【63話:サギーナの日記編(大厄災の魔獣の後処理で)!】
ふたりで抱き合いながら大喜びのあとは現実に戻って二人で悩んだわ、だってその目の前に横たわっている大厄災の魔獣の死体の処理が残っていたのね、大仕事として!
「このまま置いておく訳にはいかないからのぅ、厄災魔獣だからのぉ、取り敢えず皮を剥いで血抜きをするかのぅ」
真性の魔獣ならまだしも、厄災の魔獣はもともとは野獣であったわけで何らかの呪術がその厄災に結びつくからその死体を普通の野獣が食べたりしたらそれこそ、そこら中に呪術が広がってしまう訳なの、だから厄災の魔獣の死体はきっちりと解呪の処理とその身体処理をしておかないといけないのよ、まあ、身体の各パーツは其れこそ魔力を持った材料としてとても貴重な物だから高値で取引されるような物なのね、だからこそ放ってはおけないけど。
さすがにウギの手さばきは手慣れたものだったわよ。首を狩って血抜きをしてから身体を綺麗に解体し始めたわ、私にはまだ無理な仕事ね、だってバラしかた全然解らなかったわ、是も後で勉強が必要だと認識したのね。
帰りにそれらをヴァルに引きずって貰う事にしたので台車になる様な物が必要だったわ、私はそばの林に這入って木片を集めたわ、そうそう持ちきれない身体部分は燃やす必要もあったしね。
身体の半分くらいの長さの木片を蔓草で縛って組み立てたのヴァルが引っ張りやすい様に蔓草を編んで太紐にしてたわ、そうしたらヴァルとウギが近寄ってきて私の手元をじっと見ているのよ。
「それは魔術か? 何故に細い蔓草がそんな太い紐になるのじゃ?」
「えっ! これは単に編み込み紐の応用よ、魔術なんかじゃ無いわよウギにも後で教えてあげるわね」
「おう、其れは有り難いのじゃ――ほほう、なかなか丈夫な紐になるのじゃのぅ、これは便利じゃ」
そう言ってウギは私の作った太紐の一部を使ってヴァルと綱引きをしているのよ、まったくウギったらもう!
「本当に丈夫じゃぞ、此の紐は――サギどうじゃこれで商売が出来そうじゃがのぅ」
「えっ! そうなのかな~ぁ、普通に編み込みをしただけだけど?」
「いやいや、これ程の物は妾は見た事が無いぞ――売れると思うぞ、サギは凄いのぅ」
「ええ~ぇ、まあ……そ、そそうなのかな~ぁ、えへっ」
ウギに褒められると何かこう……こそばゆいのよね、なんでだろう?
ウギの方はひとまずは解体作業が終わったみたい、さすがに早かったのね。血抜きの血は革の器を即席で作って其れに溜め込んだの。
「ヴァル、おやつだぞ」
ウギがそう言うとその器の中の魔獣の血をヴァルは美味しそうに飲み出したわ、私も何だか欲しくなっちゃったわね、だってヴァルがあまりにも美味しそうに飲んでいるのよ。
「おいサギ、その血はお主は飲まぬ方が良いぞ――魔獣のヴァルだから影響が無いというかのぅ、それこそ魔獣の魔力をヴァルのものに出来るが妾達人間には毒だと思うぞ」
「えっ! あっ、ウギなんでわかったの私の気持ち?」
「馬鹿いえ、気持ちなんか解るかのぅ――ほれ、口元をこれで拭いておけ……涎が出ているでのぅ」
そう言ってウギは私に綺麗な布切れを渡してくれたの。
…………わたしなに……よだれっ? えっっ! 一気に顔が真っ赤になったのが自分でもわかる程顔が熱くなったわ――恥ずかしいって言ったらありゃしないわ。
「わからんでもないがの~ぅ、ヴァルが本当に美味しそうに血を啜るからのぉ」
「ウオーン」
ヴァルがそれに応えるかの様に吠えたわ!
「『ぷっ! あははっ』」そのやり取りに思わず二人で笑い合ったのね、まさに今、生きている実感が湧いてきたわ。
私の組み立てた橇の台車に大厄災の魔獣すなわちレッドグリズリーの解体された身体の部分を載せて落ちない様に縛り付けておいたの、載せきれなかったところはひと所に集めて余った木片ともに燃やしておいたわ、丁度供養になる様にって二人揃って手を合わせて念じながら弔っておいたのね。まあ、そうしていると丁度お昼ぐらいになったのでその焚き火を利用して食事を作ったわ――勿論レッドグリズリーの肉の串焼きになるわよ、今日のメインディッシュは!
「美味しいっ! なに此の肉の軟らかくて濃厚な味は~っ、芳醇な薫りと味にほっぺたが落ちそう」
私の第一声の感想ですね、そこのあなた今ちょっと引いたでしょ! だってそれくらい美味なお肉でしたわよ。
「旨い! 旨いの~ぅ、ヴァルどうじゃ」
「ウオ~ン」
ウギもその味には感動していたみたいね。確かにこれからレッドグリズリー狩りが癖になる程の美味しさですわよ、ラリーにも食べさせてあげようっと。
思いのほかというか期待を裏切って美味しかった串焼きを三人? で目一杯堪能した後、これからどうするかを相談したの。
「帰りの戦利品も満杯だしのぅ、ヴァルに引いて貰うにもこれが限度であろうぞ」
「そうね、取り敢えず目的は達したしね~ぇ、戻りましょうかまだ日が高いけど」
二人とも今日の第一戦で魔力と体力を使い果たした感もあって今日はもういいかって気持ちだったのね。まあ、それなりの成果が既に目の前にあったしラリーにも久しぶりに会いたかった事もあるのよ。
だってここのところすれ違いばかりで逢っていないのよ、寂しい気持ちがあったのは確かよ、わかるでしょ~ねぇ。
ウギが先頭を歩いてその後ろをヴァルが橇台車を引いていくの私は最後尾ね。そんな陣容でヴィエンヌ城壁まで戻った行ったわ、帰りは特にこれと行った障害も無くてねスムーズに戻れたの、台車を引いてくれるヴァルの事が気になったけどあれだけの量を載せているのにヴァルったら全く気にならない様に力強く引いてくれるのよ、さすがにその体力には驚いたわ。
ヴィエンヌ城壁の門番さんも私達の顔を見つけると嬉しそうにしてくれたわ『今日はお早いお帰りですね、ご無事で何よりです』ってね、私も気軽に応えたのよ。
「ええ、今日は十分な成果が既に出来たので帰って休む事にしたの」って、そうしてヴァルが引いていた台車を指さして見せたの大厄災の魔獣レッドグリズリーのなれの果てを……。
「あっ! えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
其れを見た門番さんの絶叫が周辺に木魂したわ。
えっ! なにっ! 私達何かしでかしたのかしら? 瞬間、私とウギは顔を見合わせてお互いの知識の範囲で間違いを犯しているかを考えたけどお互いの認識では解らなかったのね、後は事の成り行きを見守るしか無かったわ。
その後のヴィエンヌ城壁門の周りは凄い事になったの、大勢の人が押し寄せてきて私達に感謝の言葉を述べていくのよ、中には号泣の余り卒倒している人も居たわ。何が何だか?
そうしていたらお城からお迎えの人が来たみたい、門番さんがお城に早馬を出して事の成り行きを伝えたのね、仕事にそつがないわね門番さんたらっ。
お迎えのひとの中にメイラーさんが居たので私達は安心出来たみたい。メイラーさんに聞いてみたのよ、何が起こっているのって?
「サギ様もウギ様もこの街の英雄としてこれからはお持て成しさせていただきます――私を含めリッチモンド伯爵家一同いや城下町ヴィエンヌの全住民の悲願でした大厄災魔獣レッドグリズリーの討伐のご成功おめでとうございます。感謝の意を表して今日は街を挙げての大晩餐会を催させていただく事になりました。勿論、主賓はサギ様とウギ様そしてヴァル様でございます」
「『えっ! えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!』」
ウギと私の二人の声がハモったわ、門番さんの絶叫の意味が今、わかったのね。
次回【64-1話:御令嬢のお忍び巡回警備その後!】を掲載いたします。




