【30-1話:ウギ、護衛師団のメンバーになる!】
俺とウギとヴァルは三人? が揃って先程逃げてきた温泉宿の表庭の方へと向う。
俺たちが辿り着いた時には既に先程の喧噪は過ぎ去っていて、皆、忙しそうに出発の準備に追われていた。俺はヴァルにその威圧感のあるオーラを極力引っ込めておくようにお願いしておいた、そのお陰か今は特に群衆の注目を浴びる事も無く進む事が出来た。そんな中で、赤い馬車の前でてきぱきと護衛師団のメンバーに指示を出している聖騎士長を見つけ、彼の方へと向かった。
「聖騎士長、ちょっと宜しいでしょうか」
「おおっ、ラリー君かね、なんだねあらたまった物言いで……」
「いえ、護衛師団のメンバーの事で報告がありましてお伺いしました」
聖騎士長は俺の連れてきた女の娘を見て一瞬、躊躇する様子を見せたが横に付き添っている銀白色の大型の狼獣を見て取って、はたと思い出した様子で問いかけてきた。
「ラリー君、話しはニコラス師団長からお伺いしているぞ、そのお方かガルムを使役している魔法剣士殿というのは」
「はい、この方が魔法剣士のウギ・シャットン嬢であります。そしてその使役魔のヴァルです」
俺はそう言いながらウギの背中を軽く押して、俺の前に彼女を半歩押し出した。
俺に押し出されながらも、ウギはその大きな胸をさらに突き出すようにして胸を張って名乗った。
「妾は、ウギ・シャットンなるぞ、この度ラリー殿の要請で、この護衛師団に手助けに参った、宜しゅう頼むぞのぅ」
ウギの言葉遣いに、聖騎士長は目を点にして驚いていたが、そんなのにはお構いなしにウギは講釈を続けた。
「そしてじゃ、このヴァルなる大狼ガルムな、妾の連れじゃ、こちらも宜しゅう頼むぞのぅ」
ヴァルはウギの呼びかけに応じて“ウォン”と一発吠えて応えた。
「おおっ、大狼ガルムの咆哮は、なかなか迫力があるな」
聖騎士長は今のウギとヴァルのやり取りに満足したように大きく頷いた。
「ラリー君、まあ予想とはちょっと違ったが、君の推薦であれば実力は推して知るべしだな、今日からよろしく頼む」
「ありがとうございます、ウギ・シャットン嬢の配置ですが私にお任せ頂けますでしょうか? 出来れば魔法剣士同士の連携魔術を行いたい時があろうと思われますので」
「相、分かった」
聖騎士長はそう言い残すと、軽く目配せをしてまた出発の準備へと戻っていった。
ひとまず、ウギ達の参画については事無く終わったので俺も出発の準備を始める事にした。
「まあ、ウギとヴァルは既に準備万端だしな、俺だけか」
丁度、そんな事を考えているとどこからともなくお邪魔二人組が現れた、ガアーリとフランのふたりである。
「よう、ラリー、なあっ俺達って友達だよな! なっ!」
「そ……そうだよな、そうだろうよラリーさん」
ガアーリとフランのふたりして声を合わせて何を言いたいんだか?
「そこの可愛いお嬢さんはラリーのお知り合いかい! なあ」
ははん、ふたりの狙いはウギか! しかし、まあ懲りない奴らだこと。さてと、どうしたものかな。
俺はウギの方に振り返った、当のウギはと言えばヴァル相手ににらめっこをして遊んでいる。
こりゃ、お二人には悪いがウギ当人は興味無しの態度だよ。と思っているとフランが口を出してきた。
「なあ、ラリー紹介してくれない? 俺等に、その娘を……頼む!」
「頼まれてもね~っ、おいウギっ」
俺の呼びかけに応えて、ウギがヴァルと一緒に近寄ってきた。
「なんじゃ、ラリー用事は済んだのかのぅ」
ほら、やっぱりだ。お前等には興味は無いぞ、この娘。
「いや、用事と言うほどのことでは無いよ、この二人がウギと仲良しになりたくて、自己紹介したいらしい」
「妾はどうでも、ヴァルが懐かないぞな」
そう言って、ウギはヴァルを嗾けてガアーリとフランの二人のところへ送り込んできた。
大狼ガルムが唸り声を上げながら、二人にのそりと近づいていった。
「ひっ――っひ!」「うわっ!」
二人揃って悲鳴を上げた。しかも、腰を抜かして尻餅をついたままで後ろの方に躙り寄って、逃げるすべの全てを無くしていた。それでもヴァルは二人に近づいていく。
「あわわっわ……っ、ひっ!」「……ぷぅ!」
あ~ぁ、とうとうふたりとも泡を吹いて気を失ってしまったよ。
“あらっ、情け無いわね、これで終わり?”
ヴァルは不完全燃焼で文句たらたら言いながら、ふたりから離れてくれた。
まあ、常人なら普通はこんなもんだろう。ふたりには可哀想だがしょうが無い。
「なぁ、ラリーこのふたりどうしようかのぅ?」
「あぁ、そのまま、ほっといていいよ」
「わかったのじゃ、ヴァル戻っておいでじゃ」
ウギの言葉に応じて、ヴァルはウギの傍らにすたすたと戻っていった。
軽率な行動のツケを払ったふたりの事はそのまま置いておいて、ウギ達と俺等の護衛の持ち場に戻る事にした。
次回【30-2話:ウギ、護衛師団のメンバーになる!】を掲載いたします




