【30-2話:ウギ、護衛師団のメンバーになる!】
護衛の赤い馬車のところに行くと丁度リアーナお嬢様達が馬車に乗り込もうとしている時だった、無論サギもお側に仕えている。俺達が馬車の傍まで近づくと気が付いたらしく馬車に乗り込むのを止めて此方の方へと歩いてきた。リアーナお嬢様を先頭にその後ろにサギが控える形だ。俺はその時、御令嬢の様子に昨日と違う変化を捉えた。リアーナお嬢様も『白気』の『気』を持っていたが昨日の状態では『白気』だがまだ成り立てで残黒気も混じり合ってグレーぽい酷く不安定な状態だったはずだ、それが今日はどうだろう、残黒気がまるで感じ取れないと言うか普通の『白気』の様相になっていた。これなら、昨日とは大違いで精神も安定した状態だろう。
「おはようございます、ラリー様。今日も護衛のほう大変でしょうがよろしくお願いしますね」
リアーナお嬢様はそう丁寧に挨拶をしたあとに、深々とお辞儀をしてくれたね。ほんとまさに貴婦人の如くの気品がにじみ出ていたよ。思わず俺は呆気に取られて返事を返すのさえ忘れてしまうところだった。いや、半分忘れていたね、ウギにお尻を叩かれるまでは……。
「――――、ぃて……あっ、リアーナお嬢様おはようございます。道中安心していて頂けるように警護いたしていきますので、どうか車内でごゆっくりとお寛ぎ下さい」
「ラリー様が付いておいでですものね。安心しておりますわよ、ではお先に失礼しますわね」
目が点になったままの俺をおいて、馬車の中へと御令嬢は姿を消していった。その後にサギが続いて乗り込む訳だが乗り込み間際に俺の方を向いて肩を竦めながらペロッと舌を出してウインクして見せた。その仕草で全てが理解出来た。サギか、リアーナお嬢様の『気』の施術をしたのは、しかし見事な仕上げだなと感心していると隣でウギが言ってきた。
「ラリー、今度は御令嬢に色目遣いかのぅ、このスケベったらしが!」
と、俺の腕を思いっ切り捻ってきた。
「いてててってっ……痛い! 誤解だ、誤解! ウギ、止めろっ」
「何が誤解なのじゃ? 妾はしっかり理解してるぞ、お主の浮気心をそれじゃサギに申し訳ないじゃろうのぅ」
「えっ、サギに……? (ウギの嫉妬では無かったのか?)」
「妾は妾でも愛人でも何番目でも良いと言うたじゃろう、でもサギは違うぞのぉ、あれはお主に一途だぞまあ気持ちじゃ妾も負けてはおらぬがのぅ」
「そ……そうなのかっ? ウギの言いたい事はわかったが、もう腕を捻るのは止めてくれ、痛いっつの!」
俺の腕を解放してくれた後、ウギは“じと~っ”目で俺を睨みながら言葉を続けて来た。
「妾達はお主の両腕をそれぞれ分けた、それはお主の腕の代わりになるという事じゃ、んっ、解っておらんのかのぅ」
んっ、どういうことかな? ウギ?
“ふっ、坊やはやっぱり、にぶちんね~ぇ。この娘達は死ぬまであなたに付いて行きますって言っているのよ”
ヴァルが魔力念波で割り込んできた。で、そんな事を教えてくれたよ、ほんとか~?
ウギを見ると確かに、顔を真っ赤にしてはにかんでいるようだった。
俺は思わずウギの肩を抱き寄せて頭をくしゃくしゃと撫で回して遣った。
「ウギ、解ったよ、悪かった」
「解ればいいのじゃ、解れば……んっ、もっと撫でてくれのぅ、気持ちがいいのぉ」
ウギはくしゃくしゃの笑顔で俺に甘えてきたよ。
その時だった、遠くの方で大きく呼ぶ声が聞こえたのは……。
「姫様っ!」
遠くで聞こえる呼び声に最初に反応したのはヴァルだった。直ぐさま呼び声の主の方へと近づいて行きウギを守るように立ちはだかった。
俺とウギが呼び声に気づいた時には既にヴァルは呼び声の主へと襲いかからんとしていた。
“ヴァル、其奴はウギの知り合いだ、よせ!”
俺は魔力念波でヴァルに制止を促した、が、ヴァルは止まらない。
“解っているわよ、坊や……奴はヨル爺はお嬢の天敵なのよ、あのエロ爺が!”
「はあっ? 天敵?」
俺は一瞬何のことだか解らなかった、ヨル爺はウギの知り合いじゃ無かったのか、よりにもよって天敵とな。俺は理解出来ずにウギの顔を見た。ウギの『白気』が怒りの色をあげているのを見て俺は理解した。
「俺はヨル爺に騙されたのか?」
「ウギ、お前の知り合いでは無いのか? あのヨルガルマ爺さん――ヨル爺は?」
「えっ、ラリー、お主は彼奴の事を知っているのか?」
「まあ、昨日の夜になウギと出会う前に任務で一緒になった、その時に身の上話の折にウギのスリーサイズと同じ姫様の話になってな何となくウギの事と重なった」
「そうか、解ったのじゃ、でものう妾は彼奴が嫌いなのじゃ」
えっ、そうだったのか? 俺の早とちりだったみたいだな。でも、なんでそこまで嫌うんだろう?
そんなやり取りをしている間にヴァルがヨル爺を完全に組み伏せていた。俺達はその傍らまで近づいていった。
「姫様っ、爺は会いたかったですのぅ」
ヨル爺はヴァルに両腕両足を組み伏せられて身動きが出来ない状態ながら、気丈にもウギに話しかけてきた。
「妾は会いたくは無かったのじゃ、でも今日は助かるのじゃ、爺に会えて!」
そう言うと、ウギはおもむろにヨル爺の服の中に手を突っ込んだ。と、ごそごそと内側のポケットか何かの中を探っているようだった。
「やっぱり、持っておったのかお主がのぅ……これは妾のじゃ返してもらうぞ」
「姫様、それはご無体な爺の宝物を……」
「うるさい! お主が持っててなんの役に立つというのじゃ……」
と、ウギは目的のものを探り当てたようで、それをヨル爺から奪い取った。そして、そのものを俺の目の前で広げて見せてヨル爺に引導を渡した。
「ヨル爺! 此奴は……妾の下着泥棒なのじゃ」
俺の目の前で高らかに広げられたそのものは確かにFカップクラスの乳当て? 下着であった。
「へっ――――え~っ」
俺の空しい声だけが朝空に響き渡った。
次回【31話:ウギ姫様はヨル爺が嫌いでした!】を掲載いたします




