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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
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【54-1話:ラリーの覚悟!】

 サギの満を持しての告白は俺の恋愛感情の欠損を見事に露呈してくれていた。今までのサギの恋心を察しきる事も出来ずにいた俺は貴女かのじょの気を持たせる様な素振そぶりもことごとくスルーしていたらしい。確かに恋愛なんかに全くもって触れてきたと言うかかすった事も無い様な幼児期や思春期を過ごしてきた俺に取ってここ数日間の濃縮した彼女達との交流は少なくとも人生で一番のモテ期でなんだと思う。

 そうは言ってもサギとウギにはまだ話していない俺の秘密がある。其れを知ったら彼女達の態度が真逆になる事だって有りうるし、そもそも俺がその立場なら多分今までの事が無かったかのような振る舞いになると思っている。いや、そうしなければいけない程の壁だと思う。

 だから俺は迷っていた。本当の俺は人間では無いのだろうと――そう思う事が俺自身怖かったのだと。


 サギは俺の答えを静かに待っていた。ただ泣き明かして少しは冷静になれたのか俺の顔を伏し目がちに見上げながら。碧眼の綺麗な瞳と泣き明かして朱に染まった目元のその上目遣いな視線にドキッとしながらも俺はゆっくりと口を開いた。

「俺もサギの事が大好きだ! 其れは間違いないし自信を持って言える事だと思う。ただ……」

 サギは俺の大好きという台詞のひと言で一瞬にして破顔一笑はがんいっしょうとなったが、その後の言葉で顔色が曇った。

「サギには悪いが俺は恋というものが解らないんだ、多分――好きとはどれだけ違うんだ? 其れとサギとウギにはまだ話していない事がある、そのことを知ってサギが俺を恐れる事が俺は怖いんだ」

 俺の言葉にサギは少し怪訝な顔つきをしていたがやがて俺の目をしっかりと捉えて喋りだした。

「ラリーの秘密には今は興味が無いわ、だって前も言ったでしょう今、目の前にいるラリーが全てだし何があってもラリーは私の知っているラリーで――例えラリーが魔王でも私は付いて行きたいと思っているのよ、解ってくれる? ねぇ、ラリー!」

「えっ! 魔王でもいいの? って、サギなんで? 其れを知って?」

 サギの唐突な魔王どんとこい発言に俺はビックリして目を剥いていた。

「あれっ? だって昨日マギが言っていたでしょう? 『――今までずっと次世代の魔王候補の方を待っていたのです』って、私じゃ無いから候補は、だったら残りはラリーのことだなって思っていたわ、でもそんなの私にとってはどうでも良い事だから……」

「どうでも良いって――言い切りますね、サギっ?」

 マギが途中で合いの手の様に割り込んでくる。

「ハイ、言い切りますわよ。前も二人で星空を見上げながら言った事があったわよね『ラリーは何があってもラリーだもん』って、だから良いの――ラリーが何なのかは私にとっては小さい事なの」

 そんな風に言い切る気っぷの良さに呆れがちな目で俺はサギを見た。

「あっ、今呆れた顔をしたでしょう。ひど~ぃ!」

 そう言いながら満面な笑みを浮かべるサギの表情は俺には天使の微笑みにさえに見える。

 もう此処までだった、俺の中で何かが弾ける音が聞こえてきた。俺はそのままサギを両腕できつく抱き締めた。

「あっ、あ~んっ! なっ! んっ」

 俺の腕の中で可愛く身悶える様にサギは小さく痙攣していた。でも、その顔はとても幸せそうに見えていた。

「サギっ、ありがとう」

 俺はサギの耳元でそっとささやく様にお礼を言っておいた。

「ん~っ! はぁ~! ど、どういたしましてって~っ、もう~っラリーったら、そんな耳元で……吐息で感じちゃうからっ、いや~ぁん!」

 そんなサギの可愛い声に何となく悪戯をしたくなって、そのままサギの耳たぶを軽く噛んでみた。

「そ、そんな~ぁ! いいぃ~っ!」

 そんな嬌声を発したあとに、サギは顔を真っ赤にしながら俺の事を睨んできた。

「ラリーは天然の女ったらしの素質をお持ちですね~っ、魔王の素質十分ですわ!」

 マギが横からまた茶々を入れてくる。俺ってそうなのか? 自分のした事ながらついぞ羽目を外してしまっている事に反省至極になってきた。

「ラリーっ、私の事が好き? 其れで良いの?」

 サギが俺の胸の中から身を起こして俺を真正面に見据えたまま聞いてきた。もう一度確認するかの様に。

「ああ、何度でも言えるよ。俺はサギが好きだ」

「でも、ラリーはウギもマギも好きなんだよね?――ううん、それでも良いの私の事も好きでいてくれるならば……ねぇ」

「サギっ……」

 皆の事が好きであるのはサギの言う通りだ、この場はサギの優しさに甘えさせて貰う事とした。でも、俺は多分サギが一番好きだと思っている、其れはまだ言わないでおこうと心に決めた。この先まだまだ色々な事が待っていそうだから。俺もサギも今はお互いの事を尊重出来るがずっと先の事はやはり解らないと思う。其れに俺はまだ恋心なるものを知らないのは事実だった。

「さぁ、良いでしょうか二人とも――もうひとり姫子との対面が私を待っているのですからラブコメは此処ここいらで第一章終了で良いですよね」

 マギが見つめ合う俺達二人の間に入って早々の展開を促してきた。


 マギとサギとの顔合わせはマギの悪巧みに俺達が見事にはまり込んだ結果になっていた。まあ、そのお陰で俺とサギの間に少しであるが男女の恋心の初歩的な進みが出来た結果となっている。何かほとんど低学年的な恋愛劇の様相を呈してきているが其れは其れでご配慮頂きたい。

 さてと今度はマギとウギの関係式の構築であるがマギは何か算段を組んでいるのだろうか? まあ、ウギは純白の誠に綺麗な全く混じりっけの無い『白気』だから下手な算段は逆効果になる恐れがある、今は順当に話を進めていくのが良いと思った。そんな事を思っていると案の定ウギの方から此方(こちら)にやってきた様だった。

次回【54-2話:ラリーの覚悟!】を掲載いたします。

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