【49-1話:晩餐会の後での出来事!】
俺はサギとウギに引き連れられて晩餐会場に戻ってきた。
晩餐会は宴もたけなわになっていて既にダンスが始まっていた。会場の中央がダンスホールとなって老若男女入り乱れての舞踏が其処彼処で繰り広げられている。
サギが俺の顔を見つめながら何か言いたそうにしていた。流石に鈍い俺でもサギの今の気持ちは伝わってきた。
「宜しければサギさん、わっ、私と一曲踊って頂けませんか?」
お堅い言葉は不得意だがこの場の空気を汚すわけには行かないので『私』と言う言い方をしてみる。がしかし言い慣れないのでやはり噛んでしまった、其れを聞いて堪え切れずサギはクスッと微かに笑いを漏らしたが気を取り直して俺の顔を見つめニッコリと微笑みながら誘いに応じてくれた。
「喜んでお受けいたしますわ、ラリー様」
俺はサギの手を取ってダンスホールの方に歩んで行き、ひとしきりサギとのダンスを楽しむことにした。
ダンスを境に晩餐会は三々五々解散となる、早々に退席する者もいれば相方を換えながらダンスにいそしむ人もいる、兎に角今を満喫する事は自分自身で楽しみ方を選択していく事だ。
俺はサギとウギとのダンスを思う存分楽しんでいた。そんな俺達を見つめる眼があった。其れを知るのはもう少し後の事だった。
晩餐会の後、自分の宿泊部屋に戻ってきた俺は先ほどリアーナお嬢様から去り際に手渡された小さな宝石をじっと見ていた。
確かに、地下温泉の湯舟の中に光り輝いていた半球の宝石と様相は似ていたし、しかもこの宝石も眩いばかりの輝きを放っている。
「やはり、この宝石も何か道しるべの鍵となるのか?」
宝石を穴が開くほど見つめて何か無いかと懸命に探しているが、特に此と言ったところが見付からず終いには宝石をベットの上に投げ置きながら自分も仰向けに寝そべった。
「ふ~ぅ」
軽く深い溜息をつく。それで少しは気持ちが落ち着いてくるのがわかった。
「此処が昔は魔王族の居城だったって? それじゃ此処に何か俺の探し求めている物が有るのだろうか?」
俺は俺の生まれの由来を探し求めてきた、物心がついた頃からニネット爺さんとセット婆さんが育ての親になってくれていたが、俺の父と母はとの想いはついぞ消える事は無かった、なので冒険者としての旅を続けながら俺の生を受けた軌跡を追い求めている。
『魔王族の秘密を知ったら多分、後には戻れなくなるわよ』俺はヴァルが言った言葉を思い出していた。
「そうだよな、ひとりで旅をしていた時は失うものなど何も無いと思っていたから特に気にはしなかったが、今は……サギとウギがいるもんなぁ」
そんな風に思いながら部屋の天井を何気なしに見つめていた。
不意に何かに見られている気配を感じて視線の感じる方向へと眼を見やった、そこには先ほど飽きて投げ出したリアーナお嬢様から預かった宝石が転がっていた、とその上にちょこんと乗った形で此方の様子を覗き見ている小さな生き物の姿を見つけた。
「あっ、あの時の蜘蛛っ?」
そう、この部屋に入ってきた時に天井から自分の吐き出す其の糸で俺の鼻先まで降りてきた蜘蛛が宝石の上に乗っていたのだった。
蜘蛛はまるで宝石が自分の所有物であるかの様にその存在を誇示している様だった。俺はおもわず蜘蛛に問いかけていた。
「おい、蜘蛛さん。その宝石は何なのか知ってるか?」
「…………?」
無論答えなど来る訳は無いと思っていたが……。
“あなたは魔王族ですか?”
「はっ? 誰だ? えっ何だ?」
どこからともなく聞こえてきたその響きに俺は一瞬たじろいだが気を取り直して周りを確かめた。勿論、俺以外の誰も居ないし魔力念波が使えるヴァルは隣の部屋でウギと一緒の筈だった。ふと目の前の先ほど見つけた蜘蛛をじっと見てみる。蜘蛛はもじもじっと細かく其の身体を震わせる様にして宝石の上で動いていた。
“そうです、あなたの目の前に居る私が話しかけているのです”
「えっ、蜘蛛――さん?」
“やっと気付いてくれましたね、あなたは其の漏れ出る『覇王気』からもしやと思ってずっと語りかけていたのに、私に息を吹きかけて遊ぶだけだったから殆ど諦めていましたが、この魔石のお陰か何とか通じるようになりましたね”
「まさか――蜘蛛さん、あなたは何者ですか?」
“あなたは私の質問に質問で返す無礼者ですか? 先に聞いたのは私ですよ!”
いやいや、人にモノを訪ねる時はまず自分から名乗るのが人たる常識だろうと思ったが……あっ蜘蛛か!
“あなたは今、先入的僻見な事を思いましたね……『蜘蛛ごときが』ってそうでしょう”
「――ううん、思ってませんよ、そんな事は……」
俺は鋭い指摘を受けておもわず蜘蛛さんから視線を逸らした。
“あなた嘘が下手ですね眼が泳いでいますよ……まあ良いですけれど”
完全に俺はこの場の空気を蜘蛛さんに取られていた。
“ところで話を戻しますと、あなたは魔王族なのですか? それとも人間なのですか?”
何の話しだ? 蜘蛛さんの質問は理解しがたい論拠が入っている見た目で言えば俺は人間にしか見えないと思うがその選択肢に魔王族が含まれると言う事は魔王族は見てくれは人に近いのか?
「俺は人間だ……と思っているが蜘蛛さんから見て可笑しいのか?それは! でだ魔王族とは何者なんだ?」
“おっ、あなたまた質問ですか? 失礼ですね、私の問いにはまだ正確には答え切れていないでしょう”
「仕方が無いさ俺自身自分が何者かか良く解っていないんだから……」
そう言いながら俺は寂しそうに俯いた。
“――ん~ぅ、そうか解ったあなたは自分の生まれを知らないんですね、でもねぇその『覇王気』は生まれもってのものでしょうが”
「はぁ~、生まれた時から『覇王気』を纏っていたら苦労はしてないさ」
“其れは違うのでは無いですか、生まれたてでそんなオーラを発する者などいませんよ、皆それぞれ成長する過程で覚醒するだけですから無論その素質を持たぬ者には無理でしょうが”
確かに蜘蛛さんの言う事には俺も腑に落ちる事があった、俺の『覇王気』も危機に乗じて発動する右目だけ金眼色化も元はと言えば覚醒の感が有ったのは確かだ、そう言う意味で生まれ持っての素質と言われればそうかも知れない。
「――あなたは何故その様な事を知っているんだ? あなたは何者ですか?」
俺はもう一度、その質問を蜘蛛さんに投げかけてみた。
次回【49-2話:晩餐会の後での出来事!】を掲載いたします。




