【51-3話:魔導師マギル・ビンチ参上!】
マギの語りは晩餐会でのリアーナお嬢様の俺への関わりへと話しを繋げていく。
「それとね、私が蜘蛛の変化呪術を見舞った時に私の中の魔力をサギの胸の谷間に挟まっているその宝石に全てを封印しておいたの。だから、今回の解呪でその宝石が必要だったのよ、ラリーが持ってきてくれて助かったわ――解呪が終わったからその宝石は単なる石に戻ったわ、ラリーあとでそれを御令嬢に返しておいてくれるかしら」
マギの話しではリアーナお嬢様がその宝石を俺に貸してくれたのは単なる偶然では無かったわけだ。
「マギ、ではリアーナお嬢様はこの事を知ってその宝石を俺に託してくれたのか?」
「ううん、それは違うわ。御令嬢は単に夢の中でお告げを聞いただけ――あとはそれに従ってあなた……つまりラリーと言う英雄様に託しただけよ」
「お告げ? リアーナお嬢様が? どうして?」
俺はマギの言っている意味が解らずに疑問をぶつけた。
「そう、お告げ! ねっ、ほら私――サキュバスって言ったでしょ、つまり夢魔よ!」
「あっ、なるほどね――マギが夢で操ったって訳ね、リアーナお嬢様を」
「まあそういうことになりますわね……操ったって、そう言う風に言われると何か傷つきますわね、ラリーっ」
「あっ、ごめん。そんなつもりで言ったわけでは無いのだけれど……悪かった」
「いいわ、まあ結果的にそういうことになるから――で、ラリーはほんと素直な性格だわ、好きよそういうのわ・た・し」
マギは目眩がしそうなほど凄艶な表情を浮かべながら淫魔如く俺を見つめてくる。その艶めかしい色香に俺は自我ごと吸い込まれてしまいそうになった。
「ラリー――っ!」
マギの夢魔に飲み込まれてしまいそうな俺をサギが現実に引き戻してくれる、まあ横っ腹を思いっ切り肘鉄でど突かれている訳だが――ほんとマジで痛かったよ!
「痛てぇ――っ!」
その痛みで覚醒し現実に戻って何とかマギの艶術に耐える事が出来た。こんな調子で是からずっと過ごしていく事になるんだろうか? 自分の将来に思いっ切り悲観的になった瞬間だった。
「ラリーもマギばっかり見て……それはマギの方が私より大きな胸をしてるしスタイルだって勝てそうもないし――あ~んもうダメ――っ」
いつもは泰然として構えているサギが思いっ切り動揺を隠せずにいた。サギだってマギに負けないほどの艶めかしさを湛えてマギが夢魔ならサギは艶魔と言ってもいいほどなのに貴女は自分の事には自信が湧かない様だった。俺は絡みついてきているサギを俺の両腕でしっかりと抱き締めてやる。
「サギっ、俺はサギの色香にやられている男のひとりでしか無いけどね――サギは俺に取っては艶魔だよ」
「えっ、ほんと? ラリーっ」
サギがそう言って俺の肩にぽっすんと頭を委ねてくる、その艶やかな髪の毛の妖艶な薫りが鼻腔を擽る様に薫ってきて俺はサギという艶魔の虜になっていた。
「あら、是は旗色が悪くなってきたじゃ無いの――今回はサギの勝ちだわね、じゃぁ邪魔者は消えるとしますわ」
そう言ってマギはフワッとその身を消した――と見えたが、そう見慣れた小さな蜘蛛がそこに残っていた。
“呪術のお陰で蜘蛛には簡単に変われる様になったわ、私は此の姿であなた達に付いて行くから必要な時は呼んでね、いつでも駆けつけるわよ~ぉ”
マギはそんな風に言いながら蜘蛛の糸を巻き上げて風に乗って何処かに飛んでいった。俺はそんな裏技みたいな変身術の注意点をマギに伝えようと大声で叫んだ。
「マギっ! 人間の姿に戻る時に真っ裸は拙いから~っ! 着衣術を交える事を忘れないでぇ~っ!」
“……わかった――考えておくわ?”
マギの疑問符が着いた返事が遅れて帰ってきた。変化の時に大丈夫だろうか? 本当に彼女は? その疑問に答えてくれる主は既にいなかった。
サギはとろ~んとした瞳のまま俺の胸に顔を預けてまだ惚けていた。
「おいっ、サギっ!」
俺はサギの肩を両手で掴んで軽く前後に振って正気を取り戻させる。
「あっ、ラリー? あれっ?」
何とかサギは目を覚ましてくれた様だった。
「サギ俺が解るか? 目が覚めたか?」
「えっ、何っ? 私、如何してたのかしら?」
マギと反目した事とか一連の騒動は覚えていた様だったのでひとまず安心した。マギはさっさと地下温泉から消えていたので俺達は二人で帰る事にした。その前に折角温泉に浸っているのだから二人で少し湯船に浸かってお互いの心の洗濯をすることにした。
「ふ~ぅ、お湯に肩まで浸かると心が洗われる気がするよ。お陰様で喧噪とは無縁なこの場所はさっきの因果が無ければ最高の場所だけどね」
マギの話しの中では、此の場所つまり地下温泉は今ではこんな良い場所になっているが、その昔は地下牢だったそうだ、それも魔女専用の……。
俺とサギは湯船の中で寄り添いながら、お互い思いっ切り身体を伸ばして温泉の雰囲気を味わっていた。そしてさっきのマギの解呪の事を話し始める。
「マギの呪術は見えたか? サギ」
「ううん、余りに眩しくて目なんか開けていられなかったわ、ラリーは?」
「俺も同じだよ……まったくどんな魔術なんだか?」
「あれは……魔術なのかしら?」
「えっ――っ? それはどういう事?」
「ん――ぅ、何となくだけど魔術では無く魔法! って感じかな」
「術の理も無く、自らの法で自由自在か、マギならあり得るな」
俺達はマギの底知れない魔力の力量に驚異さえ覚え始めていた。そんな事を延々と話しているとすっかり湯あたりしてしまって、二人ともよたよたと部屋に戻っていく事になってしまったのは二人だけの秘密にしておいた。
次回【52話:マギの色仕掛け?!】を掲載いたします。




