【86-6話:アン・リトホルム公女殿下!】
なろう運営殿より「N2542DU/英雄たちの回廊」当該小説がR18相当であるとの指摘を受けた為、第1部分から第182部分まで初稿についてはR18側への移植を行いました。移植先は「N1050EN/英雄たちの回廊(R18指定)」です。
尚、「N2542DU/英雄たちの回廊」側のR18相当との叙述部分については改稿作業を進め、最終的に運営殿より指摘終了を貰うことが出来ましたので「N2542DU/英雄たちの回廊」として次話の投稿を続けて行きます。
エンマ魔女王からの依頼をそのまま彼女に返すと俺と俺を取り巻くみんなの魔力が魔界にまで影響していたことが発覚する。俺達のどでか過ぎた魔力の発覚で魔界勢力争いそのものが大きく揺れている状況だとエンマも言っていたし……。
そしてそれはその元凶となっている俺を魔界の誰が取り込むかで魔界の中の勢力図に大きく影響しそうだとのことがステファン卿から大公様の耳に入ったらしい。まあ、ステファン卿は既に魔族の邪術に取り込まれているようだから本当の話しは他にありそうだが、それでも大公様の立場としては迷うところだろう。大公様としては人間界の勢力争いの方が心配種となるのでギルド連合との関係から俺自身の情報を魔界に売ることになるのは避けたい話しだったらしい。
その為、大公様としてはステファン卿の進言に乗って魔族側の貴重な情報を得る為に魔族への接触を試みたとみるべきだがそれにしても大公様として密会じみたやり方で従順に相手を信じてひとりで出掛けることにしたのはステファン卿への弟愛か? それともステファン卿に何らかの呪術を掛けられたとみるべきか?
「私もひとりでお出かけするのは危険ですと何度も進言したのですが、『ステファン卿と一緒だから……』と言って聞き入れては頂けなかったのです……」
ロミルダ嬢が項垂れながらもそう告げてきた。
「しかし大公様がひとりで出掛ける危険を推してまで欲しかった魔界の情報とは一体何だったんだ?」
ひとり俺は自分の中で引っ掛かっている疑問を口に出していた。
「……其れについては私にも教えては下さらなかった。大公様としては私も信じるに値していない対象だったのでしょう……」
そう今にも消えそうな小声でロミルダ嬢が呻いていた。
「其れは違うんでは無いかの、お主に話してその事が魔族にわかったらお主の命も狙われかねないからのう。妾はそう思うぞ」
アン嬢がロミルダ嬢の肩をそっといたわるように擦りながらそう話しかけてきた。そんな仕草にロミルダ嬢もその大きな瞳に目一杯涙を溜めながらアン嬢に縋り付いていった。
「あっ……アン様っ」
何かお互い思うことが在りそうなそんな二人の間に容赦なく割り込んでいく我が女性陣。
「お取り込み中悪いけど、アン? 聖女様だか何だか解りませんがラリーと一緒にって言う事は何か出来るんでしょうか? ペルピナル神魔殿の案内だけでは無いでしょうね」
早速マギがアンの能力を確認しに来た。さてと何て言おうか? と、俺があ~でもないこうでも無いと回答を思案している合間に…。
「妾か――そうじゃのう。何にも出来ンぞ、お主が期待している場面ではのう」
と、聖女様自ら破綻の回答を既に宣言していた。
「は~ぁ? 何にもって、それじゃただの足手まといって言う事なのですか?」
いや、だからさ~ぁ言葉はちゃんと選んで喋らないとほらこうなる訳で……俺は自分の掌で顔を覆い天を仰いで悄げるしか手が無かった。
「ラリーっ! 此はどういう訳なのかちゃんと説明して貰えるんでしょうね!」
早速いきり立つ様にマギが今度は俺に憤然と詰め寄ってくる。
「まあまあ、マギの言い分はごもっともだが此処は姉御として器量のあるところを見せて於かないとね~ぇ」
鼻先がくっつく程に顔を突き合わせる様なマギの迫り方に――いつもの如く俺はひらりと躱しながら彼女の耳元でそう囁いた。
「あっ~ん! こらっラリーったらこう言う時だけ……まあ、いいわ」
ぷりぷりした調子で頬を膨らませながらもその裏側でほんのり頬を赤らめてそうマギが返してくる。何とか凌いだぞ――と。でも、まだアンの事では俺もわからないことが多そうだった。そうこうしているとウギが痺れを切らしたように話し始める。
「ラリーそろそろ出掛けるなら行かないと――時間が迫って居るぞ」
「あっ、そうだな。兎に角表向きはウギが呼び出された事を利用しての拝謁だからな」
俺達は取り敢えず各々の役割を再確認して、ウギの従者としてペルピナル神魔殿に赴くことにした。無論、同行するのは俺とサギ、ウギ、マギとアンである。ロミルダ嬢は宮殿内での情報収集の為、そしてヴァルはもしもの時の後方支援として宮殿にて待機として貰った。其処でも擦った揉んだが在ったが……。
「ラリーどうしてあたしは留守番役なの?」
ヴァルが涙目で俺に懇願してくる。そう言うことになるとは思っていたが此処は心を鬼にしてヴァルに納得して貰わねばならない。
「ヴァルの力は良く知っているだからこそ、ひとりになるが宮殿でのもしもの時に対応する勢力として期待してのことだ。みんなで此処を空けて行っては其れこそ魔族側の思惑通りになってしまうこともあるだろう」
「其れはそうだけど……それがあたしなの?」
「そうだよ、ヴァルにしか頼めないことだからね」
「うん――じゃあ帰ってきたらね、あたしの頼みを絶対に聞いて貰うから!」
「……ああ、わかった」
何となく心重い約束のような気がするが此処はヴァルの意を汲んで二つ返事で返しておくことにする。
そんな風に何とかペルピナル神魔殿へのメンバーを決めると遅ればせながらも馬車に乗り込み目的地に向かう事とした。
次回【87-1話:ペルピナル神魔殿へ!】を掲載いたします。