【83-13話:聖都テポルトリからの使者!】
取り敢えずマギを俺の上から退かせてから起き上がり、ベットの上のシーツを剥ぎ取って彼女に巻き付けさせた。マギもシーツドレスを気に入ったのか器用に身体に巻き付けると純白のドレスを身に纏った様にも見えて其れは其れで美しく仕上がっていた。
俺自身は彼女がそんな着付けをしている間、彼女に背を向けて水差しを置いてあるテーブルに向かっていた。
「はい、お水」
「ありがとう」
酔い覚ましに水を器に入れてマギに手渡した。素直に受け取った彼女は少し恥じらうように項垂れながら其れを受け取って一気に飲み干した。
「もう一杯いかがかな?」
「ううん、もう良いわ。ありがとう」
そう言いながら空の器を俺に差し出してきた、其れを受け取るとテーブルの上に置いてからマギに向き直った。
「で、どうしたんだ――此処に来たって事は何かあったんだろう」
「……」
「んっ??」
「……何にも無いんだから、別にただラリーに会いたくなっただけよ」
顔を赤らめながら俯いてそう言い切ってきたマギ。いつもと違う感じにこっちがドギマギしてきた。しかし、それでも服は何処に置いてきた?
「会いたくなったって、さっきまで皆で一緒にいただろうにそれと服は? ウギがさっき言っていたぞ、マギは宴の出し物の打ち合わせに行ったって」
「うん、そうなんだけど――打ち合わせで色々話しをしていたら、盛り上がってお酒も出てきたんだ。其処までは良かったんだけど……」
「ん? けど……?」
「……皆の話になってね――私とサギとウギの『みんな綺麗でいいよな~ぁラリーさんは』って警邏隊のイケメンくんがラリーの事を羨ましがって――其れで、でも三人のうち誰がラリーの本命だろうって噂話になって『やっぱりサギさんだろう、いやウギさんも可愛いぞ』って――私は? って聞いたらね~ぇ、みんな顔の前で手を横に振って『いや、其れは無いと思う』って、何でって言ったら――ラリーさんの手には負えないでしょうマギ姉さんはだって。其れでその後に『俺等だったら姉さんに合わせられますから――立候補してもいいすか』って勝手に私の事の取り合いになってきたの」
「は~ぁ、それで――」
「皆がその話しで盛り上がっている横で、なんだかわたし居たたまれなくなって――その場で皆の視線を避けるようにして蜘蛛になって此処に来たのよ」
マギの話しは其れは其れでまあ有りと言える内容だったが、マギがそんな事に其処まで敏感になったって言うことが信じられずその場で俺はポカ~ンと口を開けたまま惚けていた。マギのキャラが最近よくわからなくなってきた。
「な、なによ――私らしくないって言うんでしょう、私だってそう思うもん」
「いや、俺は何も言っていないよ」
「顔で言っているじゃないの、顔で!」
顔って言われたって生まれてから此の顔だし、とはボケられない空気を感じてその場で俺は固まっていた。
「――サギにしてもウギにしても『ラリー大好きっ娘』を表に出しているから……わたしもそうした方が良いのかしら? ヴァルやエンマと私ってキャラ被ってきてるし、不安定なのよ私でも――女の娘なのよ、このわからずや!」
そう言いながら俺の胸に顔を埋めるように抱きついてきて、そのまま両手でバンバンと俺の胸板を叩きつけながらマギが泣き出した。
「私だって良く解らないの、こんな気持ち今まで――そう百年以上も生きてきて酸いも甘いも人生、いや魔人生を生きてきたのよ――なんでこんな小童にって思うんだけど、でもねラリーっ! あなたにだんだん惹かれていく自分が此処にいることに気がつき始めたのよ、止まれって自分で自分の気持ちを抑制しようと思うと余計にね――魔界の大魔導師を惑わせて! どうしてくれるのよ! あなたは!」
「こ、小童は……それは無いだろうマギ?」
「うるさい!」
そう叫ぶとマギは俺の首に両腕を巻き付けて、あっという間にその魅惑的な唇を俺の唇に重ねてきた、力任せの口吻に反してその感触は彼女らしい柔らかさと吐息の甘い香りを俺の脳裏に刻みつけた。
「ん~んっ」
マギの喘ぎ声が耳元でハープの音色の様に響き渡ってその声色に魅入られるように酔いしれる自分がいた。
お互いの唇と舌先を交互に絡め合いながら息が続く限り貪るように口吻重ねた。
「う~っ――んっ」
どちらともなくお互い息が続かなくなって唇を離した。そのまま互いの額同士をくっつけ合ったまま目を合わと、今度は俺の方から軽くマギの頬に口付けをして抱き締め合った。
「ごめんねラリー」
「……なんで、謝るのさ」
「だって……」
「俺も望んでしたことだし――それにマギの唇は美味しかったよ」
「馬鹿っ」
抱き合ったまま顔を交えずにお互いの耳元でそんな風に囁き合った。
次回【83-14話:聖都テポルトリからの使者!】を掲載いたします。