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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
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【23話改稿:夜間の代理警護を引き受けました!】

前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。

 コテージの庭先で迎えた、サギとの思い出深いひとときもあっという間に過ぎ去って、名残り惜しそうに去って行くサギの後ろ姿を笑顔で見送った後、ラリーはひとりその場から離れて出口に向かった。そこで警護の護衛騎士団メンバーから声を掛けられたのだった。

「君は、フラン君、ガアーリ君と同室だったよね、もしかしてこれから部屋に戻るのかい?」

「ええ、そうですけど、其れが何か?」

「いやねぇ、彼等と護衛勤務の交代の時間なんだが、一向に現れないものでね? 呼びつけに行くにも持ち場を無人にするわけにはいかないから困っていたんだ。申し訳ないが彼等の呼び出しを頼まれてくれるかね」

「……ぁあ!」


 ラリーの脳裏に相部屋の二人、そうフランとガアーリが床に白目を剝いたまま仰向けに倒れていた姿が蘇った。あの状態なら呼びつけに行っても無駄であると、即座に結論に至った。

 ――これは二人とも欠勤だな。んっ……なんて言っておこう?

 ラリーはちょっと思案してから返答したのだった。


「あっと、彼等二人なら食あたりか何かで、部屋で唸ってますよ、多分動けないんじゃ無いかな?」

 彼等が動けない事は嘘では無い。まあ、動けないと言うよりも動かなくなっているが正しいが……。

「えっ、そうなのか? そのような報告は聞いてはいなかったが? それは困った、代替え要員を至急調整しないと……とは言え、どうしたものか?」

 ――やっぱり、困りますよね、其れはそうだ。ひと肌脱いであげますか、ここは。

 そしてラリーはさっきのサギとの思い出が重すぎて眠れそうも無い自分の精神状態をしっかり自覚していた事から、自らを代替え要員として立候補する事に決めた。


「もし宜しければ代わりに自分が交代しましょう。ただ自分だけなので、もう一人調整してきてもらえますか? 其れまでは自分ひとりで大丈夫でしょう。特に今夜は月夜で明るいし」

「えっ、いいのか? 君は?」

「相部屋の二人は聖都でも腐れ縁でね、汚いケツですが拭いておきますよ!」

「其れは、助かる。じゃ頼まれてくれるかね。あと一人分は今から調整してくる」

 そう言い残して護衛騎士の彼は本部がある宿舎本館の方へと駆けていった。

「今宵は月でも友にして思い出に浸るとするか……」

 まあ、これはこれでサギを護衛するのだと思えばラリーには何の苦も湧いては来ないのであろう。


 暫く一人っきりでの護衛任務にあたっていた。特になんと言うことも無い、出入りの人物の確認と定時の巡回だけであった。ただまあ巡回は持ち場に誰もいなくなるのは流石に拙いので、他の班の巡回が此方の持ち場まで足を延ばしてきた時に少しだけ替わって貰って軽く巡回を流した。勿論、魔力探知だけは念入りに広域に掛けて視てはいる。それでも取り立てて問題レベルには無かった。がしかし、かなり離れているところで、不明な魔力がひとつだけ引っかかった。攻撃性は無いようなので問題は無いとラリーは判断した。が、ちょっと気にはなっていたのだった。


 そうこうしてると護衛代理として、もうひとりの男が送り込まれてきた。なんとまあ人手不足も此処まで来たかと……老騎士のお爺さんである。

じじいまでこき使うパーティーじゃのう、全く年寄りには夜は厳しゅうてかなわんのぉ」

「おおっ、そこの若いのぬしが相方かの、儂はヨルガルマと申す年寄りじゃ、宜しゅうの」

「此方こそ、宜しくお願いいたします。ラリーと言います」

「ラリー君か、良い名じゃの、宜しゅうの」

 ――元剣士ぽいなぁ、さすがに身体は鍛えているようだが……もしもの時はこっちで何とかするしか無いか。

 ラリーも一抹の不安を覚えたが贅沢は言えないと其処はグッと言葉を胸に押し込んで置いた。


 それでも、二人と言うことは物理的には凄く助かることは確かだった。ヨルガルマ爺さん(ヨル爺とその後、呼び合うことになったが)の昔話を聞きながら、ゆったりと夜が更けていった。


 そうそう出来事と言えば、リッチモンド伯爵が真夜中に正々堂々とサギの所へ夜這いに来た事だった。まあ、護衛騎士団メンバーは伯爵家からの直接命令を受ける立場でも無いので入室許可はおりず入り口で擦った揉んだが在ったが丁重にお帰り頂く。勿論、その対応をしたのはラリーだが、ついでに伯爵様にはちょっとした呪術を掛けさして貰ったようだ。ラリー曰く。

 ――あまりにも『サギ』を連れてこいってうるさいし、ちょっとむかついたからね。伯爵様がサギさんの事を考えると奥方様に申し訳なくなって奥方様に謝らずにはいられなくなる呪術をちょっとね……しかし、俺はなんであんなにむかついたんだろう?

 だそうだが、ラリーはやはり純粋に唐変木だったようだ。


 サギの小部屋の窓の明かりも消えた頃、人の往来もほぼ無くなり、ラリーはさらにヨル爺の身の上話を聞くことになった。

 ヨル爺は元男爵家のお抱え剣士であったそうだ。剣豪で名を馳せた一族であったようだが魔術の台頭で没落の憂き目に遭ったらしい。

 まあ、魔術師に対して恨みは無さそうだったがラリーが魔法剣士と言ったら凄く羨ましそうだった。なんでも、男爵家一族の血筋には魔力系統の影響がなかなか出てこなかったらしく、没落間際に末っ子の女の子が魔力遺伝をやっと発現したとの事だった。でも既に時遅しだったらしい。

 そのが男爵家の跡取りとなる予定の前年、お家に世継ぎ騒動が勃発、結局一族は離散する羽目になったとのことだ。

 ヨル爺はそのの剣術指南役兼教育係だった為、そののその後の行く末だけが心残りだと……そのの消息は途絶えて久しいと涙ながらに語っていた。そのヨル爺の見事な語り口に思わずラリーも、もらい泣きしてしまっていた。

「姫様が生きておられれば、ラリー君と良い年合いだのにのぉ、儂が言うのも何じゃが、実に可愛いでのぅ。でものぅ、顔に似合わず、グラマラスなじゃった、確か儂が覚えている時点で88の59の86じゃったぞ、しかもFカップじゃぞ! どうじゃ、おぬし嫁に!」

 ――おいおい、爺さんなんだその個人情報、年甲斐も無く詳しすぎるだろうが……しかもグラビアアイドルかいって、その娘! んっ? グラビアアイドルって何だけ? 

 ラリーの影突っ込みもなんのその、ヨル爺の独壇場は夜を徹してまだまだ続いていた。


 宵の口ラリーはいい加減にヨル爺の世迷い言に付き合うのにも疲れてきたようで、ここは一先ず退散することにしたらしい。

「ヨル爺、俺、ちょっと巡回してくるわ、気になることも在るから」

「おおっ、そうかいのぉ、此から姫様のお色気話になるのじゃが……いいところで終わりかのぅ?」

 ――いやいや、ヨル爺、既にその話は三回目だっていうの。姫様がお風呂上がりにすっぽんぽんで逃げ回ったのを追っかけ回したって話しだろう。だって三歳の時のことで色っぽい話しってな~ぁ。俺、無理!

 話しが続くのを避けるようにラリーはその場から退散がてらに巡回に出掛ける。まあ確かに、ヨル爺の与太話から逃げ出したいのもラリーの正直な気持ちだったが、最初に魔力探知で引っかかった件が何か気になっていた。あれから魔力気は全く動く気配が無かったのだ。

次回【24話:妾はウギ・シャットンなるぞ!】を掲載します

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