りは、あちこちに潜伏する同志達と共有していたのだが、そんなに奇妙だろうか。そんな疑問は、続く言葉で氷解した。


「貴方もそうだが、彼も。自分で語る過去と言動があまりにも一致しない」

「……ああ」


 真っ直ぐに俺達を見据えてきた、黒の瞳を思い出す。吸血鬼への嫌悪を、憎悪を募らせながら、俺達の有り様に一切口を挟まなかった青年の眼差しは、復讐に取り憑かれたものらしからぬ真摯さがあった。


「そういえば彼も、王城での振る舞いを心得ていたな」

 自分が取り押さえられた時の記憶を掘り起こしても、礼節を弁えた振る舞いだった。オーティ殿の前でも同じだったとすれば、違和感を覚えても無理は無いだろう。


「彼はなんというか……結局私には、よく分からない奴だったな」

「へー、お偉いさんから見ればそんなもんかね?」


 不意に割って入ってきた声に、私は息を詰めた。対してオーティ殿は驚く様子を見せず、微苦笑を浮かべて立ち上がる。


「貴方は貴方で、彼と出会ってから更に遠慮が無くなりましたね」

「そりゃーそうだろ。必要なくなったし」

 楽しげにそう言って、声の主──ユエ・ルナ・メーネスが席に着く。混乱している私を見て、小さく笑った。

「お役人さんも人が悪いな。Sランクと予告なく遭遇するなんて、普通それだけで気絶してもおかしかねーぞ?」

「魔王相手に長年諜報活動を成し遂げた彼らが、『普通』の枠内に入るとでも?」

「まー、俺よか肝は据わってるよなー」


 目の前で軽口を叩き合う様子に、肩の力が抜ける。息をついて、俺は改めてメーネス殿に目を向けた。


「来国されていたとは、存じませんでした。お久しぶりです、メーネス殿」

「こちらこそ、お久しぶりです、だ」

 軽く肩をすくめて、メーネス殿が言い添える。


「あと、ユエでよろしく。敬語も良い。よりにもよって俺が逃げ出したところで戦い続けた連中に、教会に押しつけられた肩書きで敬われても居心地悪すぎる」

「……別に、そういう風には見ていない。寧ろ、我々が逃がした子供が、1人でもこうして生きていてくれるだけで救われる」

「……」


 ユエが押し黙り、オーティ殿から注がれた酒を一息に煽る。そのままボトルに手を伸ばしながら、低い声で言った。


「救われたのは、俺の方だ。……だが、その言葉は受けとらせてもらうよ」


「ああ」

 ユエに注がれた酒を同じく一気に煽る。もう1度酒を注がれたグラスを掲げると、ユエは苦笑して自身のグラスを合わせた。

 俺達の様子を無言で見守っていたオーティ殿が、穏やかな笑みを浮かべている。彼もまた、吸血鬼の犠牲者である筈なのだが、現在ヴァスト国の再生に関わる我々に対する不快感は見られない。


「……この流れを作ったのも、あの男なのだろうか」

「んー?」


 かなりの勢いでグラスを空けていくユエが、俺の呟きを拾い、怪訝そうに首を傾げる。


「かつてのヴァスト王を……ドゥルジを敵と定めながらも、それに組していた吸血鬼全てへの敵意は薄い。警戒は残しながらも、手を取り合って復興の道を歩む。あり得ない筈の未来を引き寄せたのは、やはりあの男が──」


「いんや、そりゃ違うな」

「ああ、それはない」


 ある種の敬意を込めていた俺の言葉は、みなまで言わせずに否定されてしまった。何とも言えない顔で2人を見やるも、ユエもオーティ殿も涼しい顔でグラスを傾けている。


「あいつはめちゃくちゃに吸血鬼を恨んでる。例え天地がひっくり返ろうが、人間と手を取り合って、なんてシナリオを書くわきゃねえ」

「同感ですな。そもそもあの集落での暴挙は、永遠に闇に葬らなければならないほどの非道ぶりだ」

「ああ……だが、無理もないのでは?」


 オーティ殿が彼に目を付ける切欠となった事件。我々と目的を同じにする吸血鬼達が、我々にも隠れてエルド王家と手を組み行った、許される筈の無い人体実験。唐突に己の世界から攫われ、望む筈のない変化を押しつけられた彼が、その実行者達を殺すほど憎んだとしても、我々にそれを責める権利はないと思うのだが。

 しかし、オーティ殿は溜息をついて首を横に振った。


「まあ、経緯や理由については納得している。私があいつの立場でも、報復は当然考える。考えるがな……、相棒まで巻き込み、無関係の連中すら「吸血鬼だから」の一言で殺し尽くした言い訳にはならないさ」

「正当性はともかく、そこまでやった奴が吸血鬼相手に手と手を取り合ってなんざ、ねーわ。……俺でもありえねえ」


 最後に付け加えられた低い声に、束の間息が止まる。吸血鬼達とやりあってきた俺やオーティ殿ですら動きを止めるほどの感情の波……彼と、同質の憎しみだ。

 視線を向ける。グラスを煽ったユエは、俺に目を向けて薄く笑んだ。


「あんたらには感謝してる。だがな……俺は、奴らをくびり殺したかったよ」

「……ドゥルジだけでなく、奴に組みしていた吸血鬼達ともども、か」

「恨みっつーのは、そういうもんだ。理屈じゃなく、憎くて憎くて堪らない。ぶっちゃけると、俺は今後2度と、ヴァスト国の地に足を踏み入れる気はねえ」

「……そうか」

 それだけ答えて、俺は一度目を伏せた。あの時期、ドゥルジを殺す為だけに志を同じくした人と吸血鬼が手を取り合い水面下で戦っていた、その現場にいた俺達と、ただただ家族と住む場所を追われてひとりで生きる羽目になったユエ達とでは、見えるものが違って当たり前なのだろう。


 1度くらい、ふたたび生まれ故郷の地を踏んで欲しかったのだが。強要するわけにもいくまいと、俺は口を噤んで酒を煽った。


「しかし、……確かにオーリック殿の疑問ももっともだ」


 気を取り直したようにオーティ殿が発言する。視線が集まる中、オーティ殿は視線を宙空に向けて考え込みながら続けた。

「あれほど憎んでいた男が、我等の復興の手助けをした理由は、なんだったのだろうな」

「ドゥルジのせいで混乱が残るのも許せねえっつーとこじゃねーの?」

「……あの男が時折妙に性格の悪い言動をとっていた理由も、気になっていた」

 ユエの言葉に、オーティが微妙な顔をして反論した。英雄らしからぬ搦め手も採用していた、と言いたいらしい。決戦の場では、復讐劇らしからぬ正攻法を我々に与えていたと記憶していたのだが。


「あー、教会の件だろ?」

 しかしユエは心当たりがあったらしく、訳知り顔で頷いた。

「それもですし、学院での揉め事も。あの男は闇属性の割に、汚い手を使う事は存外少なかった。主に力押しというか」

「ま、力押しで大体押し通るもんな」

 ユエが軽く笑って応じる。ひらりと手を振って、一方向に目を向けた。

「それが気になって、あんたもここにいるのか?」


「……気付かれてましたか。流石ですね」


 苦笑混じりの声が応じて、個室の入口に佇んでいた人物が入ってくる。黄土色の髪に紅の瞳。学院の教員をしている男だ。学院長との打ち合わせの際に、1度顔を見た覚えがある。名は覚えていなかったが、同席していた2人は顔見知りのようだ。


「……お久しぶりですね、レオニード教諭」

「よ、久しぶりさん」

「お久しぶりですね、オーティ殿。ユエ殿も」

 どうやら、オーティ殿は僅かながら確執があるらしい。ユエの方は、誰を相手にしても態度が余り変わらないので読み取りにくいが、レオニードと呼ばれた教員からすれば緊張はすれど嫌悪は無いようだ。闇属性相手には珍しい反応だろう。


「そして、初めまして。影の英雄殿」

「……やめてくれ。我々は、彼に救われるまで首輪を外せず、人間の国で被害を出していた罪人だ」


 王宮で彼に捕まった際の襲撃もそうだが、我々はドゥルジの気まぐれで人里を襲わされていた。我々が殺し、死体から吸血鬼共が糧を得る。そんな、我々の心を踏みにじる為だけの娯楽に、何度も付き合わされた。全てが終わった後には首を差し出すつもりだったというのに、気付けばこうして、人と吸血鬼の架け橋として、影の英雄扱いされている。


「そりゃあ、仕方ないんじゃありませんかねえ? あんな化け物に正面切ってケンカ売れるような奴、俺ぁあいつ以外に知りませんよ」

 気の抜けるような笑みを浮かべ、レオニード殿がどっかりと空席に腰を下ろす。どうやら、彼も招待を受けていたらしい。ユエだろうかと視線を向けるも、首を横に振られた。


「残った疑問を解消する為に、私が招いた」

 溜息混じりにオーティ殿がレオニード殿に向き直る。


「教会の一件で我々の腰が重かった最大の理由は、そこにあります。教会と一部の研究者が裏で手を組んでパーヴォラ嬢を誘拐したあの事件は、余りにも強引さが目立った。あれほど堂々と表沙汰になるような誘拐事件でなくても、教会であれば、研究所の権威を利用出来る人物であれば、もっと手があったはずです」

「まー、学院内の研究所はある意味不可侵の城ですしな」

 レオニード殿が美味しそうに酒を舐めながら適当に答える。オーティ殿が顔を顰めた。

「それにも関わらず犯罪すら躊躇わないほど強引だったのは、それだけ奴らが慌てていたということだ。だが──」

「慌てさせるだけの手を、当時のあいつが打ってた様には見えなかった。ということでしょう。俺も同意見ですよ」


 レオニード殿はあっさりと認めた。オーティ殿が気圧されたように口を噤む。代わりに俺が問いかける。


「事件の概要は伺っているが。あれほど活動的だった彼が、教会という明らかに敵対感情を持つだろう組織への対策に消極的だったとは思えないんだが」

「え? ……ああ、そうか。貴方は一番、彼との関わりが短かったな」

「あー、古龍との契約後だっけ? そりゃそう見えるよな」

「ですなー」


 オーティ殿、ユエ殿、レオニード殿の三者三様の反応に疑問を持ち、無言で促す。視線で譲り合ったのち、オーティ殿が俺に向き直る。


「ドゥルジに手出しを決めた後のあいつしか知らないオーリック殿が疑問に思うのも、無理はない。が、あいつは元々、俺の事情を聞いても尚、無関係を押し通そうとしてた。心底面倒臭そうだったぞ」

「学院でも基本的に無気力っつうか、魔法にしか興味ありませんって態度でしたよ」

「あー、やっぱそんな感じだったのな。俺が初対面の時点ではちっと違ったけど」

「……そんなことが」


 あれだけの熱意を見せていた男が、まるで別人のようだ。半ば信じがたい思いで相槌をひねり出した俺に、レオニード殿がふいと首を傾げる。


「言われてみりゃあ、なんか急に変わったよな、あいつ。それこそユエ殿と会われた頃かそのちょい前くらいから、段々変わっていった気がすんぞ」

「ですから、その変わる関わらないかの時点で、教会があれほど警戒していた理由が分からないんですよ。丁度あの頃、奇妙な事件が続きましたし」


 オーティ殿の主張に、レオニード殿が何とも言えない顔で首を傾げた。


「それって、あれですか? 闇属性排除を叫んでた過激派貴族がいきなり失墜したり、パーヴォラ侯の失脚を狙って動いていた教会関係者が脈絡も無く遠くに飛ばされたりして、教会と王宮が一時期パワーバランスしっちゃかめっちゃかになった奴ですか? 確かにあの時期、いきなり情勢不穏になってったっつーか、いろいろ大変だったらしいですけど」


 その言葉で、そういえばそんな情報もあったと思い出す。王家もこちらに全ての状況を知らせるわけにはいかなかったが、我々が便乗して何かさせられる可能性があると警告されていた。不思議な事に、それほどの混乱にもかかわらず、ドゥルジが手出しを考える前に終息したのだが。


 我が意を得たとばかりに、オーティ殿が首を縦に振る。


「それですよ。パーヴォラ侯が本気を出した後であればまだしも、奴もギルドに出入りする程度で大人しくしてたあの時期に、あれだけの混乱を作り出すことが本当に可能だったのか、と思いましてな。ある意味当事者であるレオニード殿とユエ殿なら、何か知っているのではと」

「うーん……俺は知らないですねえ」


 のんびりとした口調で答えたレオニード殿は、嘘はついていなさそうだ。一方、ユエ殿は楽しげににやにやと笑っていた。オーティ殿は勿論気付いたらしく、焦れたようにせっつく。


「何かご存知なのですね?」

「んー、ま、そうだな。何かっつーか、誰かしら協力者がいたのかもなーとは思ってるぜ?」


 さらりと出された単語にぎょっとする。異世界から攫われてきた彼らの協力者と言うのは、つまり。


「……彼ら以外に、世界を超えてきたものがいたと?」

「いてもおかしくはねーんじゃね? あいつにとっちゃ、この世界の魔法は時代遅れみたいだったしなー」


 グラスに酒を注ぎ、ユエが応じる。身を乗り出しかけたオーティ殿を横目で見て、ふっと笑った。


「けど、やめときな」

「は?」

「ありゃー手出ししちゃ駄目な奴だ。ノワールとはまた違う意味で、な」

「……何故」

「俺の勘。……それ以外に根拠示せっつーんなら、あれだな。ちょくちょくそれに近い話になるたびに、あいつはやけに強引に話を変えてた。知らん顔をしたがってたんだよ。あいつが関わりたくねーって相手を、あんたにどうこうできるとは思えないぜ?」

「…………なるほど」


 オーティ殿が詰めていた息をはきだした。諦めたように笑って、酒に手を伸ばす。


「せめて、礼と文句くらいは言っておきたかった。あれのお陰で後々動きやすい環境が整ったが、もう少し穏便に──」



「知った事かよ」



 声が割り込む。


「っ!」

 咄嗟に椅子を蹴って立ち上がる。他の3人も既に臨戦態勢だったが、動かない。否、動けない。


 誰も居ないその個室で、俺はゆっくりと息を吐きだし、言った。


「……ユエが正しそうだな」

「おー。やっべえな」


 からりと笑って、ユエが椅子を引き起こして座り直す。その胆力に感心しながら続いた俺は、酒瓶が1本消えたテーブルに目を向けて、ふっと笑いを零した。


「オーリック殿?」

 未だに立ったままのオーティ殿が怪訝そうに呼びかけてくる。俺は首を横に振った。



「この1年の奇跡は、奇跡のままで良いんだ」



「……」

「我々がそれぞれの形で足掻いていたものを、それに巻き込まれただけの彼が、全てを呑み込んで大きな流れを作りだし、英雄譚を紡いだ。それで良い」


 そう言って酒の残っていたグラスを軽く振ると、オーティ殿が小さく口を結んだ。


「気が合うなーオーリック殿。脇役としては、中々気分良く結末を見られたよなー。俺も大分気が楽になったぜ?」

 ユエが嬉しげに頷く。彼自身に復讐心を肯定され、手を貸すことで恨みをある程度晴らせたと言う彼に、笑みを返した。

「ああ。……本当に、終わって良かった」



 犠牲を0には出来なかった。それでも、これが最良の結末だったと胸を張って言える。重要なのはそれだけで、俺達の知らない裏舞台まで知る必要はないのだろう。


 彼がこの世界に深入りしなかったように、俺達も彼の世界に深入りしないのが一番だ。



「……はあ。分かりましたよ。私としてはすっきりはしませんが、飲み込みますよ」

「そうだそうだ。若いうちから悩んでると、はげるぞー」

「大きなお世話ですよレオニード教諭。貴方は暢気すぎると、多方面から苦情が出てるほどでしょうに」

「俺はこれでいーんすよ! ねえオーリック殿」

「え、はあ……」


 それぞれがそれぞれに向けていた緊張の糸はいつしか切れ、どこか探り合うようだった会話が、酒の場に相応しい遠慮の無い発言にとってかえられる。不愉快なほど強引で腹立たしいほど傲慢な声が、けれどこの場をある種好ましい方向へと変えて見せた。その事実を4人が4人とも自覚しながら、それでも口には出さない。



 ──それこそが、あの復讐劇に参加した我々の役割なのだろう。



 テーブルの上、俺のグラスの中に、いつの間にか現れた、ひとひらの青い花びら。何故か拍手喝采の音が聞こえてくる不思議な花弁を眺めながら、我々の夜はゆっくりと更けていった。


ブルーローズ:花言葉「喝采、奇跡の実現」


最初はまんま花にしようかと思ったけど奴に薔薇は似合わなさすぎると考え直し、酒に花びら散らせる程度で……

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