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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
173/187

【85-3話:大公様失踪事件?!】

ちょうど今日、ブックマーク登録数100件目の登録を貰う事が出来ました。

お付き合いいただいているみなさんのご厚意と思っています。

ありがとうございます。m(_ _)m

 俺はベットに寝かされている状態で目が覚めた、しかも俺の身体の上には二人の眉目麗みめうるわしい女性の肢体が両脇に重なり合っていた。無論サギとヴァルの二人だったがしかも二人とも何故だか上半身裸だった。その為二人はその豊満な胸元をそのまま俺の上半身に重なるように押し付けてきていた。俺もそのことに暫し気付くのに時間が掛かった、そう俺も上半身が裸だった。なんでだ?

「うぅ~ん、あっ! ラリー目が覚めたのかしら? うふっ、何っ? 真っ赤な顔をして……」

 俺が目を開けたのに気付いたサギがおもむろに声を掛けてきた、しかも心なしか小悪魔的な笑みを浮かべていた様にも見えた。

「な、何で二人とも……その~ぉ、裸なんだ? て、言うかその胸が当たっているんだけども……」

「『うふっ! 是は当てているのよ、わざとね。感じてくれてる? 私達の心臓の鼓動も――私達だってドキドキしているのがわかる?』」

 遅れて目覚めたヴァルも一緒に、そう二人綺麗に揃って声を合わせてきた。

「『女の方から是だけ攻められても、ラリーったら普通に返してくるんだからちょっとは――手を出しても良いのにね』」

 此処まで二人でハモるように喋ってくるとは俺が寝ている間にどれだけ二人で練習していたのか?

「……つっ、手を出していいって言われても――俺は」

「ラリーがこだわっているのは――ほんの一時の気の迷いのまま私達の事を抱いてその後に憂いが残るのが嫌だからなの? そんな憂いを消しきるほど私達の事が好きじゃ無いからなの? それとも他に理由があるの?」

「さ、サギっ、な、なにを言っているんだ?」

 そう思わず叫びだした俺にサギが少し興奮した気持ちを無理矢理抑えた様な口調で静かに話しかけてきた。

「ごめんね、ラリーが寝ている間に聞いたわヴァルに全てを――エンマが今置かれている立場のこととそれとラリーの『覇王気』の秘密もね、水くさいって言うか少しむかついているんだけど私!」

 確かに貴女かのじょの言葉尻には憤怒の韻を含んでいるように聞こえる。

「なっ! ヴァルが? まさか本当に――喋ったのか?」

 俺はギョッとした顔つきでヴァルの方を見て取った。ヴァルは伏し目がちに目を逸らしながらも俺にしっかりと告げてきた。

「だってエンマ姉さんの事だから、是からはきっとラリーの事を本気で追っかけて来るってわかっているからこそ、そのことをサギに秘密にしておいて良いことないと思ったの。それとも本当のところは魔女王と一緒になって魔王にでもなりたいと思っていたの、ラリーっ!」

 真正直に切り出されて俺もそれ以上はヴァルを責める事は出来なかった。正直、彼女の方が正論だと感じていた。

「うっ! 其れは決して無い――魔王とか勇者とかそんな事に俺は興味を引かれたことは一度も無い、其れだけは誓って断言出来るよ」

 ヴァルの問いに即座に答えるとサギに向かって誓った。

「サギには秘密を持っていたことは謝る、ごめん。ただひとつだけ言わせてくれないか『覇王気』を時々まとうらしいが其れを何時いつ出せるのかは自分では未だに解らない。しかも右目だけがその時に金眼色に変わるらしい――なにせ其れは自分では見れないから解らないんだ。幼い時にそんな事があって爺さん婆さんには他の人には絶対に知られてはいけないと言われてきたから。皆にも秘密にしていた。ヴァルとマギの二人には一瞬その時を見られた事で知られていたんだ」

 俺はサギにそんな風に話した、其れと事のついでだ――もうひとつの事もさらけ出した。

「あと、ヴァルも知らないことだが――俺にはその先があるらしい。自我を忘れる程の緊張下に陥ると左目が銀眼色の輝きを放つんだと。マギには其れを見られた事が一度ある」

 その話しにはヴァルでさえ驚くように俺に真顔で迫ってきた、ちなみにサギもヴァルも未だ裸のままだったその状態で俺の方に肉薄して迫ってくるんだから俺としては目のやり場に困る事この上なかった。

「そ、それって伝説のオッドアイの『覇王気』なのっ?」

 ヴァルがそう切り出してきた。

「その台詞せりふはまんまマギが発していたよ――あの時、そうサギがレッドグリズリーと相対していた時に……」

「あっ! あの時の――ラリーの意識を私が感じて危機一髪のところを助けて貰った時の事ね」

 サギも上半身を起こして俺に迫ってきながら即座にそう問い掛けてきた、さすがにあの時の記憶は鮮明に残っているらしい。それにしても二人ともいい加減に服を着てくれないかな~ぁ、俺は天井を向きっぱなしで自分の視界から裸のままの二人の姿を消し去る努力をまだまだ続けていかなければならいようだった。そんな状況でも俺は全てを吐き出すように喋り続けていた。

「俺は生まれてこのかたこんな力が欲しかったとは思ったことは無い、実の父の事も生んでくれた母の事も俺は知らないで育った、おのれの幼い時には、多分俺と言う化け物を二人とも恐れたんだろう、だから捨てられたんだと信じ込んでいたんだ。こんな化け物の血筋を受け継いでしまう自分の子供のことを考えてみると――人と違うと言うことだけでさげすまれて一生過ごしていかなければならないことになるんだ、可哀想すぎるだろう。俺の末裔まつえいはこの世に存在してはならないと思っているよ心の奥底では――多分俺は!」

 其処まで俺が話し終えた時にサギとヴァルの二人がすぅ~ッと俺の上から身を起こしてベットの傍らにそれぞれ左右に分かれて俺に背を向けたまま座り込んだ、そうして傍に畳んであった彼女達の上着を羽織り始めた。程なく二人が服装を整えると再び俺の傍らに膝立ちで躙り寄ってきた、それぞれ俺の左右に――俺の肩口に彼女等のからだを柔らかく寄り添わせてきた。

「やっぱりそう考えていたんだラリーは――馬鹿だわ」

「そう馬鹿ねっ」

 サギとヴァルの口からそんな俺に対する温かい罵声が告いでてくる。

「……そんな風に馬鹿って言うなよ」

 取り合えず彼女等にはつぶやくようにそう言い返してみた。

「『あら、だって私達の気持ちをまったく無視して――ラリーってば独りよがりの馬鹿だわ』」

 しかしながらそんな風に更に二人で畳み込むように俺を柔らかく罵ってきた。

次回【85-4話:大公様失踪事件?!】を掲載いたします。

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