【5話改稿:ウギさん、サギさんお身体はどこですか?】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
この部屋は特別に次元結界なるものが張られているとサギが教えてくれた。
「次元結界……?」
「そうです、ご主人様、百年間もの間、身体が風化しなかったのも蘇生に問題が無かったのもすべて次元結界の中にいられたからです。」
と、サギが説明してくれた、さらに。
「端的言うなれば、ここの場所は時間がほぼ無い状態なので何も変化が無いのです。ただし、結界の外は通常の時間軸になるため、外に出たところで大きく身体に負荷がかかります、しばらくは慣れるために時限の結界を張って身体を慣れさせる必要があります」
「ふ~ん、それって所謂「浦島太郎効果」ってやつか?」
「ご主人様、浦島太郎様ってどちらの殿方ですか……?」
――あれ、地雷踏んだか? っていうか、浦島太郎ってなんで浮かんだ? やはりどこか他の世界からの転生記憶があるのか? やはり自分がまだ良くわからないなこれは……。
「サギさん申し訳ない。今の言葉は気にしないでください」
――それにしても次元結界に時限の結界……? はてさて何なんだろうね?
「やはりご主人様は現世での転生では無く異世界転生をされたようですね。あの時の解除魔術は効果があったようです。良かったですわ、ねえ、ウギさん」
「おう! そうじゃの、妾達二人分の接吻効果ぁか!」
――えっと、なんか聞き捨てならない、お言葉をウギが仰りませんでしか? 接吻とかなんとか? 二人分って……誰と誰?聞きたい……。
そんな事を心の中で呟く今の彼は目を爛々と光らせて、まるでお伽噺に興味津々の幼子の様な目をしていた。
――彼女達の姿は無いから顔色とかわからないけど、どんな表情でしゃべっているんだろう? って、完全に野次馬状態だろう自分は……。
と、彼の脳裡妄想は留まるところを知らない様だったが、そんな彼の心の内を知ってか知らずかウギとサギの二人がこそこそと忍び言を始めた。
「ウギさん、それは内緒ですよ……、まだ……」
「おおっ……そうじゃった、そうじゃった。すまんことをした」
「今のは確信犯でしょ、ご主人様の気を先に引こうたって、そうは問屋が卸しません事よ。おわかり……ウギさん」
「まあ、まあ、サギ殿そんなに熱くならんでもよかろうに。ほんの戯れ言よ! 軽く聞き流してくださらんか!」
――また左右の雲行きが怪しくなってきたぞ! なんか気持ち的にこそばゆいが、自分にとってはとても晴れやかな事なんだよな? もしかして彼女達と……。
「ウギさん、そんなことを言って今の状態で前世の呪術を刺激する事をしゃべると、それこそ私達が蘇生できなくなりますよ。気をつけてください!」
「おおっ……、そうじゃった、そうじゃった。気をつけようぞ」
――しかし、ウギの言葉は、なんか年寄りくさい気がするけど……でも、なんか馴染むなこれ……。
「お主、今、不埒な事を思わなかったか? ……言葉で伝える訳ではなく魂のリンクによって伝え合う方法は、謂わば魔術の類いであるからな、妾の不得意な分野でサギほどうまくは使えないのじゃ。妾は剣を振り回す方が性に合っている。その点は割り引いて評価を願いたいものじゃな! まあ、よいがの…ふふっ……」
――ほほ~ん! ウギが言い訳まがいの台詞を吐いているよ。
「主よ、まあ結界の中では時間がほぼ無いとはいえ、実際の生身は少しは成長はするからの、じゃからお主の身長も少しは伸びているようだの……妾は刀剣と間合いで勝負する立場だからの、距離感というか長さ感覚というか、そういうモノは絶対感覚があるからの……なんとなくだが解るのよ」
――なるほどウギは剣士なんだ、まあ聖剣士というところかな、と言うことはサギは魔術師か?
そんなことを思っていると案の定、魂のリンクに依る念波は相手に伝わった様で、サギがその通りでございますと答えてくれていた。
ある意味便利だなこの魔術、だってこっちの言葉はわからないはずなの会話が成立すると言うことは、まず最初のコミュニケーションの問題は完全クリアじゃん! とか思っているお気軽な彼の事は取り敢えずこの場は置いとくこととする。
「ところでサギさん、ウギさん、貴女達の身体はどこにあるかわかりますか? その身体に戻る方法は?」
彼が核心の質問を彼女等に投げかけた。
「ご主人様、私達の身体もこの神殿のどこかに安置されているはずです、そしてその身体に戻るにはご主人様の力が必要なのです。まずは私達の身体の捜索をいたしますから、しばしお待ちいただけますか?」
サギがそう言うと、謎の言葉を交えながら詠唱を始めた。
「□□□□□……、妾の魂と身体を結びつけよ、汝の心の糧に…」
「お主、左手を伸ばして掌を開いてくれるか。」
「ウギさん、左手か?」
「ああ、そうじゃ……左手じゃよ。腕をまっすぐ伸ばしてみてくれぬか、その状態で掌を上に向けて開いたまま待っててくれ」
「わかった、やってみる」
ウギが言った通りの事をすると、彼の左手の掌から光の玉が浮き上がってきた、まるで蛍の光のように淡く青白い光を放ちながら、掌から浮き上がってふわふわっと宙に舞い上がっていくのが見える。
「なんだ、これは?」
「ご主人様、その光の玉が道案内をしてくれます、私達の身体の場所まで。ついて行っていただけますか」
サギがこの光の導くままに従ってついて行けと言っている。これも魔術なのか? と、彼はびっくりしながらも言われた通りに光の玉について行き、彼が横たわっていたその部屋をあとにした。
光の玉は薄暗い部屋の内部を照らす松明のような光を発し始めるとさらにゆるりと速度をあげて浮遊していく。部屋の出入り口は二カ所あったが、その一つの出入り口の方へと光の玉が飛んで行った。そのうしろを彼が追いかけていくことになるのだが、光の玉は彼を確実に導くよう、その歩みに合わせて浮遊速度を調整してくれているようであった。
「……どこにいくのだろう? この出口の先は階段か?」
光の玉に導かれながらも、まだ心許ない足下に注意してゆっくりとついて行った。導かれた出口のその先は登りの石段で作られた階段のようであった。
階段の幅はほぼ大人が三人横に並べる程度の幅で高さは吹き抜けの様に高い、上階の様子は暗くて見えにくいが、かなり上までありそうだった。
「ご主人様、足下にお気をつけてください、この先はさらに上に向かいます、上に登るにしたがって階段の幅も狭くなりますから……」
「わかった、サギさんありがとう」
結構傾斜がきつい階段だったので病み上がり? と言うか蘇生あけの彼の身体には難行苦行の範疇になるであろうと思われた。
足がつりそうになり心臓もバクバクと激しく鼓動を早めるまでに体力を使って、やっと上階へと登ってきた。だがまだ案内する光の玉はふわふわと彼の目の前を浮遊していて更にその上の階へと導こうとしている。階段の途中は折れ曲がりながら、螺旋の様に上へと伸びているがまだその先は見えない。しかも先ほどサギが言ったように上に登るにつれて階段の幅は狭くなって来ており、いまではちょうど大人ひとりが通れる幅しか残っていないかった。
「サギさん……っは・は・はっ……まだまだ、上に登るのかな?」
彼の疲労は結構きているようだった。流石に息が切れて辛そうなのが顔に出ている。
「ご主人様、もう少しですから……はっきりと私達の身体の残留気が見えてきましたから……がんばってください」
「……きっつぅ…は・は・はっ・は……」
「お主もまあ、だいぶ身体がなまっている様だの……まあ、蘇生間際だからやむ得ないがの……」
「ウギさん、後でしっかり私達が鍛え直してあげなければいけませんね! 楽しみですね、うっふふ……」
――おいおい、うっふふでは無いだろうにサギ達だってこれから生身の身体の方を蘇生させる立場なんだから今に同じ思いになるぞっ……。
と、少し憤慨しならがら彼は心の中でそう思っていた。まあこの思いはそのまま伝わるのだけれど……。
「あらご主人様ったら、ご機嫌を害されました? そんなつもりで言ったわけでは無いのですが。申し訳ありません」
「サギ殿、まあよいでは無いか、妾達も蘇生にて身体の調整が必要になるとて、今の主よりもまだましなレベルかもしれないぞ……まあ、其方には回復魔術があるからの……その点有利ではあるが、妾にもお願い出来るかの?」
――回復魔術?? 何それ……ずるくね…っていうか、なんで今、自分に処置してくれないの?
と、彼は半分べそをかきながら訴え始めていた。
「申し訳ありません、ご主人様、身体を取り戻さないとそこまでの魔術はまだ処置出来ないのです……、後でご主人様の身体にも対処しますから今しばしお待ちください」
――なるほど、そういうことならしょうがない……と思うしか無いな!
そんなこんなで彼が彼女達との脳内会話でそんな風に戯れていると、いつの間にやら最上階へと着いたようだった。
「この先は、また部屋の様だな?」
光の玉は目先の折れた道筋をたどりながら、階段の終わりにつながっている部屋へとまたふわふわと浮遊して入っていった。光の玉に続いてその部屋に入ると下層の部屋とは多少違っていた。部屋の大きさ自身も少々小さく思える。
部屋の造りの様相は下層の部屋と同様に石を積み重ねて造られているが、ひと枡の石の大きさがやや小ぶりとなっていた。明かり取りの穴がやはり数カ所あいているが、薄暗さは下の階よりも解消されやや明るめになってきている。このことから外に近い部屋に感じられた。
ほかにも燭台を備えるテーブルのような箇所やら椅子やら、端の方には台所とおぼしき場所もあるようだ。そうそう何故か水瓶もあった。下の階の大部屋と違ってここは生活空間の様な場所と思える。
「ご主人様、ここの結界も先ほどの部屋の結界とつながっております。ここの方が結界の外側に近い場所となりますが、まだ、次元結界の中です。この中での魔術は外へは漏れませんので、この中で蘇生魔術をお願いします」
――っん…サギさんなんか今、変なことを言わなかったか? 蘇生魔術? お願いします? 誰に? 誰が? ……俺か?? …魔術って??
大量の疑問符が彼の頭の中をギガ単位で往復していた。まさか彼がサギから魔術をお願いされるとは思ってもいなかったようで、全くの想定範疇外の投げかけであったろうと思う。
「えっと、サギさん……魔術をお願いしますって、今、……自分に向けておっしゃいましたか?」
「はい、ご主人様。ご主人様の蘇生魔術で私達を反魂していただけますようにお願いしたのでございます」
――いったいどないせぇっちゅうねん!




