【28-2話改稿:ウギさん、おはようさん!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
「ニコラス師団長殿、少しの間お時間をお貸し頂けませんか? 警護メンバーの人員についてご相談したい事があります。護衛師団にとっても決して悪いお話では無いと思います」
ラリーはニコラス師団長に対して単刀直入に話しを切り出した。
「君は確か、ラリー君だったね。どうしたんだ藪から棒に、今は出発前の慌ただしさの中だ、余り時間が取れないので手短に頼むよ」
「ありがとうございます。ニコラス師団長殿、今回の警護メンバーの人員構成について自分は魔術師系のメンバーが不足していると感じていますが如何でしょうか? 特に今日は魔獣が俳諧している場所を通り抜ける事もあり、魔力による防御の必要性があると思われます」
「ふむ、ラリー君の見立ては確かなんだが魔術師は何処も人手不足なのだよ、その為、リッチモンド伯爵様の婦女子護衛の為に宮廷魔術師の助けをお願いしたのだよ、それ以外は残念ながら騎士の人数頼りなのだ」
ニコラス師団長は跋の悪そうな顔つきでラリーから目を背ける。
「ニコラス師団長殿そこでなんなんですが、昨晩、コテージ警護の巡回の折にいい人物に出会いまして、自分から是非とも今日からの警護を手伝ってくれないか頼んだみたのですが快く引き受けてくれると言うので師団長殿の許可を頂きたく、この様に早朝から不躾ではありますが参った所存です」
ニコラス師団長はビックリした顔つきに変わってなにやら思案を始めた。
――これはもう一押しだな。
ラリーはそう考えて最後の切り札を出す事にした。
「師団長殿、その相手はやり手の魔法剣士とお見受けした次第です。しかも、そのお方が戦ってねじ伏せた大狼ガルムを下部として使役していました、此程の逸材はいないと思います」
「なにっ、聖魔獣ガルムを使役しているとな、それは誠か?」
「はい、本当の事で御座います。そして、そのお方はここに居りますヨルガルマ殿のお知り合いのようなのです、依って素性も確かなお方であります」
いきなりの無茶ぶりにヨル爺は目を点にして驚いている。まあ、それもこれも真実を知れば言っている意味が間違いでは無い事に気づくはずだからラリーは気にしないで話しを続けた。
「ヨルガルマ殿の知り合いとな、それは本当なのか?」
ニコラス師団長はヨル爺の方に向き直って問いかける。
「……たぶん、そのようじゃのぅ。……ラリー君の話によるとのぅ、師団長どのぉ」
「――――ヨルガルマよ、其方は――――まあ、良い。ラリー君! 相、分かった、こちらとも願ったり叶ったりの話しだ、イカルガ伯爵の信認を受けている君の見立てだ信頼しよう、君に一任する」
「ありがとう御座います。ニコラス師団長殿」
「それでは私はこれで失礼するよ、後の事は小隊長と調整してくれ、それでは頼んだぞ」
「はい、ご配慮、感謝いたします」
ラリーとヨル爺は敬礼をしてニコラス師団長の後ろ姿を見送った。
師団長が去った後、直ぐさまヨル爺が文句を言いにラリーに詰め寄ってきた。
「のぅ! ラリー、無茶ぶりにも程があるぞのぉ。儂の知らん相手の事を聞かれてものぅ、儂は頭の中も外も真っ白になったじゃて、まあ、白髪は元々じゃがのぅ」
「ヨル爺、さっきは悪かった、この通り謝る。ただ、会えばわかると思うし、ヨル爺にとっても悪くない事だと俺は思っているよ。此だけは信じて欲しい」
「いやのぅ、ラリーの事は疑ってはいないがのぉ、でも、ホント誰なんじゃのぅ?」
――まあ、ヨル爺よ、後でゆっくり度肝を抜かれてくださいって! ほんとびっくりだろうな~ぁ。
そんな事を思いながらラリーはニヤリとほくそ笑んでいた。
ラリーもウギとヴァルからの依頼を無事完遂させたので、ひとまず肩の荷が下りた気分のようだ。
ヨル爺と二人して、出発の準備に取りかかる為に持ち場に戻る事にして、ラリーだけが持ち場に戻る前にウギとヴァルを迎えに出かけた。
「さてと、ウギは喜んでくれるかな?」
温泉宿の庭先では到着時の時のようにリッチモンド家のメイドさんやら使用人の方達がてきぱきと出発の準備をしている。護衛師団のメンバーも今日は魔獣が俳諧している場所を通り抜ける事から、昨日より念を入れて武具の準備をしていたようだ。そんな中で、ひときわ男どもが集まり騒いでいる場所があった事にラリーは気付いた。無論と言うかお決まりのように、その中にはガアーリとフランの姿もあった。
「んっ、何かあったのかな? なんだこの人垣は?」
ラリーは何の気なしにその人垣の方へと足を向けた。
「よう、ガアーリにフラン、おはよう」
先に人垣の集団に紛れ込んでいた二人に声をかける。
――しかし此奴ら昨日は勝手に人の持ち物に手をかけて。
ラリーは記憶の端にあった出来事で憤慨した心を思い出してしまったが、それはサギが奴らに既に罰を与えていたので今は不問に付す事にした。しかも、奴らの髪型はまだ崩れきったアフロヘアーもどきのままだったし……と、ラリーは思わず笑いが込み上げてくるのを懸命に押さえていた。
「あっ……、ラリー……おっ……はよう……ぅ」
ふたり共、跋の悪そうな表情をしていた。まあ、少しは反省はしているようにも思える。
「……昨日は……悪かったよ、ラリー」
素直にフランが謝ってきた。
――まあ、しょうがないから許す事としようか。
ラリーはそう思いフランに言葉を返す。
「まあ、いいさフラン。ふたり共、天罰は既に下っているようだしな。……それよりなんなんだ、この騒ぎは?」
ラリーの問いにふたり共、口では答えずに騒ぎの中心地を指でさした。
そこには、庭先の大きな石の上に座っている銀髪ショートカットの美少女と彼女を守るかのように周囲に凄烈なオーラを解き放つ、銀白色の毛並みの大型の狼獣がいたのであった。
「あ――――っ!」
ラリーは思わず大声で叫んでいた。その声に驚いた人垣の目線が一気にラリーの方を向く。と同時に皆の注目の的の御仁達もラリーを見つけた。
――しまった。いや~っ、まずったわ!
「い――――たっ! やっと見つけたぞ、おっそいのじゃ!」
銀髪ショートカットの美少女はそう叫ぶと石の上から飛び降り一目散でラリーの方へ飛ぶように駆け始めた。そして、彼女の後を追うように狼獣が一緒に駆けてくるものだから人垣がまるで波が引くようにラリーと彼女の間に一筋の道を空け始めた。
ラリーの前まで来た彼女はこれまた昨晩のように満面の笑顔を携えてラリーに挨拶をしてくる。
「おはようじゃ、ラリー」
「ああっ……おはようさん、ウギ」
ウギの満面の笑顔とは対照的にラリーはまったく締まらない顔で挨拶を返す事になっていた。と、ラリー自身もそう自覚していたようだ。
次回【29-1話:ウギとサギの初顔合わせでした!】を掲載します




