【54-2話:ラリーの覚悟!】
折も折、サギとの話しが一段落ついた所でタイミング良くウギが俺の部屋を訊ねてきた様だった。
「ラリーっ! 妾じゃ! おはようじゃのぅ、朝だぞう起きておるかのぉ」
俺の部屋のドアの前で大きな声で呼びかけてくるウギがいた。
「おう、ウギか? 入ってきても良いぞ」
「そっかぁ、解ったぞぅでは参るぞぅ――失礼するのぅ」
ドアを静かに開けながらウギが部屋に這入ってきた。
ウギはサギがニコニコしながら其処にいたのに気が付いた。
「サギ、おはようじゃ、先に来ておったとは――お主もやるよのぅ……んっ!」
ウギは――無論傍にヴァルが一緒にいるのであるがそのヴァルが先に気が付いた。
“魔族か? 其奴は誰であるかラリーっ?”
ヴァルが魔力念波で俺に尋ねてきた。
「あら、大狼ガルムってわけ? しかもガルムも女性なのね、もうひとり姫子との対面と思っていたけどもう二人の姫子との対面に訂正だわねラリーっ! ウギさんって言ってたわね、私はマギル・ビンチという魔導師よ、訳あって昨夜からラリー達にお世話になったの、今後ともよろしくお願いねっ――えっ~と……あぁもしかしてあなたはベルっ?」
途中の方は何かハートマークが付きそうな声色でマギが俺の答えの前に返してきた。が、ベルってヴァルの事か? 知り合いなのか?
「マギっ、ヴァルの事を知っているのか?」
俺はマギに直ぐに訊ねた。だが、其れより先にヴァルが答えてくれた。
“あなたは私の祖母を知っているのか? 確かに私の祖母はベルと言う名であるが……其方は何故に其れを知っているのですか?”
「むっ? これは失礼しましたわベルのお孫さんなんですね――まあ、冷静に考えるとあれから数百年経っているのだからねぇ、それもそうですわね、あなたの疑問の通り私は魔族、魔界の魔導師ですわ」
なんかマギとヴァルの新関係が発覚してきているが、その前にマギに魔力念波で聞いてみた。
“マギ、俺だラリーだ。マギはヴァルの声が聞こえるのか? サギにもウギにも聞こえない声が……”
“あっ、ラリー御免なさいうっかりしてましたわ――ヴァルの声はよ~く聞こえていてよ”
“そうなのか? ヴァルどう思う?”
“マギ、其方は魔王族か? 何故に聞こえるのだ? どうなっているのだラリーっ”
“ヴァル残念だけど私は魔王族では無いわ、其れに魔力念波はコツがあるのよ”
“マギ解ったわ、でも二人とも今は拙いから後にしましょう、ウギが怪訝な顔をしていますわ”
“『わかった』” 俺とマギはヴァルの提案に二人同時に素直に応じた。
「何じゃ? ラリーなんか変であるぞ? ヴァルもどうしたのじゃ?」
ウギが先程からの俺達のやり取りに薄々感づいた様で不審げな顔つきで訊ねてきた。
「ラリーっ! まずは順に訊ねるぞ。そこのおなごは誰なのじゃ? 先程自ら名を名乗っておったがその前にラリーに聞いておきたいのじゃぞ、妾に紹介するのかしないのか、どちらなのじゃ?」
確かに俺の部屋にいて俺が仲介しない紹介対応は無いな。
「ウギ、悪かった。紹介が遅れた、此方はマギル・ビンチ嬢、訳あって昨夜知り会った。魔界の魔導師だそうだ。え~っと歳は?」
ここにマギが食いついてきた。
「あらっ、ラリー女性の歳を男の人がべらべら喋るのは御法度よ――そうね見たところ皆似た様な年齢みたいだから、皆のひとつ上って言う事で良いかしら」
マギの歳は秘密だそうだ。
「で、ウギっ! 昨日今日といろいろあったが最大変化だ、俺のチームにマギことマギル・ビンチ嬢が加わる、サギとは昨夜からの付き会いで既に打ち解けている。ウギも彼女とは仲良くして欲しい。俺からの頼みだ」
俺はウギに面と向かって話しを通した。ウギの目は素直に全てを信じている目だった。
「解ったのじゃラリー。其方マギ殿と申したかのぅ、先程は先に名乗って頂いたのに妾が無視をした形になって申し訳なかった、失礼な態度を取ってしてしまった事を此処に詫びたい」
そう言うとウギは深々と頭を下げてマギに謝っていた。
「改めて此方から名乗らせて貰うのじゃ、妾はウギ・シャットンと申す若輩な魔法剣士である。ラリーのチームに其方も這入るのであれば妾をウギと呼んで頂きたい、其方の器量からして相当な魔導師とお見受けした。お手柔らかに頼む、ただひとつだけ其方にもの申しておきたい事がある。ラリーの右腕は妾の聖域じゃ何人にも此処を譲る気は無い、もしもそれでも来るのなら妾も死ぬ気でやらせて貰う」
ウギはマギに正面切って己の剣に恥じる事なき主張をしてきた。それに対してマギは何と言うのか、俺は固唾を呑んで状況を見守った。
「一度名乗ったから名前はもう良いわよねウギ。私の事もマギで良いわよ、両目の銀眼色で解る通り私は魔族よ、魔導師であり魔女なの。あなたの剣の腕も相当なものね、良いわラリーの右腕はあなたの場所で左腕はサギのものらしいから私は――っとぉ」
そう言いながらマギは俺の身体をまじまじとなめ回す様に品定めを始めた、まさに舌なめずりをして相手の度量を見定めるかの様な目つきだった。
「いいわ、私は真ん中ねっ!」
マギが訳のわからない場所を指定してきた。
「えっ、真ん中って? 何処っ?」
俺は速攻で突っ込んでいった。
「あら、淑女の私の口からそんな事は言えないわ、嫌だわっラリーっ!」
マギは両手を握り伸ばしてしなを作りながら上目遣いで俺の方を見つめてきた。
おいおい今度は誰が淑女だ、今度は其れかい! まったく此のサキュバスの小悪魔を何とかして欲しい。と思っているとウギが何だか真面目な顔してこんなことを言い始めた。
「真ん中っと言えば、昨日温泉で見せて貰ったラリーの股間の剣かのぅ? あれはおかしな剣じゃったぞ、堅かったり柔らかかったり伸びたり引っ込んだりして剣としてはのぅ、それが良いのかお主は?」
ウギっお前な~ぁ――この言葉には俺含め三者三様の受け方となった。
「『うふっ』『うふふふっ』」でも皆、苦笑いするしか無かったが。
「ウギっ、あなたって面白い娘ね~っ――でも良いのそこで私はねっ!」
マギはウインクしながらウギに右手を差し出してきた。
「じゃウギっ、話がまとまったという事で握手で良いかしら」
「んっ! 妾とか? 別に良いぞ」
そう言ってウギも右手を差し出してきてマギの手を握る。
「ほらっ、サギも手を重ねてラリーもぅ……」
マギが俺等二人にも催促してきた。んっ! まあ、これも良いかもな、俺とサギはお互いの目を合わせて頷き手を差し出した。
四人の掌が重なってひとつの輪になった。新生チームラリーか! しかしマギっ! 真ん中って何処よ? マジに? 俺の不安は一向に消えなかったのは言うまでも無い。
次回【55話:新生チームラリーの初仕事の朝!】を掲載いたします。




