【62-2話:サギーナの日記編(魔獣相手の修行一週間後)!】
レッドグリズリーが私の目の前に既に迫ってきていて、その魔力で真っ赤に染まった右腕が私の身体を横殴りに張り倒そうとしてきたの、私自身への防御魔術の切り替えは既に始めていたけどこの魔獣の魔力に耐えられる対防御魔術を発動する為の詠唱の時間は到底無かったの、もう無理かなって思ったわ。そうね、人は死を目の前にする時に走馬燈の様に過去を振り返るって聞いていたけど、私の頭の中はラリーの顔しか出てこなかったのね、おかしいでしょだってまだ出会ってほんの少しの時間しかたっていないのにね、ラリーの恥じらいの可愛い顔つきとか、真剣に私に話しかけてくる時の眼差しとか……ああっ、最後にもう一度会っておきたかったな~っ、なんてね! その時なの私の頭の中のラリーがいきなり私の意識を鷲づかみにしてきたの、えっ? ラリーっ? って思ったわ。
「サギっ! 聞こえるかっ! いいかそのまま詠唱の先の最後のイメージだけを思え! 其れだけをただ其れだけを――思え!!」
私はただそう言われるままラリーの顔も消えて何もかも真っ白になって唯々防御魔術のイメージの効果とついでに反撃魔術を織り交ぜてあのデカぶつを叩きのめすイメージを頭に描いていたの、まあ次の瞬間に叩きのめされているのは私の方のはずだけれどね、うぇ~ん!
レッドグリズリーの右腕の魔力気が私の身体に触れてきたのがわかったわ、ああ、是で終わりなのねって思いそうになった時、またラリーの声が聞こえてきた様に感じたわ。
「サギっ! さっきのイメージの力を魔獣の魔力気に当てることを思えっ! そして銀色を考えろっ!!」
えっ! ラリーっ! またぁ! 銀色って? 良く解らなかったけど最後にラリーの顔が浮かんできたから嬉しかったわね。しかし銀色って――あっそうだラリーの『覇気』の色だわね。
そう解ったの、輝く様な銀色の力をイメージしてあのデカぶつを睨み付けてやったわ! その時レッドグリズリーの真っ赤な眼が戦慄の眼差しに変わっていったのが見えたわ。まあ、あのデカぶつが肝を冷やしている顔ね、ちょっと笑っちゃったわよ。
私の目の前にはレッドグリズリーの巨体が見事に横たわっていたわ? えっ? 私まだ生きているの――何があったのかしら? 誰が助けてくれたの? あっ……ラリーは!
私は訳もわからずその場にしゃがみこんでいたみたい、そんな私の顔をヴァルが思いっ切りなめ回してくるのよ、珍しい事に! 私、ヴァルに舐められた事が今まで無かったから凄くくすぐったいけど滅茶苦茶気持ちいいのよ、これが! 癖になりそうだったわよウギが羨ましく思えたわ、いっつも舐めて貰っていたからね、彼女は。
「サギっ! 大丈夫じゃろうか? 怪我は無いのかのぅ?」
ウギが蒼白な顔をして私のところに駆け込んできて抱きついてきたの~っ、それでねぇ――しゃがみこんでいるから私、ウギの胸が丁度私の頬に当たるってくるの、でねっ其れがね凄く柔らかくてねっ……私何を話しているのかしら?
「――大丈夫……みたいね……わたし? なの?」
「なんなのじゃ、その疑問符が付いた様な返しは? お主の事だろうにのぅ」
そう言いながら私の返しがいつもの私なので安心したのか、ウギは膨れっ面をしながら反論してきたの。
「――だって生きているの? わたし?」
「は~ぁ! 何をのたもうておるのじゃ『覇気』を発しておいて――お主もしかして覚えておらぬのか? サギっ!」
「――うん!」
「あら、ま~ぁなのじゃ」
私の頭の中はまだ朦朧としていたわ、ついさっきの事は何も思い出せないのよ。私がまるで私でない様な感覚を持っていたのね。それで、ウギに教えて貰ったのよいったい何が起こったのかって言う事を――その内容は私には即座に受け入れる事が出来なかったわ。
レッドグリズリーの右腕が横殴りに払われた時に、そう私の身体をまさに両断する間際に私の身体の発するオーラが銀白色に輝いて周りを一瞬光銀色に染めたらしいの、その後はレッドグリズリーが血反吐を吐きながら崩れる様に倒れたって事らしいわ。確かに今まさに目の前にはその巨大な死体が横たわっているから嘘では無い事ぐらいは解るけど――『覇気』の銀白色のオーラを私が発したって? まさか~ねぇ。
「だからじゃよ、お主の『覇気』が此奴を葬ったのじゃぞ、やったではないかの~ぅサギっ!」
「う~ん、でも何かこう実感湧かないし其れにねどうやってそうなったか覚えてないのよ、それって結局もう一回やってって言っても出来ないじゃ無いの――それってどうかな~ぁ」
「其れは其れで良いではないか、兎に角、妾達は大厄災の魔獣に勝ったのじゃ、お主のお陰で死に体までおい込められた妾達の逆転劇をお主が起こしたのじゃぞ! それほどの力はいずれまた起こせるに相違ない何しろ身体は覚えているのじゃぞ――あとは何とかなると思うぞ」
そう言ってウギが私の事を褒めてくれるのも何かこそばゆかったし、私は話題を変えるとこにした。
「ウギ? そう言えばもう一体のブルーグリズリーは? 何処?」
「おう、あれかあれもお主が片付けたと言ってもいいの~ぅ、最後に妾も覚醒出来てひと太刀報いたがのぉ」
「えっ! どういうこと?」
ウギ曰く、私の『覇気』を感じた瞬間に魔獣は恐れをなして逃げる態勢に変わったらしい、その時ウギもまったく歯が立たなかったそのブルーグリズリーの身体にひと太刀入れる事が出来てその右腕を奪っておいたとの事だった。その腕がいまウギの手元にあるの――毛むくじゃらの魔獣の腕が……。
「歯が立たなかったってその剣では皮膚に傷を入れる程度だったじゃ無いの其れが腕を切り落としたってどうやって?」
そう質問した私に対して、満面の笑顔になってウギはこう言ったの。
「妾も『闘気』が出来たのじゃ!」
私の『覇気』にウギの『闘気』! 取り敢えず目標のランクアップ完成って、思わず立ち上がってウギと抱き合って大喜びした事は言うまでも無いわね。
次回【63話:サギーナの日記編(大厄災の魔獣の後処理で)!】を掲載いたします。




