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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
29/187

【21-1話改稿:リッチモンド家の護衛任務で!】

前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。

 時は少し遡って、リッチモンド伯爵領地帰還護衛団の出発前に戻る。

 ラリーは先頭護衛で馬車の前にいた。まだ出発時間前だと言うので特にやることも無く、時間潰しに彼の配属小隊の聖騎士長を掴まえて、護衛メンバーのスキルの確認をしていた。聖騎士長を入れて騎士が三人、魔法剣士がひとり、魔術師がひとり……と言うことで思わずラリーは内心、ほぞをかんだ。

 ――えっ何かっ……魔術を使える者は二人だけか? 魔法剣士って言うのが俺のことだし!


 思わずラリーは自分たちが護衛するその赤い馬車を視た、二人分の魔力の『気』が感じ取れる。ひとつは『白気』だがまだ成り立てみたいで酷く不安定だった。残黒気も混じり合って白と言うよりもグレーぽくなっている。しかもこれは戦闘魔術者ではない、生活魔術者だと知感した。グレーに視えると言う理由に魔術習得履歴が歪でまずい状態とも思えた。多分、呪術系統の黒魔術からの『白気』上がりと予測していた。

 ――このままの状態は長く続かないぞ! 但し緊急性は無さそうだな。リッチモンド家の配下の魔術師にでも領地に着いたら伝えておくとするか?


 ラリーはひとまず、後回しでも問題無いとそう判断したようだった。 

 魔術は闘いだけに使われるものでは無く一般生活の中でこそ多種多様に使われている。医療や農業、水だって魔術で作り出せる、だからこそ魔術師はいずれでも重宝されるが皆が魔術師に成れるわけでは無い。

 魔力制御の能力は先天性だけに限られた人材となるが、ただひとつ呪術から能力を開花させる方法がある、それが呪いの系統の黒魔術上がりだ! これはリスクを多段に伴う事が多い、例えば生け贄を欲する場合はそれが無いと自らが呪いに侵される事になる、時には字の如く犯される女性呪術師の被害も聞く。

 馬車を覗き見た後、ラリーは何気なくひとり呟いた。

「あれじゃ、精神状態最悪だな! 始終周りに毒舌吐きまくっているな、これは! で……っ、もうひとりの気は『闘気』か! それも真紅の! サギさんのと色合いといい、強さといい、そっくりだな! これは! 中にいるのはサギさんか!?」

 次の瞬間ラリーは赤い馬車の車窓から、金髪碧眼の彼女が此方こちらを見ているのに気が付いた。お互いの目線が合ったので軽く会釈を交わす。がしかし、この小隊の護衛陣の戦力スキルを聞いていざという時に魔術師不足の実態ではサギの力にも頼らざる得ない状況を思い、少し憂鬱な気持ちになっていた。――多数の魔獣が相手だとこの布陣では、ちょっときついかもな。サギさんには済まないと思うが、『闘気』魔力気には本気で頼ることになりそうだ。


 ラリーがそんなことを考えていて、気持ちが暗くなって俯いてしまった。

 その結果そんなラリーの顔色を伺ってあらぬ想像で気を揉むサギの事は今は置いておこう。


 ――まあ、出るか出ないか分からない魔獣を今は気にするのは無しにしよう。


 ラリーは早々に考えるのを止めた。

 そんなことをしていると出発の時刻が来た。近衛師団長の号令でパーティー一行は出発と相成る。

 ラリーは馬車小隊の前衛を勤めながら、後ろの様子を伺うとする。ここの先暫くは殺気や敵意を感じる者は居ないようだった、今日の先行きは余り心配いらないかなと安直な思いが彼の脳裏を掠めた。まあ今日よりも明日の方が魔獣警戒区域に入るから危険と言えるだろう。

 ラリーとしては、今日はお気楽モードで過ごせれば良いけどなと不埒なことを思いつつも、周囲の警戒には気を抜かないようにう一度、彼自身の心に活を入れていたようだった。

 ――サギさんの手前、下手な真似は見せられないからな。


 ラリーも好きな子には良いとこ見せの可愛い男の子のようであった。


 一行は四台の応接室馬車と六台の荷馬車、四名の貴族と二十人の護衛人、そして十名の使用人という一大行列であった。其れがぞろぞろと街道を練り歩くわけだから周りから見ればそれなりのパフォーマンス集団に見えることであろう。物珍しさも加わり街道沿いが人だかりで埋め尽くされていた、馬車の速度に合わせて子供達もはしゃぎながら追いかけてくる様子が見られる。領主貴族にとってもおのれの存在を知らしめる絶好の機会となるので、領主としての器がまさに試される時であると同時に貴族らしさの評価にも繋がる一大イベントであった。

 このリッチモンド伯爵家は自領民に受け入れられているようだ。人だかりを追い払いもせず、車窓から手まで振って皆の声援にわざわざ応えている、道沿いにはどんどん人が集まってくるし、リッチモンド家を称える歓声も大きくなってきていた。

 ラリーが思ったのは前回、護衛した貴族との違いである、あれは酷かったらしい。


 ――前回の時は酷かったな。貴族のめいで人だかりを追い払ったが領民のそれは歓声では無く罵声と怒号だったし、しまいには領主自ら剣を抜いてしまって、民衆を斬り始めた。其れは流石に酷いので、聖騎士団長が領主をいさめていたっけな。そんな貴族領だと暴徒の争いや盗賊、山賊やらが我が物顔で徘徊してるから、魔獣よりもたちが悪いね、なまじ言葉が通じるだけに! まあ、こう言うことは護衛団の聖騎士団長から公国の方へ正式に打ち上げられるから、そのうち、あの貴族には何らかのお咎めが下るであろうし。俺もあいつの護衛だけは二度と引き受けないな!  決して!


 お気軽モードの今のラリーだったが、そんな事を頭の片隅で思いだしながらの参加でも十分役目を果たしていたようだった。


 沿道の人だかりもまばらになってきて、そろそろ街を抜けて郊外へと続く街道に出たようだった、それでも街道筋はしっかり整備されており、リッチモンド家の大型馬車でも十分通れるような道幅があった。そんな中ラリーは昔のことを思いだしていた。

 ――毎回このような貴族の大移動が街に活気を落とし豊かな生活の循環をもたらすんだと、よくニネット爺さんが言ってたっけな、幼かった俺には全然わからんかったし、しかもだよ、俺は修行とかの中で毎日が傷害致死一歩手前みたいな状況だったからね、そんなことなんか意にも介していなかったしな。まあ、ほんのまれにだが、爺さんが手加減の度合いを間違えて、俺が本当に死にかかるくらいの手前で意識を失って倒れた後、暫くして気がつくと爺さんも血みどろで座り込んでいて、俺をまるで魔王を見るような目で見つめていたことがあったけな! しかも、その後、爺さんのやつ、セット婆さんのところに急ぎ駆け込んでいって大慌てで連れてくる始末だったし……セット婆さんも俺の顔を見るなり地獄で逢った様な表情になってつぶやいてたな。『お前なんで……右目の色が……金眼色こんじきなんだ!』って。まあ、それも次の日には普段通りに戻っていてさ、何事も無かったかのように爺さんと生活をエンジョイしてたっけな!


 このラリーの思い出の中で出てきた、『セット婆さん』がラリーの幼き頃の剣術師匠である、世間的にはセット・M・バーション候と言って名の通った人物であったし、昨日のサギの会話にも登場したが、ラリーにとっては既に世捨て人のような生き方をしていたもうひとりの『ニネット爺さん』と世間的にはワンパックの超有名人であった。そんなふたりだったが、なぜかお互い近くに住んでいてその『ニネット爺さん』がラリーの魔術師匠だったのである。


 そんなこんなで、ラリーがひとり昔話を想い出しながら道中事無く進んで行った。と、後ろのリアーナ嬢が乗る馬車から女性のすすり泣く声が聞こえてきた。

 ――誰だろう? サギさんでは無いな! 


 ラリーがどうしたものかと後ろを振り返ると聖騎士長と目が合った。しかし彼の目は『捨て置けっ……!』と物語っていた事もありラリーも『まあ、聖騎士長がそう言うなら大丈夫ってことだろう』と取り合うことも無く小隊は歩みを進めて行った。

 ――後でサギさんにでも聞いてみるか? 


 ラリーは彼女との会話のきっかけを得たことで何でだか少し嬉しい気持ちになっていた。

次回【21-2話:リッチモンド家の護衛任務で!】を掲載予定です

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