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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
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【2話改稿:自分は勇者だった?】

前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。

何時いつからだろう、自分で人に頼ることを忘れたのは?』

何処どこからだろう、自分の行き先を人に尋ねる事を忘れたのは?』

何故なぜだろう、人の親切を疑うようになったのは?』

『無垢な魂から生まれいで人をうらやみ、人をさげすみ、人をだますようになったのは?』


 百年の眠りと聞いて最初は単純に驚いていた彼だったが流石さすがに疑いの心が芽生えてきたのか、疑心暗鬼ぎしんあんきさいなまれている様にも見えた。

 『自分は誰だ』との問いに対して彼自身の記憶を呼び戻す作業を、脳内で一生懸命行っているようだが、全くもって目覚める前の記憶を呼び起こすことが出来ていない。如何いかに永い眠りとは言え、眠っていただけなら何らかの記憶の断片が見えてきても良いだろうと思う彼の心が疑心を生み出していた。

 彼が何者なのか、何故ここにいるのか、知らなければならない事は多々ある。

 とは言え、この場の雰囲気から彼女たちに対して、それらを問う事も可能であろうと分かり始めていたが、だがその前に自らの記憶である程度の状況を把握することは、最低限の努めだと思い懸命に模索していたのだった。

 そんな彼の心の動きを案じてか、魂である彼女達が声を掛けてきてくれた。


「おぬし、いろいろと思うこともあろうが、今は長い年月の眠りから十分な覚醒レベルに達しているとは言い難い。無理をして不本意な結果を招くことよりも、身体の覚醒を満足に終わらせる方が先ではないか」

「ご主人様、ウギさんが言われることはもっともな事です。こんな状況下でご無理とは存じますが、是非とも私達の事を信じて、今のところは御身の身体の事をねぎらって下さい」

「おぬしの問いには、いずれ答える……」


 ――ともかく、今は彼女達の想いからくる言葉を信じていくしかないか。

 ――まあ、いまいまは身の危険もなさそうだし。

 ――しかしなぁ~! 自分で言うのも何だが、この状況はまるでどっかの異世界転生物語みたいだな。

 ――いや、まさにそのものだし、これで魔王とか勇者とかの話しが出てきたら明らかに夢物語だろう。あれっ? まてまて、異世界転生、魔王、勇者って言う単語は何処から出てきた言葉だ? それはどういう意味だっけ? 此の言葉の記憶が自分に何故に在った?

 そんな唐突な思考と其れに伴う当たり前の疑念が、彼のこころの自我の奥底で沸き起こり始めていた。まさに今、彼自身の心の働きのひとつとして無限ループに陥っていることに彼自身は気づきもしない、まさに無限再帰と言えよう。しかし其れとはまた別の意識というか、思考がフッと思念を形作って、おもわず言葉にならない思いを洩らしていた。


「まさか、こんなんで自分が元勇者でした、なんて落ちでは無いよな……」


「……んっ! おぬし?」

「えっ……! ご主人様…?」


「ん…、ウギさんもサギさんもどうしたの?」

 いまだ、左右の手先と頭部だけしか動かない身体で首を左右に振りながら筋力覚醒を始めた彼に、不可思議な呟きが彼女等から返ってくる。


「ご主人様……勇者様ラリー……もしか……して……」


 もう少し、彼の身体が動くようになっていれば寝台から上体を起こすことも可能であっただろう。そうすればボディランゲージも添えて、色々と突っ込みもあっただろうにと思う。そんなこんなで、驚きの感情が入り交じった左右の彼女達からの呟きに対して、本当なら違和感を覚える事もあったろうが、ただ今は気にとめるほどの事もなく、残念にも完璧にスルーしてしまっていたのであった。鈍感なこと事この上も無かった。

★2017年版では、なろう事務局より「英雄たちの回廊」について当該小説がR18相当であるとの指摘を受けた為、第182部分までの初稿については【ミッドナイトノベルズ:N1050EN】への移設を行い、本稿のR15基準の不適切箇所について数カ所改稿致しております。

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