【48-3話:ヴィエンヌ城の晩餐会で!】
昼間の太陽の光の下で見るリアーナお嬢様のお姿と今のこの月明かりの中で見るお姿とでは全くもって別人のように見える。元々お肌のもの凄く白いお方なので太陽の光より月の光の方がさらにそのお肌の白さを際立たせてみせる事が出来ていた。俺の隣に凜として立っている御令嬢の姿に見とれて俺は瞬きすら忘れていたようだった。
「ラリー様、その様に余り見つめられる事に慣れておりませぬゆえ出来れば少し目力を弱めていただけませぬか」
俺はどれだけ御令嬢を見つめ続けていたんだろう、リアーナお嬢様の言われたその言葉で、はたと我に返る事が出来た。
「リアーナお嬢様、申し訳ありませんでした余りにお嬢様がお美しかったので目を逸らす事すら忘れておりました」
「あら、ラリー様ったらお上手ですこと、そんな事を言われてもいつもサギやウギ様をそばに置いておかれる貴方様が私如きに興味を示すはずが無い事くらい解っておりますわ」
「リアーナお嬢様その様な事はございません、お嬢様は十分にお美しいお姿をしておられます。私が見とれてたのは嘘ではありませんから」
「まあ、その様なお戯れをラリー様、私も本気に致しましてよ」
「どうぞ――本気になさって下さい」
まあ、俺も確かにお嬢様に見とれていた事は事実だしお世辞で言った事では無いので純粋に信じて頂いて何ら問題は無いと思っていた。
リアーナお嬢様は俺の返しに少し照れた様子で俯き加減ながら、月明かりの中でもその頬にほんのり朱が差してきているのがわかり、とても可愛らしく見えた。
「ほんとサギが居なくて良かったですわ……ラリー様、英雄様にその様なお褒めのお言葉を頂けて女冥利に尽きますわ」
リアーナお嬢様はニッコリと微笑みながら俺の手を取ってそう言い返してきた。その微笑みがまた俺の心をドキッとさせてくる。
「ところでお話しを変えますけれど、ラリー様しばしこの居城に滞在なさると聞き及んだのですが確かでしょうか?」
「お耳がはやいですね、私も先程聞いたばかりで……まあ、結論から言いますとそうです。期間は未定ですがニコラス師団長の帰国組と別れてリッチモンド伯爵様のお慈悲の元、怪我人の療養と合わせてしばし滞在させて頂く予定となりました、決まったのは丁度先程ですが」
「嬉しいですわ、其れではまたラリー様とこうしてお会い出来る機会がまた有るのですね」
「はい、その様になりました、是非ともお嬢様のお話しをまた聞かせて貰いたいと思っております」
「私でしたらいつでも、ラリー様の為でしたら全ての予定をキャンセルしてでもお会いしたく思います」
「リアーナお嬢様、その様な恐れ多いお言葉を頂いただけで有りがたいと思います」
そんなたわいも無い話しをしているとバルコニーの入り口で俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「ラリーっ! あっ見つけたぞっ! サギっこっちにいたぞ、こっちこっち」
ウギだった、俺の姿を目聡く見つけたらしい、一生懸命サギを呼んでいる様子が覗えた。
「あら、もう見付かっちゃいましたね、私はサギに会う前にお暇いたしますわ、ではラリー様またお会いしとうございます」
リアーナお嬢様はそう言うと俺の右の掌をお嬢様の両手でそっと包むように握りしめ、また逢える時までと俺の手の中に何かを握らせた。その後ウギ達とは反対の方向へと歩みを進めて立ち去って行かれた。その場には右手を握りしめたままの俺ひとりがぽつんと残されていた。
俺は掌を開いて預けられたものを見て驚いた。
「えっ……これは――まさか!」
俺が目にしたものは丁度、地下温泉の湯船の中で見た翡翠の様な半球の石と同じような色の小さな宝石の塊だった。
「おい、ラリーっお主いつの間にかいのうなって、探したのじゃぞ、全く勝手じゃのぅ」
おい、ウギっ勝手ってお前だけには言われたくないわ!
俺の姿を見つけて小走りに駆けてきたウギはそのまま俺に抱きつこうとするが、すんでの所で俺はひらりと身を躱して其れを回避した。
「あっ、酷いじゃのぅラリー、妾を今避けたじゃろう」
「いや、そんな事は無いよウギの気のせいだよ」
取り敢えずウギの反論もそんな風に躱しておく。
そこへ、少し遅れてサギもやってきた。
「ラリー? 今誰かと一緒にいなかった?」
サギのその問いに正直に答える訳にはいかないので俺は首が千切れるのではと言うほどの速さで頭を左右に振って否定する。そんな俺の事を半眼の“じと~っ”目でサギは睨み続けていた。
「まあ良いわ、今回はラリーの言い分を鵜呑みにしておきましょうか。ところでラリー晩餐会はまだ続いているのよ、ひとりで抜け出すのはダメよ! ほらっ、一緒に戻りましょう」
サギはそう言いつつ俺の腕を取って身体を預けてくるから、左腕にサギの柔らかな身体の一部が触れてきていつもの事ながら思いっ切り緊張して身体が突っ張ってくる。俺はいつか貴女のそんな行動にも普通に応じられるように女性という対象に慣れる事が出来るんだろうか? 自分の事ながら全く自信が湧かなかった。
「ラリーっ、そんなに身体を硬くしないで~ぇ、まったくぅ~緊張してないで私に慣れてよ~っ」
サギの願いのこもった叫びが夜空に空しく響き渡った。
次回【49-1話:晩餐会の後での出来事!】を掲載いたします。




