【48-2話:ヴィエンヌ城の晩餐会で!】
聖女が世界を憂いて思案している姿と見間違えてもおかしくない様相を漂わしていたサギがパッと目を見開いたとともに貴女の考えを語り出した。
「解りましたわ、ラリー引き受けましょう。何となくリアーナお嬢様の思惑の薫りが匂いますが……私達にとっても悪い話しでは無いので可としましょう」
「いいのか? サギ!」
「いいの、大丈夫よ――あっ、ニコラス師団長様、今回の追加任務については私達の事で恐縮ですが宮廷魔術師団への連絡はお願い出来ますか? 其れとウギ……ウギ・シャットン嬢については宮廷魔術師団への入隊申請を同時にしておいて欲しいのですが?」
「んっ、サギっ、妾の事かのぅ?」
「そうよ、ウギねぇ~あなたラリーと聖都テポルトリに一緒に戻ってからどうするつもりだったの?」
「ん~……」
「ぅ――やっぱりね、でラリーは、何か考えていたの?」
「ん~………」
サギはその場で頭を抱えながら俺達にぼやいた。
「ほんとにも~ぅ、二人とも何も考え無しだったのね! まったく、戻って一体ウギはどこに住むつもりだったのかしら?」
「んっ、妾はラリーの部屋でいいのじゃぞぅ」
俺はビックリしておもわずウギの顔を見る、ウギは何の憂いも無い顔つきで喋っていた。
「ウギっ、あなたねっ! ラリーは……男子宿舎は大部屋寮なのよ、そこに一緒に寝泊まりするつもりなの?」
「そうじゃったのか、妾は特に気にしないぞぅ、ラリーと一緒ならばのぅ」
「ウギ、あなたが気にしなくても周りが気にするって言うか……認めないのっ~、も~ぅ」
いつまでも話しが進みそうも無かった所に師団長が助け船を出してくれた。
「サギーナ・ノーリ嬢、貴殿の考えしかと受け賜った、先の二点の申し出、このニコラス・ハミルトンが宮廷魔術師団長に直にお願いに参るとしよう」
「あ、ありがとうございます。ニコラス様」
この時俺はこれからのチームに関わる一切の判断をサギに一任していこうと心の中で思っていた。
兎にも角にもニコラス師団長は置き土産を置いたままやんややんやの俺達を尻目に席を外して行った。残された俺達は置き土産の子細とは関係の無い所で討論を続けている。
「サギは堅いのじゃぞ――妾がいい言っているのじゃからいいのじゃ」
「ウギひとりの問題では無いのよ、ラリーと一緒にいたいのは解るけど……男子宿舎に女の娘は入れないのっ、解る! だったら私と一緒に宮廷魔術師団に入隊して女子宿舎に寝泊まりすればいいじゃないの!」
「それじゃ、いっつもラリーと一緒にいられるわけでは無いのじゃないかのぅ?」
「其れしかないのっ、も~ぅ、其れが普通なのよ!」
「じゃ、聞くが仕事はラリーと一緒になれるのかのぅ?」
「……あっ……宮廷魔術師団とラリーの臨時護衛師団は……別~つぅ? なのかな~?」
サギも思慮が足りない所があったらしい、唇を噛んで悩み始めた。
「サギにウギ、その件は聖都テポルトリに戻ってから改めて考えよう、ひとまずは此処ヴィエンヌ城に暫くは滞在だろうそっちの方を考えよう、まあ、其れも今宵の宴が終わってからだね、一先ずは全て忘れて今を楽しもう~なぁ」
「そうね、今考えても仕方の無い事だしね、ラリーの言う通りだわね」
サギもひとまず納得してくれたみたいなのでこの場は宴を楽しむ事とした。
「じゃ~ぁ、ラリーっ――ぁ~ンなのじゃ!」
ウギの御巫山戯がまた始まった。
「あ~っ、今度は私の番なんだからねウギっ! ほらっ、料理だってお皿に盛ってきたんだから~っ、ねっ、ラリー~っ、はい! ぁ~ンして」
あらら、サギまで一緒になって俺に餌付けをはじめてきた。取り敢えず俺は二人から逃げる事としたよ。
「『あっ、ラリー逃げちゃダメ~っ』」こんな時だけ二人とも綺麗にハモって仲がいいんだ。
ニコラス師団長の言葉では無いが注目の美人どころであるサギとウギの両者にあんな風に躙り寄られていたら目立つ事この上なかった。痛い程の視線を浴びて居心地の悪さと言ったら無かった。
取り敢えず二人の追跡からは逃れてきたようだがサギが本気で魔力探知を行えば隠匿魔術を起動していても、この城の中という指定範囲付きでは時間稼ぎ程度の効果しか期待出来ないだろう。俺は晩餐会の会場の人集りを抜け出して大窓沿いにバルコニーへと密かに移動した。外はすっかり日も落ちて暗闇が満ちていたが月明かりと煌めく星々の輝きがとても眩しくバルコニーを照らしていた。その明かりの中で手すりにもたれながら星空を見上げて俺は大きな溜息を付いていた。
「あら、ラリー様そんな大きな溜息をおつきになっていては幸せが逃げていきますわよ」
いきなり掛けられた言葉にドキッとしながら声の主の方を向く。其処に居たのは誰あろうリアーナお嬢様であった。
「ビックリさせてしまいましたね、申し訳ありません、ラリー様」
御令嬢は丁寧に頭を下げて俺に詫びてきた。
「いえ、ちょっとだけ驚きましたがそんなリアーナお嬢様に頭を下げてもらう様な事ではありませんよ。此方こそ情け無い所をお見せして失礼いたしました」
「サギもいないようですね、丁度良かったわ宜しければ暫くご一緒しても宜しいですか?」
リアーナお嬢様からの申し出を断る理由も無かったので俺は縦に大きく頷いて御令嬢の申し出を受け入れた。バルコニーには俺とリアーナお嬢様以外、眩い月の光の加護を受ける人影は丁度無かった。
次回【48-3話:ヴィエンヌ城の晩餐会で!】を掲載いたします。




