【48-1話:ヴィエンヌ城の晩餐会で!】
メイラーさんに案内されて俺達は晩餐会の会場にやってきた。会場内は立式で既に人集りがそこらここらに出来る程の人が集まっていた、とうやら俺達は最後の入場のようだった。
俺達の入場を待ちかねたかのように、銅鑼が鳴り響き会場内の喧噪がすうっと静かになった。その静まりを待っていたかのように凜とした声が響き渡る。
「リッチモンド伯爵様がご入場されます、皆様拍手でお迎え下さい」
その声を合図に会場内が割れんばかりの拍手で満たされていく。その中でピエール・リッチモンド伯爵様、ルシア・リッチモンド奥方様、リアーナ・リッチモンド御令嬢が会場に入ってきた。
「皆のもの今回の帰郷の旅、誠にご苦労であった。特に宮廷のニコラス・ハミルトン近衛師団長はじめ護衛師団の方々、この度は道中大変お世話になった、リッチモンド家を代表してお礼を言わせていただく。ありがとう。今宵は皆の無事と慰労をかねてささやかだが宴の場を用意させて貰った、楽しんでいってくれたまへ」
リッチモンド伯爵の挨拶と共に宴が始まった。
早速、ウギとヴァルは空腹を満たすべく料理にと向かっていく。
「ラリーっ! いろんな食べ物が並んでいるぞ~ぅ、これ全部食べてもいいのかのぅ?」
「ウギっ! 食べてもいいが――全部は無理だろう? まあ、ほどほどにな」
「わかったのじゃ! ヴァルっ何から食べるかのぉ~?」
そんなウギとヴァルの後ろ姿を目で追いながら、俺は苦笑いをしていた。そんな俺の横顔を見つめてくる優しい笑顔が俺の隣にあった。
「ラリーは食事はどうする? もう少し後にする?」
俺の左隣でサギが訊ねてくる。その時丁度給仕の係の人がワインを配りに来たので二つのグラスを貰っておく。そのひとつをサギに手渡しながら俺は答えた。
「サギ、まずはワインで乾杯といこう、俺達のチーム誕生に――『カチーン』」
サギとワイングラスを突き合わせて乾杯をし、まずはお互いに笑顔でワインの香りと味を楽しむ事とした。
その後はサギと一緒に並んで歩きながら料理のテーブルに向かって行き色々な食べ物をワインのつまみに口にしていった。
「ラリーっ、あ~んじゃ! この肉料理は旨いぞ」
お皿一杯に料理を盛ってウギやってきて、満面の笑顔でフォークにのせた料理を俺の口元に差し出した。一瞬躊躇したが、ウギの勢いにされておもわずパクッと齧り付く。
「おっ! 旨い!」
「じゃろう~っ」
ウギはそう言いながら満足そうな顔で自分もその料理をひとくち口に運んだ。
「……あ~っ、ウギったら狡いんだから、どさくさに紛れてラリーに……っ、いいんだ~ぁ」
サギが俺達のやり取りを見ていてプクッと頬を膨らませながら文句を言ってくる。
「サギもやったらいいのじゃ、お主はずっとラリーのそばにおったじゃろうが~ぁ、妾と替わるかのぅ」
「ふんっ! じゃウギ交代ね、私も料理選んでくるから、ラリー食べたいものある?」
「いや、サギのと同じでいい」
「ふふ~っ、そうお~ぉ、解ったわ。じゃウギっ、ラリーを・ょ・よろしくね、特にお嬢様には気を付けて!」
「解っておるのじゃ~!」
お前ら、俺の事を何と思っているんだ? えっ!
ウギ持っていたお皿を器用に持ち替えながら俺の右腕を取って身体を寄せて絡めてきた。
「えへへへっ、久しぶりにラリーを独り占めなのじゃ~っ、さっ、ぁ~んなのじゃ」
ウギはさっきの続きを俺に強いてきた。
「おう、ラリー君――お邪魔だったかな?」
そう言いながらニコラス師団長がニコニコと俺に話しかけてきた。
「おじゃっま~っ――だぞぅ~」
ウギが料理を俺に差し出しながら、話しに割り込んでくるがその頭を押さえながら俺は応えた。
「なっ、ウギっ! こらっ! ――師団長、別に問題無いですよ! 何でしょうか?」
そんな俺とウギのやり取りをニコラス師団長は苦笑いを浮かべながら見つめている。
「サギーナ・ノーリ嬢といいウギ・シャットン嬢といい、皆注目の美人どころを押さえてラリー君も悪よの~ぅ」
なんですかその定番の落語の落ちみたいな言い回しは!
「なぁ――っ、師団長!」
「悪い悪い、余りに羨ましくてなっ、貴殿が!」
「ほ――ぅ、妾を美人って言ってくれるのか~ぁ、嬉しいのぅ」
俺は俺で顔を真っ赤にさせながらニコラス師団長に食って掛かり、ウギはウギで頬を朱に染めながら俯いていた。
「ところでラリー君、話は変わるが帰りは貴殿のチームをしばしこの地に残しておきたいのだが如何か?」
「其れはどういう事ですか? リッチモンド伯爵様からの要請ですか?」
ウギも俺もニコラス師団長からの突然の話しにその意図が見えずに躊躇していた。
そこにサギが料理をお皿に盛って現れた。
「あらっ、ニコラス師団長様――あれっ、ウギっ? ラリーっ? なにっ?」
サギは俺とウギが顔を赤らめている様子を見て、小首を傾げていた。まあ、俺とウギの赤らむ意味は全くもって逆の理由になるのだが……。
丁度良く戻ってきたサギに俺は先程のニコラス師団長からの依頼を話した。リッチモンド伯爵様からの要請という部分で少し顔色が変わっていたが終始サギ自身の考えを取り混ぜながら質問を交わしていた。
「ニコラス師団長様のお考えでは、怪我人の療養と共にしばしこの地に留まる部隊が必要だと言う事ですね。そして、その作戦にリッチモンド伯爵様からは私たちラリーのチームを指名してきたと……」
サギは依頼の意味と内容をかいつまんで話しをまとめる。
「そういうことになる、怪我人を無理に移動させるぐらいならヴィエンヌ城でしっかり養生してからの方がいいであろうとの事と、その間の世話等もリッチモンド伯爵家がかってでられるとの話しを受けたのだ。そして、その間優秀な護衛部隊をひとつ貸して欲しいとのお願いを同時にされた訳だ」
「その護衛部隊の指名が俺達のチームと言う事ですか」
俺は最後に確認の意味で繰り返した。
サギは『う~ん』と唸りながら思案をするように可愛らしいその顎に手を当てて首を傾げながら目を瞑っている。
傍から見ると考えていると言うよりは目を瞑っていながらも僅かに微笑んでいてまるで聖女が降臨してきた時の様にも見えるサギの容姿に俺も師団長も吸い込まれるように見入っていた。
次回【48-2話:ヴィエンヌ城の晩餐会で!】を掲載いたします。




