【17話改稿:翌日の出来事!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
今日もラリーは宮廷から貴族領地までの護衛任務である。昨日はなかなか寝付けなかったので少し寝不足気味であるが仕事は仕事、そんな弱音で休むわけには行かない。今回の公国から公示された冒険者の護衛募集は臨時の対応なので与えられた宿舎は大部屋である、ラリーの部屋割りは二段ベットが二つで三人が寝泊まりしていた。相部屋の仲間はガアーリとフランという名前の二十代の冒険者である。
太陽が昇るとともに三人同時に起き出す。朝食を宮廷宿舎にある大食堂で各々で取ってから、今日の仕事の集合場所へと赴いた。
「昨日は夢だったのかな……? 夢のような現実だったのかな……?」
そんな想いがラリーの頭を駆けめぐっていた。年がら年中、修行に明け暮れていた十五歳までの思春期、そして冒険者として各国を渡り歩いている今の彼にとっては、昨日の夜のような経験は皆無であると言ってよかった、戦いの場所で逢う女戦士達との応対には慣れていたが、まったくもって恋愛感情を前提とする様な女性に対する免疫性というか耐性が全く無かった。うきうきした足取りで歩く姿のラリーを訝しげに見る同部屋のガアーリとフランの二人の目線がやけに痛かった。
そんなふたりの会話が聞くとはなしにラリーの耳に流れ込んでくる。
「おう、今日の仕事は宮廷魔術師団との合同連術の訓練も兼ねているらしいぞ! 知っていたか……ガアーリ!」
「えっ!フラン、それはほんとか? 宮廷魔術師団と言えば所謂、戦乙女四十八人衆って奴か?」
「おうっ、そうさ! 公国の綺麗どこの魔術師連中を国中から片っ端、集めたって言う噂の集団よ!」
「これは、今日はわくわく感、満載だね! フラン! がんばるぞーっと!」
同部屋の二人が何かそんな事を話し込んでいる。
――戦乙女四十八人衆ってどこぞのアイドルグループか!
思わずそんな戯れ言がラリーの頭の中に木魂する。って、でも昨日もなんかサギは宮廷魔術師って言っていたような?
ラリーは何か心に引っかかるものを感じながらも、喧々諤々とこれから訪れるであろう今日の色めくような行事について、話し込んでいるガアーリとフランの後について行った。
集合場所は宮廷の中庭で、既に二十人程度の人が集まっていた。
護衛任務にかり出されている冒険者連中には、ラリーの顔見知りもちらほら見受けられたが殆どは初見の人達である。
その中に確かにこの場に不釣り合いな程、綺麗どこの女性達の集団がいた。
規定の集合時間になったのかリーダーと覚しき騎士のひとりがひと際高い壇上に進み出て号令をかけ始めた。
「諸君、善くぞ集まってくれた、ここから国境の貴族領域までの護衛が今回の任務である。特に本日は宮廷魔術師団の中から精鋭四名の参加も有り護衛師団としては大所帯となっているが、その点うまくやって欲しい。
今回は道中道すがら、最近時、魔獣が大量に発生して問題となっている区域も通る事になる、呉々も気を抜くでは無いぞ! 魔獣が襲ってきた場合は宮廷魔術師団の方々との連携が必要となるので、今回はその合同連術訓練の兼ね合いもある、ここの点を十分に承知しておいて欲しい、残りの指示は各小隊毎に割り振られた聖騎士長に確認して貰いたい。以上だ!」
――ああ、聖騎士長に今後は確認って、そうかこの人は聖騎士団長か!
ラリーにはあまり関わりが無い事だが、まぁ昨日のイカルガ伯爵の様に貴族で有りながら聖騎士に属している御仁も居る事だなので聖騎士団長も貴族の爵位を持っているだろう事は素直に推測できた。
そんなこんなで、ラリーは自分の護衛管轄に割り振られている馬車の側に急ぎ会した。
「集まって貰った諸君、この小隊は目の前にある赤い馬車を護衛する任務である。総勢五名だが、よろしく頼む」
――五名って言っているけど、馬車の周りには四名しかいないんだけど? あと一人はどこですかね?
ラリーがそんな事を思いながら周りをきょろきょろ見渡していると聖騎士長の方は其れを見て察してくれたのか、ひと言、追加の指示があった。
「今回は、この小隊に配属されている宮廷魔術師のお方は馬車の中で貴族のご令嬢の身辺護衛をされていくので既に馬車の中にいらっしゃる。故に馬車の外回りの人数は四名だ。以上、追加指示をしておく」
――あっ、そうなんだ。
追加指示の内容で納得顔のラリーを小脇に見て小隊の聖騎士長はこの場を後にした。
――馬車の中にね……たしかに、馬車の中には数名の女性のオーラはあるが……んっ、魔力気が2つ? ひとつは『白気』か、だいぶグレーっぽいが、と……もうひとつは、えっ『闘気』真紅? まさかこれはサギさんか?
ラリーは自分の眼に映った真紅のオーラをただひとり嬉しそうに眺めていた。
この護衛付き馬車隊の構成は四台の馬車にそれぞれ貴族が乗り込み、その周りを二十名程度の護衛が附きそう形の布陣となっていた。ひとりに一台の馬車構成を何気に誇示するとはだいぶ裕福な貴族の様だった。
馬車内にいらっしゃる貴族の方がご令嬢や奥方様の所だけに身辺護衛として宮廷魔術師の同乗があるようだ。ご婦人の馬車が二台ということはひとつの馬車に一~三名の宮廷魔術師が乗り込んでいる事になる。
したり顔で満足げに頷いているラリーの事を客観的に見てみると、確かに何と言うか見た目の年齢的幼さも相まって、護衛として彼にはあまり期待をしていない小隊構成である事は確かのようであった。まあそれはそれでいいかと、あえてラリーは考える事を止めた。
そんな事を思いながらもラリーが他の馬車隊をひと周り眺めてみると、同部屋の二人が揃って護衛についている小隊が見えた。領主様の馬車の護衛小隊の様であった。と言う事は、残念ながら宮廷魔術師の戦乙女衆なるメンバーの乗り込みは無しの組み合わせと言うことになる。そうラリーが思っていると何となくフランと目が合った。
――んっ、なんか俺に言っているようだな……。なになに?『う・ら・や・ま・し・い・ぞ! ……か・わ・・れって!』て言っているのかな? ……それは、無理だな! ご愁傷様です。
ラリーとフランの不遇な遣り取りを知ってか知らずか、馬車隊は聖騎士団長の号令と共に歩みを始めた、道中は一泊二日の旅路であった。
親指シフトに興味を持ち始めました。
おかげで、今の執筆速度は1/10以下です……(T_T)
たぶん途中から、投稿間隔が延びてしまいますがお許し頂きたくお願いいたします。<(_ _)>
……ずっと親指シフトはつかっております。今の愛キーボードはロジクール ERGO K860です。