【22-2話改稿:サギさん日記をお返しします!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
そんな話しで盛り上がった温泉の外湯の座談会、いい加減に二人とも長湯で茹だってきた。そろそろ、湯舟から上がる頃合いである。
最後に気になっていた事をラリーは聖騎士長に聞いてみることにした。
「サギーナさんの事なんですけど、お尋ねしても宜しいですか?」
「何だね? 改まった物言いで? 夜這いに行くために部屋割りの確認かね? 淑女の部屋割り情報など本来なら、最重要機密事項であって他言無用の案件なのだが……ラリー君のたっての望みとあらば致し方ない(まあ、ニコラス師団長がイカルガ伯爵から今回の旅程で是非とも二人の中の取り持ちを宜しくと頼まれてもいることであるから……)、貴殿にだけ特別にお教えいたそう。しかも、今回はあのリッチモンド伯爵が年甲斐も無く横やりを入れてきておるからの、全くあのエロ伯爵には困ったものよ。で、サギーナ嬢の部屋は□□□□□□□である! あと、サギーナ嬢の部屋へ行く場合はニコラス師団長からの伝言で、明日の朝、出発前に師団長の所へ来て欲しい。……と伝えると良いぞ話しは通してある。では、ご武運を祈っておるぞ!」
「……いや、その~っ?」
自分の言いたいことだけ告げると聖騎士長は湯舟から颯爽と立ち上がり温泉から去って行った。
「はぁ……っ!」
ラリーの深いため息は湯気と共に夕闇迫る温泉宿の空に吸い込まれていった。
取り敢えずラリーも長湯になってのぼせてきたので早々に上がることにした。外湯から内湯をへて脱衣所へと向かう。湯上がりの火照った身体から汗がしたたり落ちて、とてもじゃないがまだ服を着る気にはなれ無かった。脱衣所の長椅子に腰をかけてタオルで汗を拭きながらサギの落とし物である彼女の日記の返却方法を思案していた。
「まあ、聖騎士長のご厚意に甘えて、正攻法で行くしか無いな?」
と、ラリーは決心が付いたところで服装を整えてから日記を取りに部屋へと戻ることにした。
部屋のドアを開けて壮絶な事件現場をラリーは目撃することになった。
「なっ~に~ぃ!」
部屋の中で、相部屋の二人……そう、フランとガアーリが床に仰向けに倒れていた、二人とも白目を剥いて!
二人の様子はまるで雷の直撃を受けたかのように上半身の服は所々焦げたり、穴が開いていて見た目にもぼろぼろだった。髪の毛なんかちりちりになってアフロヘアーの髪型に変わっている。
そして、フランの手には……身に覚えのある冊子が握られているのが……見えた。
「お前ら! あっ! バ・カ・ヤロウ!」
もう、見るからに此処で起こったことは歴然としていた。
自業自得の奴らには慈悲の心も湧いてこかった。此奴らはこのまま放っておこう! フランの手から冊子をもぎ取るとラリーは急ぎ部屋を後にし、そのままサギの部屋へと向かったのだった。
サギの部屋は離れのコテージだった。リアーナ嬢の大部屋を中心に周りに小部屋が配置された形をしている。その小部屋のひとつがサギに割り当てられた部屋になっていた。
無論コテージの周りには護衛騎士団のメンバーが常時警護をしていたので、好き勝手には入れない。ラリーは聖騎士長の計らいに感謝し、護衛の騎士にニコラス師団長からの伝言をサギに伝えるべくここに来た旨を伝えた。護衛の騎士の了承を取り付け、コテージ側の庭の中へと足を踏み入れると何故か部屋の外のその場に彼女……サギがいた。
「サギさん……!」
夕闇の帳の中、月の光を浴びて地表に降り立った聖女の化身のような彼女がいた。絵にも描けない美しさとはこのような絵柄なんだろうなあとラリーは何の気なしにそう思っていた。そして溜息とも付かない感慨余韻が残る呼びかけを発していた。其れに呼応するようにサギがラリーの方に振り返った。そんなサギの瞳に見つめられてラリーはハッと我に返った。
「あっ! ラリー様? どうして此処へ? 如何為されたのですか?」
「月の女神が舞い降りてきたのかと思っておりましたが、やはりサギさんでしたか。こんな夜更けにお一人で? 宜しければ、ご一緒させて頂いても宜しいですか?」
今宵の月の淫力か? すらすらと歯の浮くような言霊が口を衝いて出てくる自分に、ラリー自身どうしたんだ、俺! とでも思っていた。
「どこからとも無く嫋やかな風が吹くので、ついつられて舞い出てしまいました、寝具の装いのままなのであまり見ないで頂けますか。」
確かに、彼女の服装は薄手の透き通るような衣を纏っただけで、月の光が彼女を裸身の妖精のように見せている。見ないでと言われてもつい見惚れてしまうラリーだった、確かに目のやり場に困って月の光と交えて赤面している彼の表情ももはや今宵の絵画の一部になりつつあった。
ラリー自身も己の頬が赤面して熱いのが手に取るようにわかるであろう。なるべく彼女を直視しないように目を逸らして話しを続けようとするがそれを彼女が許さない。見ないで下さいと言っていた言葉とは裏腹な仕草だった。ラリーの視線の先に回り込むようにして、サギは小悪魔のような微笑みを投げかけてくる。これでは、彼女から目を逸らす事なんてラリーは一瞬たりとも出来なかった。
「あら、ラリー様、お顔が赤いですよ。お酒でも嗜まれました? くすっ!」
――サギさん絶対わざとやってるな。くっそう!
ラリーはサギに弄ばれている感、満載のまま心の中でそう思っていた。
「サギさん、お願いですから、あまり虐めないでください。俺も男ですから! 理性の限界ですよ! 伯爵夫人候補の貴女に……」
その言葉に彼女の顔色が蒼白に変わっていくのがわかった。
「ラリー様、なぜ貴方がそれを……!」
サギさんが目を剥いてラリーを見た!
「サギさん、この話は皆、知っていますよ。伯爵様がサギさんに求婚をされたと! おめでとうございま……」
そんなラリーの言葉を最後まで言わせないように、彼女が言葉に被せてきた! そして彼女の目が青色から真紅へと変わり始めてきたのが手に取る様に分かった。
「ラリー様の馬鹿っ!」
「なぁっ! ……っサギさん!」
次の瞬間、サギさんの左の手のひらがラリーの右頬を強烈な勢いで打ち抜いていた! (サギさん、左利きだったんだっ)場違いで阿呆な呟きと共に、ラリーの意識は闇へと落ちた。
次回【22-3話:サギさん日記をお返しします!】を掲載予定です




