【24-2話改稿:妾はウギ・シャットンなるぞ!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
「ヴァルっ! 止めっ! 馬鹿者がっ!」
ガルムの主と思われる彼女が蒼白の表情でそう叫んでいた。
次の瞬間、ガルムはニヤッとした笑いを含んだ顔つきで(たぶんそうだと思う、なにせ相手は狼獣だ表情が正確に読めるわけが無い)大きな口を開けその長い舌でペロリとラリーの顔をひと舐めしてきたのだった。
「うわぁ~っ」
ついぞ、ラリーは大声で悲鳴を上げてしまっていた。
それを見たガルムはしてやったりと思ったのであろう、ふんっと満足げに鼻を鳴らしてラリーを解放してくれた。
彼女の隣に戻ったガルムはラリーに目配せをしながら再び、魔力念波を送ってきた。
――あとでゆっくり話しましょうね、坊や……ところで、どっかで会った事あったかしら?
ガルム……ぁいや、お姉様にとってラリーは……坊や……だそうだ。
――どっかで会った? 魔力念波持ちのガルムになんぞ会った事は無いぞ。
ラリーはこれから起きるガルムとの新たな遣り取りを考えると既に嫌気を通り越して寒気が背筋を走ったのを感じていた。
。
そんなこんなで、ラリーとガルムの騒動の間、蒼白になって立ち尽くしていた彼女は、落ちついたラリーらの様子を見て安堵したのか、大きく溜息を付いたあとに小声で呟く。
「お前らは何なん~じゃ」
出だしで躓いてしまったが、彼女等とまだ挨拶もしていなかったことに今更ながら気が付くラリーだった。この場は彼から挨拶するのが礼儀であろうと思い直す。
「唐突に現れて悪かったと思う、自分はこの先の温泉宿に止まっているリッチモンド伯爵の護衛師団の者である。焚き火の明かりが見えたので用心の為に見回りに来させて貰った。疑って悪かった、野宿中の冒険者殿か? 二~三確認の為、質問させて貰っても宜しいかな? お嬢さん!」
「……?」
――んっ? あれっ?
彼女が気を悪くしたのかと思ったが、ラリーは大事な一言を忘れていたのに気が付いた、重ね重ねの失態だったようだ。
「……再三再四、失礼を致した。名乗るのが遅れました、自分の名はラリー・M・ウッドと申す、ベッレルモ公国の宮廷騎士団の魔法剣士である」
「……妾はウギ・シャットンじゃ……ラリーとか申したの、ここら辺りでは野宿も貴族の許可が必要なのかぁのう? 世知辛い場所じゃのぅ」
「あぁぅ~そう言うわけでは無い、勘違いさせてしまったようで悪かった。ここら辺りでどう野宿しようが其れは自由だ。本当に済まなかった、この通り詫びる!」
ラリーはウギ・シャットン嬢に深々と頭を下げて謝った。
そんなラリーに対してウギはと言えば、彼の謝意を表する行為には目もくれず、焚き火で焼いていた肉の串焼きをひとつ右手で持つと其れをラリーに突き出してきた。
「お主、食え! 腹が減っておるじゃろうて、まずは食いながら話そうぞ? それとも何か妾の肉じゃ食えぬと申すか? んっ!」
唐突にラリーに串焼きを手渡したかと思うと逆の左手で今度はガルムの目の前に串焼きを置いた。
「……ヴァルっ、これはお前の分じゃ、ほれっ!」
――おい、その言葉遣い何か違和感満載なんだが。
とラリーは思ったが……言われる通り腹が空いていたのは確かだったようだ。
ラリーは取り敢えず食材の命をいただくことへの感謝の念を抱きながらも、有り難く串焼きに齧り付いた、これがまた格別に旨かった。
「隣に座ってもいいかな?」
串焼きに齧り付きながらラリーはウギに聞いた。
彼女は何も応えなかったが、その代わりガルムが場所を譲ってくれたのでその場の雰囲気がイエスの返答と捉えてラリーはウギの隣に腰を降ろした。
「ありがとう、この肉は旨いな、丁度腹も空いてきたところだった。君は……いや、ウギさんは何故、此処に? 女性のひとり身では危なかろうに」
ラリーは素直な思いで聞いてみた。
「別に危ないことは無いじゃろうて、ヴァルがおる。誰も恐れて近寄ってすらこぬぞ、お主ぐらいじゃぞ、何事も無かったかのように普通に近寄ってきた者は! しかも初対面でヴァルがお主の顔を舐めるまで懐くとはのぉ。……逆に聞くぞ? 怖くは無かったのか、お主は?」
――まあ、確かにそうだったな。大狼ガルムを目の前にして普通なら縮み上がっているところだな、ここは!
ラリーはウギの的を得た疑問に内心慌てながらも返答の仕方を選んでいた。
「んっ? そうだな、怖がった方が良かったか? 何なら今から怯えて逃げだそうか」
そんな軽口を叩きながらラリーは彼女の方を見た。若干薄汚れてはいるが、ショートカットの銀髪が夜風に靡き琥珀色の瞳が綺麗な娘だった。その琥珀色の瞳がきらきらと光を放ちながらラリーをまるで珍しいものでも見つけたかのように輝いていた。
――なんかウギさんの眼がサギさんの時のように妖艶な小悪魔状態になりつつあるのですが、俺の気のせいか?
「お主、かわった奴よのう、妾は気に入ったぞ! ラリーとか申したのもっと近う寄れ! なんなら妾を抱いても良いぞ、未だ殿方を知らぬ躰であるが優しくしてたもれ。どうじゃ!」
「……なんでやねん!」
ラリーは思わず右手の手の甲で彼女の胸元に突っ込みを入れてしまって、はたと気づいた、ラリーの手の甲がしっかりと彼女の胸の上を押していたのだ……『ぷにゅっつ』とでも擬音が聞こえてきそうな柔らかさを手の甲に感じている。
――えっ? 何っ? この娘下着は着けていないのか? んっ! 今、何を考えているんだ。そんなことでは無いだろう、今は! えっとぅ、彼女のエロ台詞に思わず突っ込んだはよいが彼女の左肩を叩いたはずだ、なのに何故俺の手の甲は彼女の胸に触れているんだ? これは流石に拙いだろう。でも、何でだ? 目測を誤る距離では無かろうに。
色々な思いがラリーの頭の中を駆け巡ってひとりパニクっていると、当該の彼女が和やかな笑顔でラリーの顔を覗き込んできた。
次回【24-3話:妾はウギ・シャットンなるぞ!】を掲載します




