【45-4話:ヴィエンヌ城の地下温泉大ホールで!】
「なあ、サギ、もう一度問うぞ。――誰の入れ知恵があった?」
「うっ――」
サギは上目遣いに碧眼の瞳に涙を溜めて俺を見ていた。
「ラリーは嫌だったの? 気持ちよくなかったの?」
サギの涙がいよいよ決壊しそうだった。此は流石に怒りすぎたか、サギもよかれと思っての事だったろう。
「ふ――ぅ」
俺は大きく溜息をつきながら二人の顔をまじまじと見て言った。
「あのな~ぁ、俺だって男だぞあんな事されて堪えろというのが酷だろう」
「……? 堪える? って? ラリーが?」
サギとウギの頭の中では『?』マークが飛び交っているようだ。
「おまえら~っ、俺をなんだと思っているんだ?」
「お主はラリーであろうが、何を今更解いているのじゃ? 妾達が行うお主のおなご修行の一環じゃぞ、さっきのは!」
「は――ぁ? なんじゃそりゃ?」
「お主はいっつも妾達の色香に惑わされて倒れているであろうが、そうじゃろう?」
まあ、ウギの言う事は尤もだった。俺は反論する事すら出来なかった。
「うっん、まあそうだな、それは否定出来ないな」
「そうじゃろう、お主の力はとても強大でお主に勝てる輩なぞまずおらんじゃらろうて」
「そうよ、ラリーあなたには今たったひとつの弱点が女性のお色気なのよ、わかって?」
サギも顔を上げてここぞとばかりに参戦してきた。
「其れは確かにその様だが……俺の意気地無しは仕方ないだろう……そんな経験無かったんだから……」
俺の旗色がどんどん悪くなってきているようだった。
「でしょ~う、だから経験させてあげるの――私達が! いいっ!」
時を得たりとサギの意気が上がってきた。
「いや~っ、でもなぁ、俺の気持ちって言うのもあるし……」
「なに~っ、私達では役不足ですか? それとも……リアーナお嬢様がいいのかしら? ふんっ」
おいおいなんで此処でリアーナお嬢様が出てくるんだ。
「そうじゃのぅ~、御令嬢にはお主鼻の下を伸ばしていたからのぅ、妾達の身体では燃えんかのぉ」
いやいや、二人の肢体の色香が凄艶過ぎて経験と言う度を既に超していると思うのだけれど……。それは、今、口にして言える事では無かった。
「あらっ、今、私の事をお呼びになりまして?」
その声に驚いて三人して声の主の方向を振り返った。湯煙の向こうに二人の影が陽炎のように映っていた。
そこにいたのは誰であろう、サギの台詞にも出てきたリアーナお嬢様その人であった。
後ろには此処への行き方を案内してくれたメイラーさんが控えている。
まあ、お二人が此処に居る訳を問う前に、そのお二人のお姿である。温泉なので無論湯に浸かる為に入ってこられたであろう事は重々承知をしているが、真っ白な薄手の湯浴み着一枚の姿であった。
腰の辺りで帯締めをしている事から、腰のラインが綺麗に浮き出てそれは裸身よりも扇情的な色香を漂わすには十二分であった。
「なっ、なんでリアーナお嬢様が……」
「あらっ、サギ――その質問は如何かとおもいます事よ、そもそも此処は私たちの居城ですから」
「其れはそうですが……此処は混浴の浴室のはずですから、御令嬢の伺う場所では無いのでは?」
「其れは違いますよ、サギ。此処は領主専用の浴室ですから、まあ混浴と言うよりは家族風呂でしょうかね」
「『え――――っ』」三人の驚きの声が綺麗にハモった。
「ですから、ラリー様、他の殿方は入ってきませんから貴方の大切なお姫様方のご肢体を覗きに来る不届き者は入れませんからご安心ください。……唯一の不届き者のお父上は今お母様の監視下にありますからサギを目当てで侵入してはこれません事よ」
「それにしてもサギもウギ様も……ラリー様を目の前にしてなかなか大胆な装いですこと」
「えっ、あっ、リアーナお嬢様ったらっ!」
「あら、ご免なさいね、もしかしてメイラーが言い忘れまして? 女湯の脱衣所に女子用の湯浴み着が用意してありましてよ――メイラー!」
「はい、お嬢様」
「サギとウギ様の湯浴み着を」
「はっ、此処に用意してございます」
メイラーさんはその言葉に即座に反応して、既に用意してきていた二着の湯浴み着を二人に差し出した。さて用意が良すぎるな、二人が湯浴み着を知らなかったと言う事は此処まではメイラーさんの策略か、とするとさっきまでのサギの行動もメイラーさんの入れ知恵だな。俺は何となくそう理解した。
次回【45-5話:ヴィエンヌ城の地下温泉大ホールで!】を掲載いたします。




