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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
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【62-1話:サギーナの日記編(魔獣相手の修行一週間後)!】

 次の日その次の日も朝日が昇る前から私とウギはお城をあとにしましたの、そんな日々を一週間程過ごしましたわ、毎日毎日、初日と同じように行動しましたわ。まあ、其れも日々帰ってからの地下温泉と十分な睡眠でしっかり翌日は復活してましたのね二人とも!

 そんな風に過ごしてきたから顔見知りを越えて家族の見送りみたいになった城壁の門番さんは今日も『くれぐれもお大事に!』と挨拶をしてくれましたわ。

 そう今日はもう少し奥の方まで足を延ばす事にしたの、だって昨日までの一週間で結構な魔獣退治をしてしまっていたのね、城壁近くにはもう魔獣の魔力気を全く感じなかったのよ、そんなにがんばったつもりは無かったんだけどしっかりやっつけていたみたいだったわ。あとでリアーナお嬢様には進言しておこうかしら、私達二人の功績としてね。

 そんなこんなで暫く歩くと鬱蒼うっそうとした森を抜けて広い原野みたいな場所に着いたわ。

「此処は? まるで自然の闘技場みたいな場所だわね」

「そうよのぅ、サギ向こうに何か居るぞ! 大きな魔力気であるぞ」

「うん、私も感じるわ」

 二人してその魔力気を感じる方向を見ていたわ、まだずっと遠いけど確実に其れは居たわ。

「今までの魔力気と質が違うわね、ちょっとまずいかしら?」

「そうよのぅ、まあ最後はヴァルもおるしのぅ、なんとかなるだろうて」

 ウギは後ろ手に回した腕で頭を抱える様にしながら私の方を見てニコニコしながらそんな風に応えてくる。

 まったくいつも楽観的なんだからウギは! そんなんで良いのですか? 私は心の中でそっと呟いていたわ。

 まあ、修行の相手としては申し分ない実力の持ち主みたいだから私達もあえてお手合わせして貰う事に異論は無かったわ。正直、私はちょっとはブルっていたけど、其れは内緒ね! 

 彼方に見える砂埃が魔獣の位置を教えてくれてたわ、でも何だかおかしいのよ? 砂埃が風に流されているのだけれどいっこうに場所が移動してこないの、向こうにも私達の魔力気は感知出来ているぐらいの距離だからあっちから向かってくると思っていたのね、其れがそう言う気配も無いのよ?

「サギっ、何かおかしいのぅ。彼奴あやつめはわらわ達を見つけていてもおかしくは無いのにの~ぉ、何故に向かってこないのじゃ?」

「そうね、でも砂埃は治まる気配は無いみたいだわ、行ってみる?」

「そうじゃのぅ、此処で待っていても無駄じゃろう、なら此方から出向くのも一考だのぉ」

 そう言って私達の意見はまとまったわ。直ぐに目的の方に移動を始めたのね。


 そこに見えた光景はまるで怪獣大戦争だったのよ! 身の毛がよだったわ!

「おいおい、是はまさに悪魔の権化だのぅ」

 なにその無感情な表現は? ウギには恐怖という感情が無いのかしら?

 私はその場で足の震えが止まらなかったわ、怖さを越えて戦慄するとでも言うのかしら?

 そこには巨大な二体の魔獣が対立していたの、一体はレッドグリズリーで全身が真っ赤に染まっていて眼も真紅だったのそうしてもう一体はブルーグリズリーだったわ、こっちは全身真っ青なの。

 二体はまさに全身全霊で相手に対峙していたのね、私達の事なんか眼中に無かったみたい。此の系統の魔獣はキメイラのように真性魔獣では無いの、野獣の進化型というか野獣が桁違いに長らく生きていた事により呪術に掛かって魔力化したのね、めったに会う事は無いのによりにも依って二体同時の遭遇って運が良いのか悪いのか? 

 そんなに怯える程の事なのって? どうしてって? 其れはあなた野獣の魔獣化は十万分の一いや百万分の一ぐらいのあり得ない事だからその強さは半端じゃないのよ。大厄災と言っても良いレベルよ。ヴァルの全身の毛も逆立っていたからその事だけでも凶事と言う事がわかるでしょ。

如何どうするのじゃ、二体の戦いが決着着くまで待つかのぅ? それとも第三の勢力として参戦するかのぉ? まあ、わらわはどっちもどっちという気がするがのぅ」

「ウギっ! あなたは怖くは無いの? 厄災相手よ其れも大厄災レベルなのよ! 私は正直逃げ出したいくらいなのに~っ――も~ぅ」

「うん、わらわも同感じゃぞ――ほれっ!」

 そう言いながらウギは彼女の手を私の手の上に置いてきたわ。そう、ウギの手から小刻みに震えが伝わってきたの――っ。彼女も震えが止まらないほど恐怖を感じていたみたい。其れすら私には解らないほど私も動揺していたのね。

「でものぅ、マギに追いつきたいと始めた事なのじゃ、こんなことで逃げ出していては到底そんな領域に辿り着く事は不可能じゃろうのぅ」

 そうね、ウギの言う通りだわ。逆にこんなチャンスはまたとないわね。そう頭では解って入るのだけれど――そんな簡単には気持ちは割り切れないのよね。

「行くわよいい? どっちにしろどっちかとは、やり合う必要があるのだから――だったら最初から二体と対峙した方が良くない事? 今のところあの二体が協力してこっちに向かってくる事は無さそうだわね」

 そう言いながら私は詠唱を始めたのね。どうせやるなら先制攻撃に勝る物なしと行きたいわね。


 それからの闘いは今までの魔獣退治とは次元が違っていたわ、ウギが先制して時間を稼ぐ前衛攻撃中に私が後衛で攻撃魔術の詠唱を唱える戦術だったけれどそんな時間稼ぎなんか出来なかったわ、ウギも攻撃中に防御の余裕なんか無いから打ち込んだ剣の脇の甘さにグリズリー達が即座に反応するのよ、私も攻撃魔術を唱えるよりウギに追加の防御魔術を即座に付加してあげる事に注意を集中するしか無かったのよ、だってそうでもしないとウギが危ないのよ。

まずいのぅ、是では押し込まれる一方であるぞ――つぅ」

 ウギの表情にはじんわりと苦悩の呻きが現れていたのを私は見逃さなかったわ。

「ウギっ! ひとまず下がってょ! いったん引くわよ、わかって!」

「う~っ、仕方が無いかのぅ」

 ウギも今のままでは劣勢が否めない事がわかっているが引くにも二体の巨体が相互におそってくる状況ではそのタイミングもつかめなかった。

 そうこうしているとウギに絡んでいた二体の内、レッドグリズリーが私の方に向き直ってきたのよ。

「えっ! なっ!」

 そんな言葉が口から自然と出てきたわ、今の私はウギへの防御付加魔法の詠唱中でそんな自分の守りをする余裕なんか無かったから、次の魔術の為に詠唱を切り替えるには時間が無かったのよ、おのれの状況の不利さを感じて恐怖に心臓が凍りつく感覚を覚えていたわ。

「サギっ! わらわの事はもう良い、自分の事を早く――く~っ、ヴァル頼んだのじゃ!」

 ウギの悲鳴にも似た叫びが聞こえたのね、ごめんねウギ。

次回【62-2話:サギーナの日記編(魔獣相手の修行一週間後)!】を掲載いたします。

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