【24-1話改稿:妾はウギ・シャットンなるぞ!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
ラリーはヨル爺の話の中で数値とアルファベットだけがやけに脳裏にこびり付いて離れ無くなっていたようだった。
――88の59の86、しかもFカップね、どんな姫様なんだろう?
彼も人並みに年頃の健康的な男の子である。
「んっ……サギさんのスリーサイズって幾つなんだろう?」
ラリーは決して貴女には聞けない疑問の呪縛に一瞬、囚われるが……。大きく頭を振って邪念を追い出すことにした。兎に角、馬鹿の考え休むに似たりでさっさと今やるべき事への行動に移ることにする。
ヨル爺にはここの護衛場所の警護を任せて、ラリーはひとりその場を後にして気になる北東の方角を目指して移動を始める。コテージの護衛任務で最初の時に広域に掛けた魔力探知で引っかかった件が何にかしら胸騒ぎを感じさせてどうしても、確認せずにはいられなくなったのであった。
既にそこはコテージから結構な距離が離れいた。それだけ離れていればいずれにせよ、警備領域外としても問題無いはずであるが、しかしながら念には念をとも言うでは無いかとラリーは自分自身に言い聞かせていた。今回の行動の正当性を自らに問い聞かせながら、まあ自分への言い訳でしか無いのだが……そうこうしているうちに彼の目標であるその地へと辿り着いたのであった。
ラリーの眼には遠くの方で微かに焚き火のあかりが見えてきていた。
――魔力気はひとつ……んっ、ふたつか? えっ! 人間じゃない『気』が混じっている、しかも魔力気を隠匿してるなこれは!
ラリーは念のために警戒度を上げて自分の魔力気にも隠匿魔術をかけながら目標にゆっくりと近づくことにした。
焚き火のあかりが間近になってうっすらと人影が見えるようになってきたところで気が付いた。
「んっ! 女の娘か? それとあれは大狼ガルムか?」
思いがけない光景に思わず声が出てしまっていた。咄嗟に手を当てて口を塞いだが……向こうの様子は何とか変わらずで、彼の声が聞こえた様では無くホッと胸をなで下ろしていた。
大型の狼獣であれば通常は草食野獣のグルムを家畜化した形でペットとして貴族達が飼っている場合がある。グルムであれば所詮、野獣であり魔力を纏うことは無い。目の前の狼獣は隠匿してはいるが漏れ出る魔力気はラリーには誤魔化しきれるものでは無い。あいつは魔獣の中でも聖魔獣と呼ばれる、大狼ガルムだ! しかも、この個体はとてつもなく大きい。
――俺の二回り以上のでかさだな、こりゃたまげた!
ラリーは心の中で思わず唸る、しかも大狼の隣にちょこんと座っているからまたやけに女の娘が小さく見える。そして身体全体薄汚れていて折角の可愛らしさが半減していたようだ。女の娘の身なりは……また、随分と布地の部分が少ない服装であった、革生地のタンクトップとホットパンツ風の装備礼装を纏って、足元は革のロングブーツで固めている。腰には長剣を帯剣していることから剣士であろう。
「しかし、あの娘が大狼ガルムを連れているのか!?」
焚き火の明かりに照らされて銀白色に輝く艶やかな毛並みを持つ隣のガルムとはあまりにも対照的だった、そんな心の思いからかラリーは思わず素で呟いてしまっていた。
流石に些細とは言え二度の彼の失敗を見逃すガルムでは無かったようだ。先程まで焚き火の前でじっと目を閉じて伏せていたが、カッと目を見開き素早く立ち上がると身を翻して女の娘とラリーの間に彼女を守るかのように立ちはだかった。
「グルッルルッー」
ガルムがラリーに向かって牽制の唸り声を上げる。地の底から沸き上がるような咆哮にラリーは思わず身を竦ませた。
ラリー自身、今は単に調べに来ただけであって戦いに来たわけでは無い。即座に両手を挙げて敵対の意思がないことを告げる、まあ魔獣ガルムに其れが通じるかは甚だ疑問ではあったがガルムの主であろう彼女には通じるである事を祈っていた。
「んっ……! ヴァルっ! 止めるのじゃ!」
ラリーの思いは何とか通じたようである。安堵の吐息を吐きながら思わず天を仰ぐ彼だった。
その時だ、何処からかラリーの脳裏に直接、響く声のようなものが聞こえたのは……正確には肉声では無いが。
――お嬢はいっつも甘いんだから……っ、もう!
思わずラリーはキョロキョロと周りを見渡す、もちろん彼と彼女の他には誰も居ない……はずだ、本当に!
真夜中だから闇に紛れて姿を隠している輩も居るかもと目をこらして辺りをもう一度見渡す。
やはり誰も居ない、此処に居るのは確かにラリーと彼女の二人だけのはずだった。
と、ラリーと目が合う生き物の気配があった。……ガルムである。
大狼ガルムの奴がラリーの顔をじーっと見ている、強いて言えばきょとんとした表情とも言えなくも無い、まあ狼獣の表情をきっちり読み抜くほど動物使いの能力がラリーに備わっているとは思えないが、此処でそんなことを思案しても仕方の無いことと思える。
ただ何となくだが、この狼獣が発した言葉だとしたら実に壺に収まってしまうことは確かだ。
思わずラリーはガルムに向かって聞いてしまった。
「……お前か? さっきの呟きは? お前なのか?」
その瞬間ガルムはぷぃっとラリーからの視線を避けるように顔を逸らした。
――チッ!
――まただ、今度は舌打ちの音だぁ~と、こら~っ、お前……なぁ~! さっきは不意打ちだったため空耳かとも思ったが今回ははっきり聞いたぞ。確信した、奴だ、ガルムだ! 此奴がぁ……魔力念波だとぅ?
ジトッ眼でガルムの奴を睨み付ける。奴っていってるが此奴、雄なのか雌なのか? ふっと我に返って思案してしまった。
――失礼ね! 年頃の娘ですわよ。
ガルムが魔力念波でラリーに応えたかと思うと間髪入れずに飛びかかってきた。流石に体格差では比較にならない程の力だ、ガルムに押し倒されその前足で両腕を押さえられたラリーはもう為す術も無かった。
次回【24-2話:妾はウギ・シャットンなるぞ!】を掲載します




