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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
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【29-1話:ウギとサギの初顔合わせでした!】

 俺は群衆の視線を一挙に浴びるこの場からとにかく逃げ出したかった。庭先からウギ達を連れてコテージの方へ向かう事にし、ヴァルに魔力念波で先頭を走るように向かうべき方角を指示した。

 ヴァルの行く先の人垣はやはり先程と同じように自然にけていくので、移動の障害となるものは無くなっていく。ヴァルの存在そのものが此程まで人の脅威となっている事に驚愕しながらも今は感謝の念を抱かずにはいられなかった。

 “ヴァルよ、悪かったなこんな思いをさせて、でもありがとうな”

 俺は魔力念波でヴァルに感謝の気持ちをとにかく伝えておいた。

 “―――?”

 それには応えず、ヴァルは怪訝な顔で俺の方を見た。

 “ラリー、あなた其れを素で言っているのか~?”

 “もちろんだとも、ヴァルだって皆に嫌がられるのは気分的にも嫌だろう? でも今、俺は其れを利用しているんだ、悪いと思っている”

 “―――ふ~ん、やっぱりあなた、面白いわ!”

 ヴァルはそう言い終わると、前を向いてさらに周囲に凄烈せいれつなオーラを解き放ち野次馬やじうまの一団を瓦解がかいさせていった。


 黒山の人集ひとだかりを何とか抜け出して、俺たちはリッチモンド伯爵等がいるコテージ前へと辿り着いた。此方の方は出発準備に追われるリッチモンド家のメイドさんやら使用人の方達が表庭に出向いている為、人の数はまばらだった。勿論もちろん、護衛師団のメンバーが警護の為にいるが彼等に野次馬に徹している時間は無かったので俺達を注目する目はもう無かった。

「ふ~ぅ、何とか野次馬はやり過ごせたな。ウギは大丈夫か?」

 俺にもやっと周りに気を配れる余裕が出来てきた。ウギは何故だか今の出来事が楽しかったらしく浮き浮きした顔で俺の方を見ている、しかも走っている間もずっと俺の右腕に絡みつくように身体を預けていた。お陰で正直走りにくい事この上なかったし、ウギの豊満な両胸の間に俺の右腕がずっと挟まれているので、その感触が気になって仕様しょうが無かった。

「ラリー、鬼ごっこはもう終わりなのじゃな? わらわはもう少しこうしていたかったぞ」

 おいおい、ウギの浮き浮き気分はそんな理由かい。俺は苦笑いをしたね。まったく!

「此処あたりでもういいだろう」

 先頭を走るヴァルに頃合いであることを知らせた。その合図に従ってヴァルも走るのを止めて此方こちらの方へ向き直る。

「ウギは目立ちすぎだよ、まあ半分はヴァルのせいでもあるけどね」

 取り敢えず一応言うべきことは言って於かなければ、ここからはパーティとして一心同体で生死を分けることにも成りかねないからな。

 ウギにその容姿から目立つなと言うことも難しいのは十分承知の上で、苦言だけは言って於くことにした。

「悪かったのじゃ、ただのわらわはラリーに早う逢いたかっただけなのじゃ、目立ちたかった訳では無かったのぅ」

 少しねるように、ウギは口を尖らかせて言ってきた。

 まあ、それもご愛敬として今回は水に流すことにした。

「ところでラリー、わらわ達もお主等と一緒に行っても良いのかのぅ?」

「ああ、その事なら大丈夫だ。上の方の承認も取り付けてある、俺の小隊長にこれからウギ達を紹介しに行こう」

 “ヴァルはウギの使役魔と言うことになっているから、そのつもりで頼んだよ”

 俺は魔力念波でヴァルに指示をした。

 “解ったわ、ラリー。其れで、全く問題無いわよ”

 ヴァルから返事が直ぐ返ってくる。そこの辺りはやはり勘の鋭いと言うか、空気の読める相棒になっていた。


 この時点で俺は気が付けば良かったのだが、野次馬の群衆から逃げ切る事だけを考えていた俺には今いる場所の不都合な状況には全く気づかなかった。この時点が俺の盲点だったんだ。

 ウギ達と話をしていると、なんやら不可思議なオーラを放つ女性がひとり此方の方へ近づいてくるのがわかった。それも碧眼の見目麗しい金髪の美女が!

「サギさん……?」

 俺は暫く貴女かのじょ何故なぜそんな不可思議なオーラを放っているのかを理解出来なかったが、俺の右腕にウギがまだしっかりとしがみついていたのにはたと気づいた。

 おおっ! この状況はやばくないか? 咄嗟にこの後のシナリオを頭に描いて青ざめてしまった。こっ……これは正夢になるのか!


「おはようございます、ラリー様……」

 サギさんの声には、感情からくるべき抑揚が全く入っていなかった、と言うかかなり静かな怒りが込められている気がした。

「……ラリー様、そちらの女性は?」

 サギさんの碧眼が俺の眼を射貫くように見つめてきた、その瞬間、俺は背筋が凍り付いたね。

「おはようサギさん、今日は魔獣達と相まみえる事になるかも知れないからよろしくお願いしますね」 

 取り敢えず話を逸らしてみたが――――っん、駄目だった!

「ラリー様! 質問にお答え頂けませんか!」

「うっ……、サギさん……そっそれは……あの~ぉ、なんて言うか……その~ぅ」

 俺が答えにきゅうしていると、ウギが口を開いた。

「そこのお姉さんは妾の事を聞いているのか? そうなのか?」

「……めかけ?」

「はあっ?」

「――わらわじゃ!」

 “おいっ! あなた達、言葉遊びしている場合ですか?”

 横やりでヴァルが絡んでくる。ヴァル頼むから今はそっとしておいてく~れ~っ! 話しが余計拗こじれる。

 “あらっ、ラリーごめんあそばせっ”

次回【29-2話:ウギとサギの初顔合わせでした!】を掲載します

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