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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
28/187

【20-3話改稿:サギーナの日記編(ラリーとの再会)】

前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。

 サギはひと通りの応急処置を終えるとその場で立ち竦んでいたメイラーに状況説明を求めた。

「メイラーさん、これは如何どうしたのですか? お嬢様は何故なぜ倒れておられるのかしら? 温泉なので裸はやむを得ないにしても、白目をね! ちょっと無いんじゃ無いかしら? 何があったんですの?」

 流石にこの状況ではメイラーも上手い言い訳も出来ず、彼女はリアーナをかばうこと無く事の顛末を正直に話し始めた。何となく彼女の想定範囲の事情だったようで唯々それを聞いて呆れるばかりのサギであった。


 ――まあ、余りに予想通りの話の展開に、頭を抱えてしまいましたわ。お嬢様は湯船の中で今を遅しと私を待っておられていたようで、しかも、さらにもっと驚かせようとお湯の中に潜っておられたんですって。メイラーさんが何度も湯あたりしやすくなるからとめさせようと注意したんですが聞き入れてもらえなかったそうですわ。そうしたら、程なく湯船で倒れてしまったと……! 其れって、湯あたりどころの話しでは無くなってませんこと? 溺れてますって、それじゃ! 良くもまぁ、生きていられましたわね、私が来る前、命を無くしてもおかしくないじゃないですか。『お嬢様、どれだけあなたは馬鹿なんですかぁ?』って、思いっきり毒づきたくなる心を抑えて、お嬢様にはキッチリと回復魔術を施しておきましたわ。これで明日の朝には普通に起きられる事でしょう。


 内心、馬鹿姫って言う言葉を散々心の中で唱えていた事はサギの胸の中だけに留めて置くことにして彼女はさっそくリアーナに施術を施すことにした、しかもついでと言えばそうだがリアーナの失神状況が丁度良い精神状態なので彼女を蝕んでいる澱んだ彼女の『気』の浄化も同時に行う事にしたのだった。

 ――メイラーさん達は、私の施術を目をむいた顔で見てましたわ、だってお嬢様の周りに一際ひときわ黒々としたオーラが淀めいたかと思うと一気に其れを引き抜いて霧散させて見せたのですから―――まあ、流石にあれだけ真っ黒なオーラだと、魔術師でなくても見えるでしょうし、まるで淀んでいた下水道のヘドロの如くに見えたに違いないでしょうから。メイドさんのひとりはそのオーラに毒されて、トイレに駆け込んで吐いていたわね。お嬢様は『白気』に魔力気が上がるのが急すぎて、抜け出せなかった『黒気』魔力が、心の奥底に潜んでいたみたいなのね。あまりの出来事に理解が追いつかないのか、本気の心配顔でメイラーさんは私に聞いてきたの、まあ、あれだけお嬢様に苛められているのに、なんてご主人思いの方なのかしら! お嬢様には勿体ないメイドさんだわね、ほんと……。


 本心からリアーナの事を心配してくるメイラーに心洗われたサギは彼女に優しく話しをし始めた、お願いの意を込めて。

「メイラーさん大丈夫よ! 失神状態だからちょうど良いので、魔力気の調整もほどこして於いたの。普段の眠りの状態ぐらいではこの術式は無理なのね。大丈夫、明日の朝にはちゃんとお目覚めになるでしょう。今はこのままぐっすりとお眠りになられている状態だから、まず起きないでしょうけどね!」

 ――ご主人思いのメイラーさんへはちゃんと説明をしておかないとね、聖都テポルトリ公立宮廷魔術学校魔術課程課三年間連続主席は伊達ではなくてよ! まあ、武術課程課ビリッケツなので、卒業時総合成績は中の上位くらいだったけど……ねっ。でも、最後にメイラーさん達にはひとこと言って於かなければ為らないことがあるの。


 サギの説明で少しは気が晴れたようでもやはり心配な思いは拭いきれないようで、不安な表情でリアーナのことを見つめるメイラーにサギはそっと囁くように話しを続けた。

「メイラーさん、明日、お嬢様は目が覚めましたら、最初にあなたに今までのあなたへの行いを恥じて謝りますわ、それはきっちりと受け入れてあげて下さいね、恐縮してへりくだってはいけませんことよ。お嬢様に取ってそれは、あなたからの拒絶意識と捉えるに等しい事に為りますのでね。」

「お嬢様は、明日から新しい人生が始まるんです。まるで人格が変わったように見えることでしょう、でもそれがね本来のお姿なのよメイラーさんならそう、分かるでしょう」


 ゆっくりとだがしっかりした語調でメイラーにサギは言霊を伝えた。

 サギのひと通りの説明をメイラーが聞いたところで彼女達メイドは、リアーナを彼女の部屋まで連れて帰って行った、そうして今回のひと騒動は終わりを告げたのだった。

 ――ほんと、人騒がせな、お嬢様ですわ。


 サギひとり残った脱衣所に彼女のぼやき声が無慈悲に響き渡っていた。

 ――みんなが脱衣所を引き払った後、ひと仕事終えた気分で、ひとりゆっくりと温泉を楽しむことにしたの。まあ、おかげですっかりラリーさんとの気まずいひと時のことは忘れていたわね、それだけはお嬢様に感謝しなくちゃね! でも、温泉から上がって大変なことがあったのよ~っ! 脱衣所で着替えている時に気がついたの、私の大切な物が見つからないのよ! そこら辺りを探して見たわよ! 必死にね! だって……あれを他の人に見られたら……もう生きていけないわ! 


 蒼白の表情でサギが叫んでいた。脱衣所の中タオルひと巻きのあられも無い姿のままで。

「日記が無いの! 日記が! 私の! ぅぅっう……!」

 ――神様に祈る気持ちですわ……ぇぇぇっん! 


次回【21-1話:リッチモンド家の護衛任務で!】を掲載予定です

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