【46話:いつものサギの膝枕の中で!】
俺はいつもの如くサギの膝枕の中で目を覚ました。俺が女体の色香で鼻血を出して倒れた時はサギの膝枕は標準装備らしい、其れは其れで至極有り難い事ではあるがこうも度々お世話になっていては終いに呆れられるに違いない。そう言う日がいつか来る事を極度に恐れるようになってきている。
「――此処は何処だっ?」
目覚めて最初に見た物はお城の宿泊部屋の天井のようだった、但し温泉に行く前に自分の宿泊部屋の天井から滴るように降りてきた蜘蛛と戯れていた時に見ていた天井の風景とは少し違っているように思えた。
「あっ、気が付いたのねラリー」
サギの顔が間近に見えた、後頭部の温かで何とも言われぬ柔らかな感触はサギの膝である事は経験上知り尽くしている。いつもながらに情け無い状況、穴があったら入りたいとは昔の人はよく言ったものだと思う。
「いつもながらにサギには悪い事をしていると思う済まない、俺はどれ位気を失っていたんだ?」
「ラリーっ、謝られる方が傷つくのよ、私が好きで膝を与えているんだからそんな風に思わないでくれる、それとも私の膝枕じゃ嫌なのかな」
「あっ、そういうつもりで言ったんじゃ無いんだ、ただサギが疲れると思って――サギの膝枕はすごく有り難いし出来れば気を失った時ではない方が嬉しいくらいだ、単に自分がすごく情け無い感じがしてサギに嫌われるのが怖かっただけなんだ、重ね重ね済まなかった」
「あっ、そうやってまた――謝ってるっ、ダメよ。私は意気地無しのラリーが倒れなくなったら其れは其れで多分すごく寂しいと思うの、だって膝枕でラリーの寝顔をずっと見ている事が出来なくなるでしょ……ねっ」
ん~ぅ、其れは俺に取ってもの凄くいい事なんだろうな、多分?
「おっ、ラリーどうじゃ気分は? ああ此処は妾とヴァルの宿泊部屋だぞ、ヴァルが居る分お主らの部屋より少し広いのじゃ皆が入るには丁度良いじゃろう、其れにのぅ、お主を此処まで運んでくれたのもヴァルだからのぅ」
そっか、ヴァルにも世話掛けたんだ、さらに自己嫌悪に陥りそうだ。
“なに言ってんのさ、私達チームなんだろう、迷惑掛けたなんざ他人行儀な台詞は嫌いだね、ラリー”
ヴァルからも魔力念波で叱咤されちまった。
俺の事を皆が支えてくれていた、嫌な思いをさせてしまったとか迷惑を掛けてしまったとか他人行儀な後悔はヴァルの言う通りこのチームには相応しくない思いだな。此処は素直に皆に感謝しよう、そう思ったらなんか心が軽くなった気がした。
そんな事を考えている間ずっとサギの膝枕で仰向けになったまま天を仰いでいた。そんな俺の顔をサギが上から覗き込んでくる。
「あっラリー、なんか良い事思ったでしょ口元が笑ってるわよ、うん其の方がラリーらしい顔だわね」
「う~ん、そうだねサギの言う通りだよ、皆ありがとう」
「えっ、ラリー、何っいきなり? どうしちゃったの?」
俺はサギの笑顔に応える様に俺もめいっぱい笑顔で感謝の気持ちを返していた。
そんな遣り取りをしていて、ふっと自分の姿を見るにひとつの疑問が出てきた。俺は今しっかり服を着ている、でも温泉の湯船の中で倒れたのだから素っ裸だったはずだ。一体誰が俺の身体を拭いて、服を着させたんだろう? 下着もか? 俺は恐る恐るサギに聞いてみた。
「なあサギ、ひとつ聞きたいんだが? 俺の身体を拭いてしかも下着も含めて服を着させてくれたのはサギか? それともウギなのか?」
「あらっ、気になるのかしら、誰でしょうね~ぇ、教えな~ぃもん」
おいおい、サギよ此で何処まで引っ張るつもりだ?
「もしかしてメイラーさんかもよ、いやいやリアーナお嬢様だったりして――やっぱり気になります? ラリーっ」
「そりゃ、俺の身体を隅々まで介抱してくれた人は誰かは気にするだろう、普通」
「サギかウギか? それとも二人でってか?」
「そうね~っ、教えて上げる代わりにラリーからご褒美が欲しいな~ぁ」
「何だ?」
「あ~あっ、サギだけ狡いのじゃぞ妾だって介抱したのじゃぞ……特に股間のぅ」
「ウギっ、其れは言っちゃダメでしょう、ん~もぅ」
成る程二人して俺の介抱をしてくれたと言う事か、しかしウギが……股間? って言ったな。
「ウギが俺の下半身を拭いて服を着せてくれたのか?」
「そうじゃ、妾がジャンケンで勝ったのじゃ、ラリーの下半身お触り放題券のな」
なんだその商品券みたいな取引は、まあ二人が楽しければ介抱して貰う身であるから仕方ないが。
サギは何か悔しそうな顔をしているがそんなに悔いが残る事なのか?
「でものぅ、ラリーの身体を触る時はのぅ……サギが妾の両目を手で塞ぐのじゃぞ、其れで見えないもんでの色々な感触を楽しめたぞ、長くて柔らかな尻尾のようなものが前側に生えていたがあれはお尻に生える尻尾の代わりか? 根元にしか毛の感触が無かったが変な尻尾じゃのぅ」
「『それ尻尾とちが――ぅ』」何故かサギと俺の言葉がかぶった。しかもその後は二人して顔を真っ赤にしながら俯いてお互いの顔を逸らしていたし。
「なんじゃ、妾がまた変な事言ったのかのぉ?」
「いいっ、ウギは知らなくて――っ」
ウギの天然無知に助けられているわ、俺は……。まあ、その後のウギはサギに一所懸命聞きに行っていたようだが、サギが顔を真っ赤にしながらその件には完全に口を閉ざしているようだったね。
「ところであれからどれ位時間が過ぎたんだ? リアーナお嬢様達は戻られたのか?」
話しの流れが下ネタに固まってきたので話題を変えることと、今の状況を知る必要がある事からサギに問うてみた。
「あっ、えっとね……リアーナお嬢様は晩餐会の準備の方に行かれたわ、酷いのよぉ~お嬢様ったらねラリーが倒れたのにずぅーと薄笑いが止まらなかったのよ、英雄様の弱点がっ~素敵ってね――それってどうよって思うわ」
まあ、以前も倒れて馬車の中で休ませて貰った時もそうだったしな、つぼに嵌まったみたいでおなかを抱えて薄笑いしていたしなぁ。
「あと、晩餐会の準備が整ったらメイラーさんが此処に呼びに来てくれるから、多分もう少し掛かるかな――ラリーが思っている程あれからまだ時間がたってはいないから」
サギの言う話しには倒れてから運んできて一連の介抱が済むまで小一時間程度だったらしい。
俺は折角なのでもう少しサギの膝枕の感触を楽しむ事にした。
次回【47話:ヴィエンヌ城の晩餐会前に!】を掲載いたします。




