【19-1話改稿:サギーナの日記編(リアーナ嬢との出来事)】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
――ニコラス様に文句を言いに行こうかしら、癖のある方って言うのは、はた迷惑な我が儘娘って言う事かしら? このお嬢様のご相手を私がやれるのかしら?
伯爵令嬢とメイドの遣り取りを聞いていて、サギがほとほと自信を無くしたところに、メイドが息も絶えだえにして戻ってきた。
「リアーナお嬢様、お待たせいたしました、ご要望の着替えの服をお持ちいたしました」
――あっら、探すのが凄く早いわねメイラーさん! 日頃からこういう状況にすっごく慣れていそうだわ。
と、サギ審判のメモにはこの時点でメイラーに二票が入ったようだったが。
「メイラー遅いわよ! もう気がそれたわ! いらない! 下がりなさい!」
「……はっ、お嬢様、……わかりました」
――更にメイラーに一票って。えっ、何、今のそんなのありなのですか! メイラーさんは、いつもの事のように顔色ひとつ変えずに、後ろの荷馬車の方に戻っていったけど……あまりに酷い仕打ちではありませんか。そんな私の思いを知ってか知らずか、メイラーさんは私の横を通り抜けていくときに、ちらりと此方方を見たわ。申し訳なさそうな顔をして……『いやだ、もう!』そう言った様にも私には見えたわ。
まさに今見た出来事にサギが唖然としていると、リアーナ嬢がサギに気付いたらしく彼女の方に近づいてきた。
「あらっ、見ない顔ね! あなたは何方?」
「あっ、リアーナお嬢様、お初にお目にかかります、この度、宮廷近衛師団の団長様からお嬢様の身辺護衛を任されたサギーナ・ノーリと申す宮廷魔術師です」
――一応、気が乗らないけど、任務だし失礼の無いように挨拶はさせてもらうわね、ワガママお嬢様! と心の中ではちょっとは毒づかせてもらうわ。
サギが氷点下に下がった伯爵令嬢への評価をひとまず横に置いておいて何とか作り笑いでリアーナに対処しているとそんな事とは露知らずの彼女の矛先はサギへと向かったようだった。
「あっそう、あなたが今回の旅友達って訳ね、少しは楽しませてくれるのかしら?」
――旅友達? あっ、そういう役回りで伝わっているのかしら? 友達って私のほうにも選ぶ権利は在ってもいいのでは……と思うが、そこは貴族のご令嬢ならではの鼻持ちならない態度にも我慢我慢。
そんなサギの内に秘めた気持ちにはお構いなしにワガママお嬢様はさっさと馬車へと乗り込もうとし、サギについてくるように促していた。
「まあ、いいわ、一緒に馬車に乗り込みましょう。もうすぐ、出発みたいだから」
「……はっ……………………っ!」
これから始まる気の重い旅の道中を思ってサギは大きくため息をついていた、遣る瀬なさに似た思いもそれに載せて。
リアーナ・リッチモンド伯爵令嬢と相乗りで赤い馬車の中に乗り込んだサギは、さっそく伯爵令嬢から辛辣な言葉の刃を向けられる事になった。その棘のある言霊は、まるで呪術の如くサギの心を蝕んで行くようだった。
「サギーナと言ったわね、あなた平民の出ね! 平民のくせに魔術師なんて、どうせ『黒気』の魔力レベルなんでしょ! そんなんで護衛でございますなんてよく言えた者ね! あら悔しい? 私が憎らしい? 平民ごときが伯爵令嬢である私と張り合えると思っているのかしら? 私も魔術ぐらいは使えてよ、しかも『白気』のオーラは出せるわよ! 如何!」
――お嬢様はなんでここまで悪口が如く他人を罵るのかしら? あまりに酷い態度に、怒りを通り越して呆れてしまうわ。
サギとしてもこんな状態でずっと悪口雑言を浴びせられ続けながら二日間耐えなければならない事に恐怖さえ覚えかけていた。
とりあえず自分の耳に不感症の魔術をかけておくことをサギは忘れなかった、これなら耳から入る言霊は無意識に聞き流される。『これでしばらくは耐えれるわ……はぁ~っ』と呟きと同時にため息をつきながらサギは馬車の窓から外を眺めていた。
まったくどんな因果でこのような役回りが回ってきたのだろうと彼女は考える。と、昨日の夢のような出会いが当面の自分の運を使い切ってしまったのではと思うようになってきた、そんなふうに思っているとまさに視界の中に想いの貴方の姿が映った。『あっ! ラリー様!』 今までの気の重い呪術から救い出してくれるかのような淡い想いに、サギの心が静かに包まれていくのを感じていた。
次回【19-2話:サギーナの日記編(リアーナ嬢との出来事)】を投稿予定です




