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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
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【47話:ヴィエンヌ城の晩餐会前に!】

 俺はサギの膝枕を十分満喫したあとヴァルと内緒の話をしていた、勿論魔力念波での会話であるからサギにもウギでさえもヴァルとそんな風に意思疎通が出来ている事などは露程も知らないと思う。

 “ヴァル、此処が元魔王族の居城という話しをリアーナお嬢様から聞いたのだが心当たりはあるか?”

 なにせリッチモンド家の祖先からの言い伝えとの事だからよほどの事が無いと裏は取れまい。しかし、地下温泉の存在が特別ならそこに何らかの鍵がありそうだ。

 “私の知る所では此処の居城についての魔王族なんて話しは知らないわ、もしも本当だとしても多分相当古い話しだと思うわ”

 “やはりそうだろうな、ところでヴァルは俺を運ぶ為にどうやって地下温泉に行けたんだ?”

 “ああそのことね、リアーナ様がウギと一緒に部屋まで私を呼びに来てくれたのよ。そうで無ければ戻れないからね。其れは身をもって知ったわ、あの時私だけ先に駆けだしたの階段を先にね、そうしたら行き着いた先は外の露天風呂だったわ。後は一旦戻って御令嬢と一緒に階段を降りたのそうしたらラリーの所に辿り着けたわ”

 “そうか、じゃリアーナお嬢様の話しは本当なのか……”

 “地下温泉の迷路マジックについては事実だったわ、其れは保証するわよ”

 “……”

 俺はそれ以上の考えが浮かんでこなかった。仕方がないのでもうひとつ気になる事を話してみる。

 “あとひとつ気になる事があるんだ”

 “なに?”

 “その温泉の湯舟の中なんだが、翡翠の様な半球の石があって金色こんじきと言うか白色と言うか兎に角、煌びやかに輝いていたんだ、其れを見ていると何故か妙に落ち着くんだ”

 “はは~ん、其れはもしかしたら魔石かもね”

 “――魔石っ?”

 “そう、私も直に目にした事はないのよ、ただ魔石の話しは聞いた事があるわ”

 “その魔石ってものは何に使うんだ?”

 “使い道は多種多様らしいわ、兎に角、魔術を封じ込めていつでも起動出来る様に設定出来るらしいわよ、其れは調べる価値がありそうね”

 “解った、後でもう一度行ってみるよ”

 “ラリー、その時は私も一緒に行くわ”

 “ヴァル、そうしてくれると助かる……ありがとう”

 “あらっ、そんなお礼なんて水くさいわね~ぇ”

 “だってヴァルには関係無い事だろう? こんな調査は”

 “そんなことないかもよ、まあ、それは置いておきましょ。で、いつ行くの?”

 “晩餐会の後かな……皆が寝静まってからが良いだろう”

 “そうね、それが良いわね”

 “じゃ、その時にまた教えるよ”

 “解ったわ――ところでひとつ聞いておきたいの?いい?”

 “……なんだ?”

 ヴァルの問いかけには一拍分微妙な間があった、まるで俺の心の奥の覚悟を確かめるかのような。

 “ラリー、あなたは其れを知って――如何どうするの?”

 ヴァルのその問いはいきなり核心をついた質問だっただけに正直ぎくりとした。そのまま声も出ずに俺は目を見開いてヴァルを一心に見つめた。

 “……”

 やはり言葉が出てこなかった、と言うより俺自身の気持ちに対する確証がこの時点ではまだ無かった。

 “――解ったわ、まだいいわその答えは! でもひとつ言って於くわね――魔王族の秘密を知ったら多分、あとには戻れなくなるわよ”

 “――解ってる……つもりだ”

 俺はヴァルの最後通告の奥にあるさりげない思いやりに、その眼を直視できずに俯きながら呟く様に応えた。


 俺はヴァルとの魔力念波のやり取りの最中ずっと部屋の窓から見える外の景色を見ていた。ぼーぅとしてる様子で傍から見ればなにやら思い込んでいる様にも見えたかも知れない。そんな俺の様子を心配してかサギが俺の背にその身を預けるように抱きついてきた、そう俺の魂を包み込むような抱きつき方だった、そのままこのに全てを預けられたらどれだけ心が安まるだろうか、そんな風に思ってしまうような温かさが背中から伝わってきた。

「ねぇ、ラリー……私の声が聞こえている?」

 サギは俺の背中に貴女の頬を当てたままつぶやくような小声で話しかけてきた。まるで俺の身体の中にある何かに問いかけるかのように静かにそして優しく。

「ああ、ごめん……聞こえているよ」

 俺も穏やかに答えた。

「ラリー何か心配?」

 言葉少なげな中でも確実に俺の心理を読み取ろうとしているのがわかる。俺の身体を抱きかかえている貴女の手の甲に俺の掌を当てながら話しを続けた。

「サギ、心配しなくても大丈夫だよ、ちょっとだけ考え込んでいただけだ。悪かったね気を遣わせたみたいだ」

「ううん、そんな事無いよ私は貴方あなたの事を考えている事が嬉しい事なの」

 サギには俺のすべてを話さなければならない時が来るかも知れないな――でもまだ今では無い。

「そろそろメイラーさんが呼びに来る頃だろう、さあ、二人とも身支度をしておいて、俺は一旦自分の部屋へ戻るから」

 俺は抱きついていたサギの手をゆっくりと振りほどきながら貴女の方に向き直りつつそう言った、そしてそのあと俺の部屋へと向かってウギの部屋を後にした。


 コンコン――ォと扉を叩く音と同時にサギの軽やかな声が聞こえてる。

「ラリーっ入るわよ――っ、メイラーさんがお迎えに来てくれたよ」

 俺は自分の部屋に戻って蜘蛛を探していた、相棒は直ぐに見つける事が出来た。なんて言う事は無い元々の自分の垂らした糸にまだ張り付いていた。俺は前のようにベットに仰向けになって蜘蛛の糸の真下に顔を置いたそしてまた蜘蛛が糸を伝って降りてくるたびに息を吹きかけてからかってやっていた。そんな時にサギとウギに侵入されてしまったわけだ。

「……なにしてるの?ラリーっ?」

 彼女等からはこんな小さな蜘蛛なんか見えないだろう、そうすると傍からは天井に向かって間欠的に息を吹いている怪しい行動にしか見えないはずだ。そんな俺は彼女等にどう映っているんだろう?

わらわも一緒にふうふうするのじゃ!」

 ウギは何の躊躇ためらいも無く俺の隣に同じように寝そべって天井に向かって息を吹きかけ始める。

「ラリーっ、――えっ、熱でもあるのかしら? 気を確かに持ってる?」

 サギの方は俺の気が触れたかと心配をし始めている。それぞれの反応の違いにおもしろさがこみ上げてきておもわず笑い出した。

「えっ? なにっ? ほんと大丈夫? ラリー?」

 サギが本気に心配し始めたのでそろそろ種明かしをする事にした。

「ああ、サギもこっちにおいで」

 俺はウギが寝転がった反対の方の布団を手で叩いてサギを呼び込んだ。三人が揃って天井を見上げた所で俺はぶら下がっている小さな蜘蛛を指で指し示した。

「『あっ、蜘蛛っ! かわいい~ぃ!』」サギとウギの言葉がかぶった。

 俺はまた降りてきている蜘蛛に向かって息を吹きかけてからかってやった。

「『ああ~、成る程これをやっていたのね』」どうやら二人とも納得してくれたようだ。


「あの~ぅ、皆さんそろそろ晩餐会場に――っ」

 あっと、メイラーさんを待たせたままであったのをすっかり忘れていたよ。

「『あっ、済みません~今、行きます!』」三人の綺麗な和音がハモっていた。

次回【48-1話:ヴィエンヌ城の晩餐会で!】を掲載いたします。

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