【22-3話改稿:サギさん日記をお返しします!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
ラリーは後頭部のやけに暖かくて柔らかな何とも言われぬ感触と鼻腔を擽る甘い薫りの刺激の中でゆっくりと目が覚めた、暫くは彼自身、自分の置かれている状況が掴めず、しなやかでかつ柔らかな何とも形容し難い心地よい刺激に酔いしれていたが、はたと気がついて全身から冷や汗が吹き出すのを覚え始めた、なんとサギの膝枕の中にラリーはいたのだった。
コテージの庭にあるベンチに仰向けの状態で寝かせられて、しかも彼女の膝枕でぐっすりと睡っていたらしい。
勿論、極上の感触をこのままずっと味わっていたい気持ちもあったが流石にそれは咎めた。それと、彼女もこの状態でうつらうつらと舟を漕ぎながら寝入っていたようで、前屈みになる姿勢は、はからずも俺の鼻先に彼女のその豊満な双峰を極限まで近づける事となっていた。今の彼女の寝具の装いは究極の薄着の状態である。このままではラリーの理性の箍も呆気なく崩壊するのは自然の摂理と思えた。ので、もう起き上がるしか無かったのだが。そしてサギの魅力に勝る者は無く勿論、彼の下半身だけは既にささっと主の意思とは別に立派に起き上がっていたようだったが……無論、寝起きの生理現象で有り邪念の産物では無い……だろう……多分……と、彼の心の中で静かな葛藤があったことだけはサギには内緒にしておいてあげよう。
ラリーはサギを起こさないようにそっと自分の頭を動かし始めた、本当にそっとである。でも、ラリーの究極の気遣いも空しく敏感に彼女は反応してしまった。
「んっ! ……きゃっ!」
サギはラリーが目覚めたことに気づいて軽く身を起こそうとしたが不自然な姿勢で寝入っていたためか体が固まって自由がきかなかったようだった。その為、彼女は膝ごと上半身を起こしてしまった。もちろん、ラリーの頭を膝に乗せたままの姿勢で……。
グギッッ! 急激な頭の移動で彼の首筋が悲鳴を上げる。
「うっ……てっ痛っ!」
「あっ! ラリー様、ごめんなさ……えぇっ~っ! そんなぁ~っ! いやぁ~ん」
サギは身体の自由がやはりまだ利かないのか、もんどり打って後ろに倒れ込んだ、当然、俺を膝の上で抱えたまま……二人して縺れるようにベンチの上から落ちたのだった。
次の瞬間、ラリーはサギの上に覆い被さっていた。丁度、彼女の胸の谷間の中におもいっきり顔を埋めるかたちでだ。で、羨ましいというか災難というか、このふたりの運命はそんな事ばっかりのような気がする。当のラリーも胸中、そう思っているだろうが言葉には出来ないだろう。
ラリーは急ぎ身を起こして彼女の胸元から顔を離そうとしたがそれは叶わなかった。
サギが……彼女が両腕でラリーの頭をしっかりと抱きしめたからだ、まるでその胸元に彼を抱き抱え込むかのように……。
彼女の柔肌がラリーの頬に身悶える様な色香を伝えてくる。だが、このまま溺れているわけにはいかないと己の心を押し殺してラリーはサギに話しかけた。
「あっ……サギさん、ご……ごめん!」
「…………!」
サギは、その胸元にラリーを抱き抱え込んだまま押し黙っている。彼はもう一度言う。
「ごめ……っ……」と言い終わる前に彼女が言葉を遮った!
「謝らないで、お願い! 私が好きで貴方様を抱き締めているんです、謝られては困ります! ……それとも私のことをお嫌いでしょうか? ……ラリー様!」
「……ぁ、いや、そんなことは……」
さらに、彼女の言葉が紡がれる。
「お願い……します」
「……わかった! あやまらない……それに、サギさんのことは……自分も好きです!」
彼女の心臓の鼓動が一気に早くなっていくのが感じ取れた、ラリーの頬が彼女の柔肌を通じてその体温の高まりと共に……彼女の心の内を伝えていた。
「ほ……本当ですか? ……ラリー様!」
サギが恐る恐る聞いてきた。
――俺の言葉には本気、本音、一遍たりとも淀みも無い!
そう思いラリーはその言葉をそのまま吐き出した。
「サギさんに、嘘は付けませんよ。……でも……!」
「でも? ……っ?」
サギの言葉が一瞬、不安そうに言い淀んだ。まあ、彼女の不安要素とは全く違うお願いを彼はこれからするのだが、これも、男としては本音では無いが実際のところ、本当の気持ちとしては真逆だったろうと思うのだか。
「俺も、男としてはずっとこのままでいたいところです。が、もう息が…………っく苦しい~んっ」
「あぁっ……御免なさい! 気が付きませんでした」
サギは、はたと気づいて抱き締めていた腕を緩めてラリーを急ぎ解放した。名残惜しさは尽きないがここで本当に息絶えたら洒落にならないとラリーは思っていたことだろう。
「はっ~ふう~っ」
おもいっきり深呼吸すると目の前の闇が消え去り視野がはっきりしてきた。そんなラリーの様子を見てサギがもう一度謝ってきた。
「本当に、御免なさい!」
一息、息を整えてからラリーは彼女に応える。
「いやいや、サギさん謝らないで下さい。それじゃ男として立つ瀬が無いですよ。傍目には良いおもいをさせて貰ったわけですから……」
彼女に向かってペロッと舌を出してそう軽口を叩くラリーだった。
サギはちょっと気分を害したのか、じと~っとした目でラリーの事を睨んできた。
「……ラリー様って……けっこう……むっつりス・ケ・ベなんですね!」
「……まあ、俺も一応、男ですから……サギさんほど美しくて妖艶な女性を目の前にしては……」
とラリーがそんな心の内を言い終わらないうちに、サギは再び彼の首筋に手を回して抱きついてきた。ラリーの台詞に気分を良くしたのかにこやかに微笑みながら、耳元に唇を寄せてそっと呟く。
「……そんなラリー様もかわいいですこと!」
そして、離れ際にラリーの頬に優しいキスの感触をおいていったのだった。
――今日は良い一日になったなぁ~。
蓬けた顔が締まらないラリーだったがそんな胸中、彼の想いは闇夜に吸い込まれていった。
「ラリー様、そう言えば何かご用事があったのでは?」
二人並んでベンチに腰掛けてお互いに今日起こったことを取り留めも無く話し込んでいると、突然、思い出したかのようにサギがラリーに聞いてきた。
「あっ! そうだった! 忘れるとこでした、危ない危ない~っ。はいっ、これっ! サギさんのですよね! 先程、廊下でぶつかった時に落とされましたよ!」
そう言って一冊の日記を彼はサギに渡した。
「うあぁっ! これ私の日記っ! 探していたんです! さっきも心配で眠れなくて……それでつい外に出ていたんですのよ! ありがとう御座います。ラリー様」
と受け取って直ぐに彼女は冊子の異変に気づいたらしい。疑いの眼でラリーのことを睨んできた!
――きたっ!
さっきの電光石火の平手打ちの件もあり、即座にラリーは身構える。
と、サギは、『ふっ……ぅ!』大きく溜息をつくと今日二度目のじと~っ目を彼に投げてきた。
「もしやと思いますがこの日記をラリー様? 盗み見されました?」
ブルブルと千切れんばかりにラリーは首を振って、きっちり否定をするのだった。
そうして本当のことは話しておかないと失礼であると、ラリーの相部屋のフランとガアーリの二人の仕出かした事の顛末を説明し始めた。
「そうでしたのですね、であれば冊子に施した呪術の発症が二回分在ったのも合点がいきますわ。でも、そのお二方はその後どう為されたのですか?」
「親しき仲にも礼儀ありって言うじゃ無いですか、自業自得の奴らには慈悲の心も湧かない。そのまま捨て置きました!」
「あらっまあ。ラリー様って、結構古風と言うか……そ、そうなんですか?」
ビックリした顔つきでサギがラリーの顔を見つめてきた。
「そうですか? 自分的には当たり前だと思いますが? 反倫理的行為はニネット爺さんやセット婆さんにばれたら、即~っ折檻でしたよ……俺の幼い頃ならば」
「うふっ、やっぱり、ラリー様って面白い方ですこと、その英雄様達のところでお過ごしなられたのですか? 幼なじみの方とかは? 例えば女の子のお友達とか……?」
「ずっと一人でしたから……爺さんと婆さんしか居ませんでしたし……残りは修行で特に……無いですね」
何故だかサギ思うところが在るのか、満面の笑みで納得顔をしていた。其れとは別にラリーとしては其れが普通だよねと信じ込んでいたようだった。
「わかりましたわ、ラリー様を信じますわ!」
サギさんは、すごい和やかな笑顔になって、ラリーに微笑み返してきた。
その後も、暫くそうやってお互いの身の上話に花を咲かせてから宵も押し迫ってきたので、後ろ髪を引かれる思いだったがその場で彼女とお別れをした。最後、別れ際にサギは二度目のキスをラリーの頬にしてくれたのは余談である。
――あっ、伯爵夫人候補になった件どうするんだろう、サギさん? 聞きそびれてしまったかな? まあ、その件はほとぼりが冷めてから聞くことにしよう、あんな平手打ちは二度は貰いたくは無いからな。
折角、別れ際にサギから熱い抱擁と柔らかな頬キスを頂いたというのに、まったくトンチンカンな事を思っているラリーの事は暫く放っておくことにしよう。
次回【23話:夜間の代理警護を引き受けました!】を掲載予定です




