【29-2話:ウギとサギの初顔合わせでした!】
「ふ~っ、サギさん、この娘は今日から護衛師団のメンバーとして俺たちと一緒にリッチモンド伯爵家の警護をしてくれる魔法剣士のウギ・シャットン嬢だ、こっちはその使役魔のヴァルだ。今日は魔獣が俳諧している場所を通り抜ける事になるから魔術師の補強に俺が彼女に手助けしてくれるように頼んだ」
隠すことでは無いので、この点は正直に真実を語った。
「あらっ、魔法剣士の方でしたの私はてっきりラリー様のいい人かと……だって、ラリー様の右腕にその様に……(うらやましいですわね、ほんと)」
サギさん、其れは無いでしょう―――っと思っていたところにウギが言い出した。
「お主も良いぞ、ラリーはまだ左腕が空いているぞ、悪いがのぅ、右腕は妾の居場所になった、此は渡さんぞ」
はあっ! ウギよ、何を勝手に決めてんだ! 俺の腕だぞ! まあ別段こだわりは無いが(て言うか、正直嬉しいが)。ウギの挑発まがいの言葉に俺は先ほど俺の夢で見たことがまさに正夢になるであろう悲劇を予感していたが、何故だかサギさんの眼差しから険しさが薄らいでいくように感じた。その上、何か上目遣いで思案をしながら小首を傾げている。
次の瞬間、俺の目の前までサギさんが寄ってきていきなり俺の左腕を取ったかと思うと、その腕に貴女の身体を絡めてきた。
「じゃ、私はラリー様の左腕を頂くわね、確かにあなたの言う通りだわね、私もあなたのようにもっとラリー様に対して積極的になるべきよね、ありがとう、あなたのお陰で私も目が覚めましたわ」
え~っ、サギさんいったい何を言っているんですか?
「あっと、ウギさんって仰ったわね、私はサギーナ・ノーリよ、テポルトリの宮廷魔術師よ、以後よろしくね」
サギさんは、何だか憑き物が落ちた様に明るく柔やかに振る舞いながら、ウギにライバル宣言? をしてくるのだった。
「そうか、その方が良いぞのぅ、サギさんと呼んでもよいかのぅ、妾はウギと呼び捨てでかまわぬぞ」
「あらっ、それじゃ私もサギで良いわ」
「ねっ、ラリー……えっとぉ、私もウギのようにね、んっ、そう呼んでも良いかしら? えっと、ラリー……あとね、私のこともサギってね、いい?」
サギさん、あっ、いやサギは、顔を赤らめて俯いたまま聞いてきた。俺の左腕に抱きついたままで……。
「サギさ……いや、サギそれで良いのか?」
「うん、ラリー……ね、それが良いの」
「お主ら、ラリーにサギに妾はウギじゃ、これからもよろしくじゃのぅ」
「ああ、サギ! ウギ! こちらこそ、よ・ろ・し・く」
なんか、思わぬ方向で三人纏まったよ! これはウギの天真爛漫さのおかげかな~ぁ、うむ。
ふっと、早急に言っておかなければならないことを俺は思い出してそっとウギに耳打ちをしたよ。
「ウギ、昨日の夜の事はふたりだけの秘密な!」
「んっ、わかったのじゃ、ふたり・だ・けのじゃな」
これで当面は安心かな、さっき見ていた夢が正夢で無くて良かったよ。そっと胸をなで下ろした俺の事を左側で怪訝な顔つきで見ているサギの顔が目に入って、おもわず苦笑いで誤魔化そうとしたよ。
「ラリー、お二人だけで……なんか嫌ですわよ?」
「んっ、今の話しかのぅ? それならサギがめちゃくちゃ可愛く見えるって言ってたんじゃよな、ラリー!」
「えっ、まあぁ、そっ……そう、うふっ」
おおぅ! ウギ! ナイスだ!
「ラリーったら、ウギにそんな事を言うなんて、もうっ、や――だっん」
ウギの起死回生のフォローで、サギは顔を真っ赤に染め上げながら上天気な気分に浸ってくれたね。
「ラリー、ひとつ貸しなのじゃ」
「ああっ、ありがとうな」
取り敢えずこの場は旨くしのげた事で、俺は大きく安堵したよ。
そんな場面をずっと見ていたヴァルはひと言、ぼそっと呟いた。
“ふたりとも――余りにチョロすぎる!”
面目至極も無い、俺はヴァルに軽く頭を下げて黙礼した。
「サギ、俺はウギとヴァルを連れて小隊の聖騎士長の所へ行ってくる」
「わかりました、私はリアーナお嬢様の護衛があるので戻りますわ」
それぞれの持ち場へ戻ることをお互い確認してこの場は別れることにした。
「あっ、ラリーっそう言えば、さっきリッチモンド伯爵様の奥方様が見えられて昨日の伯爵様の言った求婚の話しは冗談でしたと、私には大変悪いことをしたと伯爵様に成り代わって謝りに来られましたの。伯爵様が奥方様に泣いて謝ったらしいですわ? なんでも私には恥ずかしい行いだったので直接言えなくなったらしくて奥方様に代わりに私に謝罪をお願いしたらしいの? 伯爵様は如何したのかしら? 私の方は別に気にする事も無かったのに、なんかへんでしょ?」
おおっ、俺の方はその原因にしっかりと身に覚えがあったので、サギには適当に誤魔化した説明をしておいた。
「ラリー、そう言う訳で伯爵様の件は無かったことになりましたから、昨日の噂の事は忘れてくれますか?」
「うん、わかった、サギ!」
サギにとっては結果良かったのかどうかはさておいて、俺にとっては憂鬱な出来事のひとつが消え去ってくれたので心が少し晴れた気がしたよ。取り敢えずは今日の任務をこなす事を考える事にして、コテージの前でサギと分かれて小隊の方へ向かった。
次回【30話:ウギ、護衛師団のメンバーになる!】を掲載します




