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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
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【43-2話:再びヴィエンヌへ!】

 ヴィエンヌまでのそれからの道すがらは若干の野獣とかとの遭遇は会ったが総じて平和な道中となった。サギとの二人羽織のような結界魔術での護衛効果も功を奏した。

 しかしながら怪我人の搬送も有り護衛師団の進みは速いとは言いがたかった。貴族がたの警護無しでの移動としては牛の歩みと言えるだろうが、それでも皆なんとかがんばって早くこの旅を終わりたいと思っているようだった。

 そんな行程を歩みながら俺達はしんがりの責任を最後まで果たすべく最後尾からの監視には余念が無かった。まあ、サギと手を繋ぎながらの道中は傍から見れば何の警戒心も無いバカカップルの散歩にしか思えなかっただろうと思うが……。

 そんな中、サギの表情は朗らかで終始機嫌が良い様子である。時々、俺の方をちらっと見るが俺と目が合うと少し照れた様子で目線をずらしながら俯いてしまうが、その分握った手をぎゅっと握り替えしてくる。そんな調子でまるで鼻歌でも歌っているかの様な表情を見せてくれて、ある意味新鮮な気づきを教えてくれた。サギの笑顔にはほんの少しだがえくぼが出来るようだった、それがまた普段の美しさと違ってとても可愛らしい表情を作るのに気が付いた。

「サギって笑うとえくぼが出来るんだね、始めて気が付いたよ」

「え~っ、私そんな事言われたの初めてですわ? 本当に?」

「ああ、ほら、今まさに――これ!」

 俺はサギのえくぼで出来た可愛らしいへこみを指でつついてみせた。

「えっ――!」

 触られた頬の辺りをサギが自分の指でなぞってみる。

「あっ、ほんとですね、ちょっと有るみたい」

「何でですかね~ぇ? ラリーと一緒だからかな~ぁ? ルームメイトのロミにも気付かれた事は無かったですよ、今まで……」

 そっか、俺が初めて見たのかな? それはそれでとても得した気分だ。

「と言う事は、サギのえくぼを見た最初の人って言う事かな? 大変名誉な事だね、俺に取っては!」

 まあ、俺といる時の笑顔の表情がいつもよりもさらに自然な笑顔って言う事かな――そう思う事にしておいた。

 そんな風にサギのえくぼを堪能していたく――じぃ~っと見つめたと言う事になるが……。

「……ラリー……、そんなに見つめられると、恥ずかしいですわ」

「ああ、ごめん、すごく可愛いから、ついっ」

「は~ぁん」

 サギはそんなうめきを発しながら、“ボムッ” と音でもしそうな感じで顔を一気に真っ赤にしていた。

 まあ、そんな事をしていると右隣のウギの表情は普通は険悪になってくるのだが……。

「……乙女~っ、お~と~めぇ~ぇ、おとめごこーろ……」

 まだ、ニコニコと機嫌良く歌い続けいたよ――よくわからんわ?


 護衛師団の一行は歩みの遅い行軍でも何とかヴィエンヌの城壁がまだ遠くではあるがうっすらと見える所にまで辿り着いていた。最後の気力を振り絞ってラストスパートをかける。

 ここまで来れば最後尾からの警護としても結界魔術までの擁護はいらないようだった。そろそろサギの手を離すタイミングを意識し始めている。

 そんな俺の考えを察してか、サギは余計に貴女の手の握る力を強めてきた。

「なあ、サギ。そろそろ手を離しても良いんじゃ無いかな?」

「――いやっ!」

 ほんと明快なお言葉で……。

「でもさ、ほらっ城壁の門番の所へ先回りしないとさ……ねぇ」

「手を繋いだままでもいいじゃ無いですか、それともラリーは私と手を繋ぐのはお嫌いでしょうか?」

「嫌いなわけ無いでしょう、サギっ、そんな風に言わないで下さいよ」

「だったらいいじゃ無いですか、このままで――ねぇ」

 そんな風に言われたら何も言い返せないじゃ無いですか……俺は先程の発言を撤回するしかなかった。

 そのままの状況で護衛師団は城壁の門の所まで来ていた、無論先頭はニコラス師団長なので門番の方は既に最敬礼で迎えには余念が無かった。そのまま師団長の顔パスで一行はヴィエンヌの街並の中へと入っていく。

 まだ夕刻には時間があって日も高く、俺達が昨日の夜に訪れた時の数倍の活気が街全体に行き渡っているのが十分にわかった。

 護衛師団の一行はそのまま、お城を目指して高台を進んでいく。


「なあ、ウギっ、何でお前まで手を繋いでいるのだ?」

「だって、サギばかりは狡いと思わぬか、わらわの番がいつくるかと思っていたのじゃが、とうとうこなかったのじゃぞ! だったらわらわから手を繋ぎに行くしか無かろうが」

「まあ、それは悪いと思っているが、サギの場合は……そうほれ、結界魔術の連携の為だから」

「それは最初の時だけじゃろうが、もうずっと前に術式は解いているのじゃろう、それでもまだお主らは手を繋いでおろうが」

 確かに道中の途中からは結界魔術は解除してある、でもサギが手を離すのを拒んだ。その為まだ手を繋ぎっぱなしだ。だから、ウギの言い分には確かに理があるが、そうは言っても両側に綺麗に咲いている大輪の花たちと手を繋いだままでヴィエンヌの街並を闊歩するのにはすごい抵抗があるのは理解して欲しいところだ。まあ、そんな俺の恥じらいなんぞは“意気地無し”のひと言で一蹴されてしまうだろうが。

 そうこうしているうちに一行は高台を上り詰めヴィエンヌ城へと着いたのであった。

次回【44話:ヴィエンヌ城での出来事!】を掲載いたします。

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