【51-1話:魔導師マギル・ビンチ参上!】
「うはははっ――――やった! 戻りましたわ。私の身体ですわ!」
俺の目の前にはそれはそれは煽情的なほどグラマラスな肢体を持った女性がガッツポーズをしながら涙を流して小躍りするように叫んでいた、しかも真っ裸で!
彼女は自分の身体を確かめるかの様に両の掌でその全身を艶めかしく撫で上げていった。その手の動きがまるで肉欲的な柔らかさの躰のラインをつま弾いている様に見せて、裸体以上に淫靡な世界を醸し出している。
俺はその息を呑む様な艶めかしい情景にただ目を奪われていた。そんな俺を現実の世界に引き戻してくれたのはやはりサギの声だった。
「えっ――マギなの? あっ――だめっ! ラリー見ちゃ! 目を瞑って!」
そう叫ぶとサギは勢い湯船から立ち上がり彼女の方に駆けていった。そして、何処に隠していたのかもう一着の湯浴み着を彼女の身体に掛けていく。
「あっ、サギっ! ありがとう!」
そう言いながら、彼女はサギに抱きついていく。
「――あなたがマギ……その人なの?」
サギはマギに抱きつかれながらも動揺を隠せない様子で身体が凍りつくように固まっていた。しかもマギの身体は頭半分程サギよりも背が高くサギに抱きつくと言うより抱きかかえると言った状況に傍からは見える。
「マギっ、ちょっと……あ~ん、いや~っ」
んっ――なんかサギの様子が少し変だな? と、良く良く見るとサギを抱きかかえるマギの手がサギの身体中を弄っている様だった。
「わっ――ぁん、待ってマギっ、そこダ~メ~っ」
おいおい、お前達何してるんだ! 俺はマギの背後に回り込んでその頭を思いっ切り小突いた。
「てっ――痛いっ!」
マギは両手で頭を押さえながらその場にしゃがみ込む、その隙にサギはサッと身を翻して俺の背後に隠れた。
「マギっ? ドサクサに紛れて何してるんだ! サギに!」
マギがしゃがんだまま目を潤ませて俺の方を振り返った。
「痛っ――ぅ! ラリー酷いよ! こう見えても女の娘なのに、もう少し加減とかして欲しいですわよ~ぅ」
いやいや、マギさん女の娘がそんな事しませんって、ドサクサで……それにあなたの躰はどう見たって――『娘』じゃ無いですよ既に熟れきってムンムンしています……全身!
「――あの~っ」
俺はマギの艶めかしすぎる肢体を見ない様に顔を逸らしながら話しかけた。
「何でしょうか? ラリー?」
「マギっ! 湯浴み着の前っ! はだけたままっ!」
俺はマギから顔を背けて彼女の身体の前側を指さした。
「んっ! あっ! これは失礼っ!」
マギは身体を捻って身を隠しながらはだけた着物を着直した。帯目を結び直したところで此方に向き直って俺を直視してくる。
「ラリー様、サギ様、この度はありがとうございました、お陰でこうして元の身体を取り戻す事が出来ました。感謝いたします」
そう言ってマギは深々と頭を垂れてお辞儀をしてきた。
「この上は、あなた様方の下部となり誠心誠意、此のご恩に報いるべく尽力して参る所存です」
マギはそう言いつつ、頭を垂れたまま、今度は跪いた。
「――どうぞご指示を……っ」
あっ、マギっ、今噛んだでしょ! まあ、此の突っ込みは置いておいて……と。
俺は振り向いてサギの顔を覗き込むが、貴女は目を大きく見開きながらはフルフルと首を左右に振って俺にその意思を伝えてくれた。そこでマギの方に向き直り真正面に対峙したまま俺も膝をついた。その仕草に気付いたマギが顔を上げてくる。
「あっ、ラリー様……何を!」
俺はマギの手を取って一緒に立ち上がった。
「俺は臣下をとる程の者では無いし、その気も無い! サギだってそうだと思う」
俺はその言葉の後にサギを見るがサギもその通りとばかりに大きく首を縦に振っている。それを確認してからマギの方に向き直して話しを続けた。
「――けれど、あなたの様な人が俺達の仲間でいてくれるならば是ほど心強い事は無いと思う」
「あぁ、あなた様はそれで本当に良いのですか?」
怪訝な顔でマギは俺の方に問いかけてくる。
「――っ、正直に言います、今あなたが……ラリーが私を配下にすると言えば呪術の理で私は一生あなたの下部となるしかないのですよ――本当に良いのですか? 私のこの躰をご自由に使えるのですよ、勿論、命令であるなら……夜とぎも……ご自由~っ!」
一瞬マギは言い淀んで言葉を止めた、何故なら俺の後で鬼神の様相に変わりそうになっているサギの殺気を感じたからだと思う。そんなサギの気配を背後に感じて俺は話しの続きはサギに任せる事にした。まあ、俺も一瞬マギの話しを聞いてまじまじと彼女の湯浴み着姿を視姦しそうになってしまった事で余計にサギが憤慨し掛かった事でもある。
「いいも何も――ね~ぇ、サギっ」
俺はサギに話しをそのままぶん投げた。
「あっ、えっ――丸投げっ! まあ、いいですわ! ……ラリーもね~ぇ、マギのスタイルには感化されているみたいですし、私が仕切ります。えっと――――たぶんそんなもんですからラリーは、私もですけど、ところでマギさん、あっマギはどちらからいらしたのでしょうか? まあ、他にも聞きたい事は山ほどありますが、ひとまずご挨拶からでしょうか。私は魔術師 ”サギ”ことサギーナ・ノーリと申します、聖都テポルトリの――」
「宮廷魔術師団で戦乙女四十八人衆人気ナンバーワン。 聖都テポルトリ公立宮廷魔術学校 魔術課程課三年間連続主席で卒業ですよね」
「えっ、なんでそれを……あなたは一体?」
「先に私から自己紹介した方が良さそうですね」
「あっ! その前にサギには言っておかなければ……」
「マギっ? なにっ?」
「今のでハッキリしました、て言うよりサギの気持ちが解りましたわ」
「えっ!」
「サギっ、御免なさい、先に謝っておきます――ラリーの事が私も大好きになりました、サギには悪いけどあなたとは恋敵として是からは付き合いますから……」
「えっ――――っえ~! そんな~ぁ!」
サギの悲鳴に似た叫びが浴室に響き渡った。
そんなサギの悲鳴を無視してマギは己の身の上話を始めてくれた。
次回【51-2話:魔導師マギル・ビンチ参上!】を掲載いたします。




