【45-6話:ヴィエンヌ城の地下温泉大ホールで!】
「お嬢様、ここが元魔王族の居城と言う何か確証でも残っているのですか?」
「ええ、居城の中ではそれらしき遺跡は余り残っていないのですが、この温泉ホールはその昔のままらしいのです、ですから此処は領主専用の浴室として他の方を入れる事は今まで無かったのですよ」
「それでは何故、俺達が此処に入る事を許されたのですか?」
「許すも何も、此処へはラリー様が普通に来られたのです。許すと言う事であれば此処の空間がラリー様を導いたのでしょう」
「申し訳ありません、お嬢様のお話がよく見えませんが?」
「解りにくかったですね、此処は領主専用の浴室と言っても此処に来るまで警護も衛兵もいなかったでしょう? それは誰も此処へ辿り着けないからです、其れこそが鉄壁の警護なのですよ」
「……」
「……」
「……」
俺達は三人とも黙り込んでしまった。そんな空気を打ち破ったのはウギだった。
「何か、じゃこの地下温泉ホールへの階段を三人して降りてきて此処に来たけれど、他の人たちは何処に行けるのじゃ?」
「普通はメイラーが教えた階段を下っていくと外の露天風呂に出ます、此処程広くは無いですがそこそこ大きな湯船を二つ構えていて、皆そこで寛いでいると思いますよ、多分今時分は」
確かにそうだろう、皆一緒にこの城まで来た事だし晩餐会までの時間を温泉でひと汗を流したいと思う事は皆同じだろう。
「何か、妾達が此方に来るとリアーナお嬢様は読んでおったのかのぅ?」
「いえ、其れは解りませんでした、もしかしたらと最初に温泉を地下温泉と紹介させて頂いたのは私のほんの気まぐれでした、まさか本当に此方に来れる殿方であったとはラリー様はやはり私達にとっては特別なお方なのですね」
そう言いながらリアーナお嬢様はにっこりとした微笑みを俺に投げかけてきた。
「じゃもう一度聞くがのぅ、妾がラリーとは別々にあの階段を降りてきていたら妾は露天風呂の混浴で皆の者に妾の裸体をさらけ出していた事になるのかのぅ」
「ウギ様、それは大丈夫ですから、先程も申しましたように外の露天風呂の湯船は二つあると申しました、それは男湯用と女湯用ですからウギ様のその美しいお体をラリー以外にお見せになる事はありませんよ、混浴は此処だけですからご心配なく」
リアーナお嬢様のお世辞にのせられてすっかりウギはご満悦至極になっていた。
「じゃ、何故俺は此処に……この元魔王族の遺跡の地下温泉に来れたのだろう?」
「其れは、私にも解りかねますがただひとつ言える事は、ラリー様も此処の縁の方である事と言う事です、私達と同じように……」
さっき感じた戦慄のひとつが開眼された時だった。
「ねえ、ラリーっ、私はラリーの事を信じているからね、ラリーは何があってもラリーでしか無いから私の知っているラリーは優しくてとても強いけど其れをひけらかす事を可としないとっても素敵な男の子なの、でもね女性にはすごく弱くて意気地無しなの」
サギがそんな事を言ってきた。其れは貴女の俺に対する精一杯の愛情が溢れている言葉だった。
「サギっ、其れって褒めているの? 貶しているの?」
そんなサギの気遣いを感じて思いっ切り軽口で返す事とした。
「ん~、両方かなっ!」
「はぁ~、慰めになってないっ!」
「あらっ、ラリーったら慰めて欲しかったの? なん~だ、だったらね~っ」
サギが俺の方をチラッと見ながら素知らぬ顔をして顔を正面に向き直した。
なんだぁ~! サギの思惑がよくわからない俺はサギの方に向き直った、その瞬間サギが俺の方に振り向いてきて唇を重ねてきた。
「んっ――うん」
短い接吻だったが俺の心のもやもやをサギがまさに吸い取ってくれたようだった。
「おいっ!」
「てへぇ……」
サギは悪さを見つかった子供のような笑顔で照れ笑いをしてくる、その笑顔で俺は一気に心が癒やされていく感じを得ていた。
「あらっ、サギったらいい所を持って行きましたわね」
リアーナお嬢様がいかにも悔しそうにサギに食いついてきた。
「はいっ、ラリーは渡しませんから――っ」
そう言ってサギは俺に思いっ切りしがみついてくる。薄い湯浴み着なんぞ無いもののようにサギの豊満な乳房が此でもかと言わんばかりに俺の身体に押しつけられていやがおうでもその柔らかさを感じずにはいられなかった。今の貴女の格好を考えてくれサギっ!
「今のところは此くらいにして於きましょう、ではラリー様、晩餐会を楽しみしてますわ」
そう言いながらリアーナお嬢様が湯船から立ち上がった、そして後ろに控えていたメイラーさんも……。
俺の目の前に湯浴み着が濡れて完全に透き通って見える状態となった二人の肢体が晒されている。
サギやウギの凄艶な色香とはまた違った艶麗で扇情的なリアーナお嬢様とメイラーさんの姿は俺の羞恥心を否応なく直撃してきた。
サギ達の女体免疫作戦の効果も空しく俺は鼻血を出しながら気を失って倒れ込んだ。
「『あっ、ラリーっ』」
これもいつものように仲よく二人のハモる声を聞きながら、俺の心は天に昇っていった。
「ラリーって……なんで~ぇ――馬鹿っ」
サギの悔しそうな呟きだけが耳に残った。
次回【46話:いつものサギの膝枕の中で!】を掲載いたします。




