【20-1話改稿:サギーナの日記編(ラリーとの再会)】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
サギはリアーナの豹変の状況に戸惑いながらも実際の彼女の姿を真に見ていると、実に魅力的な人に思えてきた様だった。まあメイラーのリア充が結局のところ、ただ羨ましくて嫉妬しているだけの八つ当たりと言う事が分かっただけでも、サギの方は随分リアーナの事を好ましく思うようにはなってきていたようだった。
そしてお昼過ぎには既に護衛騎士団とリッチモンド伯爵、御一行様は聖都テポルトリの隣町ムーラスまで辿り着いていた。
一行はこのムーラスの町で今宵は宿泊する事になっていた。この町を抜けるとこの先、山間と森に囲まれた魔物、魔獣、野獣の生息域に入っていくため、日が暮れてくると流石に危ない事から旅程としてここでの一泊を余儀なくさせられていた。
リアーナに伴い馬車を降りたサギは馬車から降りて直ぐに、彼女の目の前にラリーが立っていることに気が付いた。その事態でサギは思いっ切り動揺していた。
「あっ! ラリー様!」
「やはり、サギさんでしたか、あの魔力オーラの持ち主は」
「あ、あのっ……ラリー様、昨日は私、何か至らない事をしていませんでしたか? ラリー様に対して……っ……さ、先に謝らせて頂いてよろしいでしょうか」
――ラリー様の困ったようなお顔……やはり昨日は私、何かしたんだ! あ~ぁ、どうしよう。嫌われてしまったかしら……もう、穴があったら入りたい気分です。
サギの心は図らずも少し荒んできているようだった。
「いや、サギさん此方こそ、昨日の晩はご迷惑をおかけしませんでしたか? 昨日の今日でまた、すぐに貴女に会えるなんて思っておりませんでしたよ」
――やっぱり……思ってないなんて、私……嫌われちゃったかな。
そんな想いををサギが抱えて、ひとり勝手に悄気返っているとリアーナがふたりに近づいてきた。彼女はメイラーさん達を引き連れて宿舎に入っていくところでラリーとサギの遣り取りに気づいたようだ。そしてサギの目の前に歩み寄ったリアーナが彼女に声を掛けた。
「あら、サギーナ! 其方の殿方はどちら様ですか、お知り合いの様ですね、出来れば私にもご紹介して頂けませんこと」
「……お嬢様、此方のお方はラリー・M・ウッド様、今回の護衛騎士団の方で、ちょうど私達の馬車の護衛小隊に配属されておりますのよ、私も昨日初めてお目にかかったばかりですわ」
サギとしてはなんかいやな予感がするらしく、リアーナにはラリーをあまり紹介したくなかったらしいが、この場合は諦めるしか無かったようだ。
「ラリー様、此方のお方は、ピエール・リッチモンド伯爵のご令嬢であらせられる、リアーナ・リッチモンド様ですわ」
「これはこれは、リアーナお嬢様、お初にお目にかかります、ラリーと申します。以後、お見知りおきください」
ラリーは、リアーナに対して跪いていて騎士の様に一礼をしてみせる、サギから見ても素敵な所作でそんな姿に益々想いを拗らせていく彼女であったが……そんなサギ達の思いとは裏腹にリアーナはラリーに労いの言葉をかけていった。
「ラリー様ですね、護衛任務ご苦労様でした、明日もよろしくお願いしますね、ではお先に失礼いたしますわ。サギーナも後でね」
――なんて、お嬢様は私にさり気なく軽くウインクしてから宿舎の方向のお戻りになったの。しかし、あのワガママお嬢様はいったいドコヘイッタノカシラ? すっかり、上品な淑女に急変されて、此方が逆にドギマギしてしまうから……。ほら、ラリー様もお嬢様の後ろ姿に見惚れているし、ふんっだ! ラリー様ったら、き・ら・い! そんなこんなで、その後はラリー様との会話は途切れて、二人とも差し障りの無い挨拶だけで別れたわ、残念だけど。私、悪くないわよね! 私はリアーナお嬢様の後を追いかけて、宿舎の中に入って行ったの、ちょっと、何でか知らないけれど目頭が熱くなって、その後、涙で前がよく見えなかったわ。
サギの斜め思考の拗らせかたは筋金入りのようだった。そんな風に落ち込みながら宿舎中に這入っていったサギのことをリアーナが意気揚々と待ち構えていた。
――宿泊施設の中に入ったところで、お嬢様がニコニコしながら待っていたの、本当に楽しそうに私の事を待っていたようだわ。
熱くなってきた目頭を前髪で隠すようにサギは俯きながらリアーナ達に近寄って行った、そんなサギの気持ちをどんな風に汲み取ったのか分からないがリアーナが口を利いた。
「あら、サギーナ随分と早いお帰りだこと? 彼の事はもう良いのかしら? それとも、さっきの私のご挨拶はお邪魔だったかしら? ごめんなさいね」
――全く心のこもっていない謝辞を聞いても、私の気分は晴れては来ないの、お嬢様、出来ればそっとしておいて欲しいのに……。そんな心の中の声なんて今のお嬢様には届きはしないわね、もう今日の夜の女子会はきっとこの話題で盛り上がりたいと思っているのよ。後ろで控えているメイラーさんらメイドさん達もわくわく顔でこっちをみているし、もう、いや!
「サギーナどうしたの、浮かない顔して、もしかして振られたの? 昨日の今日で……?」
――リアーナお嬢様! なんで、そんなに私の心の奥底までを抉ろうとするのかしら? 確かに、今日、最初のうちはお嬢様に私つらくあたったのは認めますけど、それはあの時はそうするしかなかったからなのに。
あまりに苦悶の表情を浮かべていたサギの様子に気が付いたのか、流石のリアーナもそろそろ潮時と思ってくれた様だった。
「まあ、このことはもう少し後でゆっくり聞きましょう、ではメイラー! お部屋に案内して頂戴、サギーナは今はまだいいわ、ひとりになりたい時間でしょうから……後でね」
「お嬢様ありがとうございます。お心遣い感謝いたします」
――その前にだいぶ遊ばれた気がするけど、もう解放してくれることに素直に感謝しておくとするわ、ほんとにひとりになりたかったのよ。いつもなら就寝前に日記を付けるのだけれども、今日はもう付けてしまおうかしら? どうせ、もう良いことはないでしょうし! 昨日今日と反省至極です。涙で日記を濡らしてしまいそう。
次回【20-2話:サギーナの日記編(ラリーとの再会)】を掲載予定です




