【18-3話改稿:サギーナの日記編(はじめまして)】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
ここの改稿はちょっと……<(_ _)><(_ _)><(_ _)>
――昨日の今日でまた貴方に会えるなんて……。
図らずもサギの心の中では既にラリーは彼氏の地位を築きつつあった。そんな風に思いながらも集合場所である宮廷中庭にいそいそと出向いて行くサギである。
――私の今日の任務はリッチモンド伯爵家のご令嬢の身辺護衛なのよ。リッチモンド家の領地までの道すがら、ご令嬢と一緒の馬車に乗り込んでの護衛だから、女性の宮廷魔術師が必要だったみたい。でも、伯爵ご令嬢と始終一緒なんて、ちょっと気が重たいな。宮廷魔術師って言っても、私は平民上がりだから、貴族様との会話なんか無理だと思うの。だから、さっきまではずっと気が滅入っていたけど、ロミからの爆弾発言が別の意味で私の気持ちを暗くさせているの。だって、昨日は酔いすぎて――よく覚えてい・な・い・のよ!
仕事に対する不安と昨日の自分の行いの反省の中で混乱の極みいるサギはただ悲壮感の中から抜け出せずにいた。
「ああっ――っ、絶対、昨日は私なにか、へましているはずだわ……」
――宮廷中庭の集合場所にはまだ人が疎らしかいなかったわ、少し早すぎたみたい、お陰で貴方にはまだ逢わないでいられそう。自分の心が落ち着くまでは顔を会わせるのが少し辛いかな。そんな事を思っているときっちりした鎧を身に纏った騎士の人が近づいてきたわ。
サギに近づいてきた大柄な騎士が彼女に話しかけてきた。
「お見かけしたところ、宮廷魔術師の方かな? 自分は今回のパーティーの団長を務める事となった、近衛師団長のニコラス・ハミルトンと申す者です」
「近衛師団長様? って……あっ、ご挨拶が後れてしまって申し訳ありません。私、宮廷魔術師のサギーナ・ノーリといいます、道中よろしくお願いいたします」
「貴女様がサギーナさんですか、ご噂はかねがねイカルガ伯爵からお聞きしてますよ」
――あら、イカルガ伯爵さんとお知り合いって……まあ、団長ですから当たり前ですね、私とした事が……って、絶対いい噂では無いわね!
今日のサギの思考回路はとことん悲観的解釈が先に来ていた。とは言えイカルガ伯爵の知り合いという事で少し安心して話しを進められそうだった。
「イカルガ・ピネダ伯爵には日頃からよくして頂いてますわ。個人的にも大変お世話になっております」
「そうですか、貴女のようなお美し方に懇意にして頂いているなんて、イカルガ伯爵も羨ましいかぎりですな」
「あらっ、ニコラス様もお口が上手ですこと」
――何この、社交辞令の会話は? 私だめだわ、そろそろボロがでそう……。やっぱり貴族レベルの会話は私には敷居が高いです。早く本題に入ってくれませんか? ……心が悲鳴を上げ始めていますわ。
そんなサギの心の声が近衛師団長に届いたのか話しは仕事の本題に入っていった。
「そうそう、これからの任務の話しですが、貴女にはリッチモンド伯爵のご令嬢を護衛して頂きたいとの要望を出しております」
――やった、やっと本題に入れるのね。よかったわ。
「はい、そのように伺っております、何か特に注意する事でもありますでしょうか?」
サギは安堵と共に話しを聞く為に気を引き締め直した。その間を了承と解釈したのか近衛師団長が話しを続ける。
「そこなんですがね、注意というほどの事では無いのですが、ご令嬢の事でお願いがあります。ご令嬢は今年十八歳になられるお方ですが、何せ癖のあるお方でね、たぶん初見で戸惑われると思いますが……是非とも、その点ご配慮頂きたいと思いましてね」
――んっ、なんか奥歯にものが挟まった言い方ですわね? どんな癖なのかしら?
いまいち迂遠な言い回しに不安が募るサギではあったが取り敢えず頷いておくことにした。
「……わかりました、心得ておきますわ、ニコラス様」
――癖のある性格って、ナンなのかしら? まあ、貴族のご令嬢のことだから、気難しいのは想像もつくけど……それ以外って何かあるかしら? まあ、ひとりで悩んでもこればかりはしょうがないわね! 会ってみるしかないから。
近衛師団長が最後に残した台詞をサギの中で反復する。仕事に対する心構えとしてはあえて何をするわけでは無いが、非常に気になる話しであった。と、サギがひとりでぶつぶつ言っていると馬車の近くで若い女性のヒステリックにわめく声が聞こえた。
「メイラー! メ・イ・ラー! 何処にいるの?」
当たり散らすような声である、まるで盛りのついた猫の様な金切り声が聞こえた。
そんな叫び声になんかいやな予感がしたサギであった。まさにちょっと前に悩んでいたことの現実が目の前に現れたようで背筋に氷を入れられた時の様に寒気を感じてしまっていた。
サギが戸惑いを感じながらその場で成り行きを見守っていると一人のメイドが息せき切って駆けつけてきた。
「リアーナお嬢様、如何なされましたか? メイラーでございます」
「メイラー! まったくどこに行ってたのですか? 呼びつけたら直ぐに来きなさい!」
――あれ、今、リアーナお嬢様って言っていなかったかしら? もしかしたら彼女が、あのリアーナ・リッチモンドお嬢様?
案の定サギの厭な予感が的中してしまったようだった。
「お嬢様、申し訳ありません」
叫び声を上げていたのが伯爵令嬢のリアーナそして呼び出されたメイドの人はメイラーと言うらしかった。
――なんて言うのかな? メイラーさんが怯えながらリアーナさんの側に跪いているのが見えたわ。可愛そうに。
サギは客観的にそう判断していた。この時点でメイラーに一票でリアーナはイエローカードであるが、彼女にレッドカードを出すかどうかこの後に続く話しをサギは黙って聞くことにした。
「メイラー! 私の洋服を入れたトランクは全部持ったのかしら?」
「お嬢様、お嬢様専用のトランクはすべて荷馬車に乗せてございます、確認なさいますか?」
「あらま~そぅ! それじゃいいわ! もう、下がりなさい」
――えっと、いくら自分専属のメイドだからって、無理矢理呼びつけておいて、其れはあまりに酷くない事! ……って思っていると、案の定また我が儘を言い出したようですね。
とサギが心なしか怒りの心境に入り始めていたがまだ二人の話は続いていた。
「待って、やっぱり用事があるわ! この服じゃ厭だから着替えます。先日の晩餐会で着た、赤いドレスを出して頂戴! 今すぐ!」
「えっ、お嬢様、今からですか? もうすぐ、ご出発の時刻ですが……はっ、わかりました、今直ぐにお持ちいたしますから、馬車の中でお待ち頂けますか……」
「わかったなら直ぐに持ってきて!」
次回【19話:サギーナの日記編(リアーナ嬢との出来事)を掲載予定です




